心地よく、風通しよく、より本質的なおしゃれを楽しむこと――それが、『Precious』が提唱する新しいエレガンス、「スローダウン・ラグジュアリー」です。
外食もままならない時節も、家族や友人との食事をゆっくり楽しむ時間の大切さを感じます。おもてなし上手な料理家・行正り香さんに「スローダウン・ラグジュアリー」なおもてなしのマストアイテムと極意をお伺いしました。
行正さんのおもてなしのマストアイテム2品
ペーパーホルダー
手洗い後の手拭きに用意しているゲスト用のペーパータオルは、FUTAGAMIのスタイリッシュなホルダーに。真鍮特有の重みで片手で取ることも可能。
ワイングラス
ツヴィーゼルの『エノテカ/キャンティ』を愛用。「いいグラスをひとつだけ使うなら、このタイプを。泡も赤も白もぐっとおいしくなります」(行正さん)
「気疲れせず、自分も心ゆくまで楽しめる。それが、ワインと3皿でのおもてなしでした」(行正さん)
「ほぼ座った状態」でもてなす3皿
「今日も暑いですね」
そう言って、行正さんが出してくれたウェルカムドリンクは、ワイングラスに注がれたオレンジワイン……と思いきや、心地よく冷えたお茶でした。
「お招きするときは、お酒が飲めない方にもワイングラスで、ワインと同じ色の飲み物をお出しするんです。例えば、シャンパンに合わせて、りんごジュースを炭酸で割ったり。こうすると、仲間はずれ感がなくなるでしょう?」
細やかな気遣いは、さすがもてなし上手。そんな行正さんが誰か来る日につくるのは、「3皿」が基本。前菜・サラダ・メイン、または、サラダ・メイン・パスタなど、もてなす人や時間によって構成しています。それは、会社員時代から友人を自宅に招き、「つくりすぎる・飲みすぎる・呼びすぎる失敗を重ねてきた(笑)」なかでたどり着いたものでした。
「忙しくても無理なくつくれますし、3皿は意外と量があるんです。チーズやデザートも食べることを考えると、健康面で食べすぎが気になる年代には十分なボリュームです(笑)。私自身が、『ほとんど座って楽しめること』も大事なので、お招きするのは一度に5人までにして、さめてもおいしいものをつくったり、下準備をしておいて、乾杯直前に仕上げるようにしています。
頑張って、特別な料理をつくろうとすると気疲れしてしまうので、メニューはふだんの食事でつくっているようなシンプルなものが中心。代わりに、スパイスを使ったり、盛り付けを変えたりと、少しだけ驚いてもらえるような工夫を意識しています」
ワインの抜栓、インテリアすべてがおもてなし
お酒は、「教養のある飲み物」というワインが中心。1万円前後のシャンパンや赤ワインを1本用意し、そこに5千円以下の、手頃でエレガントなワインを組み合わせることが多いそう。
「重かったり、高価なワインばかりだと飲み疲れするんです。皆で持ち寄れば、新しい出合いや発見もあって楽しいですよね。ただ、ワインは抜栓のタイミングが重要。開けてすぐおいしい白ワインと違い、一般的に、赤ワインは抜栓から1~2時間後、ブルゴーニュのジュヴレ・シャンベルタンやトスカーナのサッシカイヤなどは半日後が飲み頃ともいわれています。乾杯する時間から逆算して開け、そのままボトルごと冷蔵庫へ入れておくと、デキャンタするよりも柔らかな味に。高いワインを選ぶより、飲むタイミングに合わせて抜栓するほうが、よほどおいしく楽しめます」
時間が育てるおいしさも、最高のおもてなし。それは、空間も同じ。ゲストが来る前には、ルームフレグランスのスティックの上下を返し、ジャズを流して、照明を落とす。ゲストが手洗いや消毒に使うアイテムは洗練されたデザインのものを選ぶ……。心地よく整った空間も、これから始まる宴への期待をふくらませてくれます。
「おもてなしは、トイレや玄関の清潔感など、インテリアも含めてのこと。印象は香りとも直結するので、料理をひと品増やすくらいなら、私は玄関でお香を焚きます。料理やお酒、インテリアを同時進行で考えることは労力を要しますが、一方で頭の体操にもなり、私は人をもてなすほど、仕事もうまくいく気がするんです。定期的に人を呼ぶと、家も片付きますし(笑)」
ゲストもホストも心ゆくまで楽しめる、行正さんの「ワインと3皿」。おもてなしを再開する日の参考に。
- PHOTO :
- 神林 環
- STYLIST :
- 澤入美佳
- EDIT&WRITING :
- 松田亜子、池永裕子(Precious)