エルメス第1号店のウインドー・ディスプレーには、趣向を凝らしたファンタジックな世界が広がっています。店の前を通りかかると、ついその見事なディスプレーに見入ってしまうくらいです。このディスプレーを1978年から2013年まで手がけていたのがデコレーターのレイラ・マンシャリです。彼女は、チュニス生まれでパリのボザール美術学校で学んだ後、エルメスでキャリアをスタートしました。エルメスは社内外のクリエーターの才能を取り入れ、メゾンの独特な世界を表現しているので有名なのです。

エルメスの素敵なショーウインドーをつくり続けた女性レイラ・マンシャリ

オブジェを製作するレイラ・マンシャリ(1992年)。 Photo/Atelier Guillaume de Laubier

そのレイラ・マンシャリのウインドー・ディスプレーの魅力を紹介するエキシビジョン『Hermès à Tire-d’Aile – Les mondes de Leïla Menchari(「羽ばたくエルメスーレイラ・マンシャリの世界」の意味)』が2017年12月3日までグラン・パレで開催中。今回はその内容の一部をご紹介します。

エルメスのこの展覧会はグラン・パレの南側にて12月3日まで開催です。
会場に上がる階段もエルメスのシグネチャー・カラーのオレンジ色で彩られています。
入り口には、ギリシャ神話の青年神ヘルメースを想起させる、羽の生えた足のインスタレーション。
会場に足を踏み入れるとこの展覧会のタイトルと説明がありますが、これはすべて刺しゅうです!

世界中からインスピレーションを受けたエキシビジョン

このエキシビションは8つの世界が表現されています。

アフリカのようなアメリカのアリゾナのような、土臭いイメージ。

最初は、アフリカの砂漠のような、アメリカのアリゾナ州のような、乾いた大地を想起させる空間。パンテールの馬具、バッグが印象的です。

波をかたどったインスタレーション。SFチックでもあります。

ふたつ目は、浜辺の波が一瞬にして凍りつき、静止したかのような不思議なインスタレーション。バッグも白く、カットワークが施されています。

椰子や動物モチーフで、インドのような雰囲気です。

3つ目は、象、ライオンなど動物モチーフを取り入れたインドのような世界。中央に椰子の木が置かれ、エキゾチックなムードです。

水晶の間には、黄色のペガサス。アメジストの紫が神秘的。

4つ目は、黄色と紫の水晶の世界。巨大なアメジストのインスタレーションの中にペガサスが飛んでいます。硬質なマテリアルである水晶とは対照的なファーやシルクをミックスし、スエードのバッグを引き立てます。

背景の衝立に施されているのがムシャラビエ装飾。中庭に噴水を配置するのもモロッコのリヤドの特徴です。

5つ目は、中央に噴水があり、背景にはアラブの伝統的建築であるムシャラビエ装飾が施されています。これはまさにモロッコのリヤド(邸宅)を彷彿とさせるもの。陳列されているバッグはハラコを刈り込んで花やクロコの模様を浮き立たせた手の込んだ逸品。

ロマンチックなピンクのサンゴの間。さまざまな珊瑚が置かれています。

6つ目はピンク色の珊瑚の世界。玉虫色の馬具、バッグは海底に眠る貝のようです。

緑色のグラデーションによるミステリアスな海底世界が広がっています。

最も印象的なのが、この7つ目ではないでしょうか。ここでは緑の海底世界がクリエートされています。ベロアの生地にしわ加工を施し、岩肌を模しています。洞窟の中には、貝や珊瑚を貼り付けたトルソーが鎮座し、まるで海底人か神話の登場人物のようです。手前には透明なテキスタイルが風に揺れて、まるで海水がゆらゆら動くような演出。

緑色のグラデーションによるミステリアスな海底世界が広がっています。
貝殻で装飾したトロフィー形の彫刻の上には、孔雀の羽を貼り付けたゴージャスなハンドバッグ。
リンクル加工したベロアでつくった岩肌の上に置かれたクロコのクラッチ。
最後は、クールなメタルでメゾンを象徴するモチーフである馬が登場。

そして、最後はメタルの世界。シルバーで馬のモチーフが表現されています。エルメスは馬具工房から創業したメゾンですので、馬がエルメスの象徴的モチーフなのです。

こうしたレイラのシュールリアリスムの世界を実現できるのは、熟練の彫刻家、皮革職人、籐細工職人、モザイク職人、石工、クリスタル職人が集結したからこそ。人間の感性と技術にしか生み出すことができない有機的な空想世界に多くの人々が見入っています。

問い合わせ先

この記事の執筆者
某女性誌編集者を経て2003年に渡仏。東京とパリを行き来しながら、食、旅、デザイン、モード、ビューティなどの広い分野を手掛ける。趣味は“料理”と“健康”と“ワイン”。2013年南仏プロヴァンスのシャンブル・ドットのインテリアと暮らし方を取り上げた『憧れのプロヴァンス流インテリアスタイル』(講談社刊)の著者として、2016年から年1回、英語版東京シティガイドブック『Tokyo Now』(igrecca inc.刊)を主幹として上梓。