丈夫で吸水性が高く、速乾性に優れた亜麻(リネン)とは?

紳士淑女の春夏スタイルの風物詩ともいえる素材、リネン。その豊かな風合いや丈夫さ、そして風通しのよさは、化学繊維では決してつくれない快感を与えてくれます。

名作『ベニスに死す』で、老作曲家を演じたダーク・ボガード。白いリネンのスーツは、古きよきヨーロッパのラグジュアリーリゾートを象徴するものだった。©Album/aflo
名作『ベニスに死す』で、老作曲家を演じたダーク・ボガード。白いリネンのスーツは、古きよきヨーロッパのラグジュアリーリゾートを象徴するものだった。©Album/aflo

Q1.「麻」とはどんな素材?

「人類最古の繊維」と呼ばれる植物繊維の麻は、亜麻(リネン)、苧麻(ちょま/ラミー)、大麻(ヘンプ)をはじめ、20種類以上ある。なかでも一般的に知られているリネンは、その丈夫さや吸水性、速乾性に優れた特性が好まれ、古代より親しまれてきました。現代では夏物の洋服や寝具、テーブルクロスなどに使われることが多く、心地よいライフスタイルに欠かせない素材となっています。

Q2.その歴史は?

紀元前8000年頃にはチグリス・ユーフラテス川流域に芽生えていたことが歴史学者によって確認されています。古代エジプトでは神事にも使われる聖なる生地として尊ばれ、純白のリネンは古代ギリシャやローマ人たちも愛用。18世紀以降はヨーロッパ全域で大量生産され、貴族から庶民にいたるまで、幅広く使われていました。日本で麻というとヘンプやラミーが主流で、リネン栽培がはじまったのは明治時代。その種は榎本武揚によってロシアからもたらされたといいます。

Q3.どこで収穫されたの?

リネンの栽培は中国、フランダース地方(フランス北部からベルギー西部、オランダ南部)、ロシア、東欧諸国といった、比較的寒冷地で盛んに行われています。ちなみに服地の世界では「アイリッシュリネン」がブランド化していますが、実は現在、アイルランドではほとんどその栽培や紡績は行われていなません。フランスで収穫し、ベルギーで紡績した繊維をアイルランドで織るのが一般的です。

Q4.どうやって糸になるの?

収穫したフラックス(植物状態の亜麻のこと)を乾燥後、畑の上で約3週間寝かせて発酵させ、そこから採取した繊維を撚ってリネンにします。1回採ると土がやせてしまうため、7年は別の作物をつくる必要があるといいます。

Q5.その魅力は?

まず特筆すべきは、コットンやシルクと比べても吸水性や発散性に優れており、常にサラリとした肌触りをキープする点。また、カビや雑菌の繁殖を抑制するので、においもつきにくい。しかも天然素材のなかで最も汚れが落ちやすく、シルクと違って水に強いため、洗濯するほどに白さやしなやかさを増すという特性もあります。この清潔さ、丈夫さこそリネンが真夏の洋服に最も適した素材といわれるゆえんであり、ベッドやテーブル周りに使われるゆえんです。

Q6.ウイークポイントは?

魅力だらけの素材ですが、あえていうならば伸びづらく、比較的硬い繊維である点。また、シワになりやすい点が挙げられます。しかし前者は心地よいシャリ感、後者は豊かな風合いにもつながる特性ゆえ、それらを理解したうえで楽しみたいもの。摩擦による色あせも、味わいのひとつと捉えましょう。

Q7.ケアはどうすればいい?

リネンは水に濡れることで強度を増す特性があります。ゆえにシャツや寝具類は何度洗濯しても問題ないし、むしろその味わいは深まっていきます。しかし芯地が入っているジャケットの場合は、家庭での洗濯は避けたほうが無難。もちろんドライクリーニングに出してもよいが、その風合いをより生かすためには、少々高くはつきますがウォータークリーニングに出すのがおすすめです。

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この記事の執筆者
1976年埼玉県出身。さまざまなメンズファッション誌に在籍したのち独立、2010年から『MEN’S Precious』のファッションディレクターに。現在はウェブマガジンの執筆や、カタログ製作も手がける。 好きなもの:ウディ・アレン、ウェス・アンダーソン、門前仲町、高円寺、神楽坂、うなぎ、喫茶店、ジャパニーズピザ、東村アキコ、サニーデイ・サービス、ライカ、木村伊兵衛、ビスポーク、ジャーミン・ストリート、松本 隆、トルコ、昭和、剣道、ニッカボッカ、レザー
クレジット :
撮影/林 敏一郎 文/山下英介(Men's Precious)
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