自分の印象を下げないためには、ビジネスのときだけでなく、プライベートな場面でもきちんとした敬語を使えることが大切。しかし、今さら誰かに聞く機会がなかなかないもの。

そこで、さまざまなシーンにおける知的に見える”言い換え”マジックを、ビジネスマナー・敬語講師の井上明美さんにシリーズで解説していただきます。今回は、「会食・接待」シーンでのふさわしい敬語の使い方をお聞きしました。

■1:「わざわざ来てくれてありがとうございます」は×

わざわざ来てくれてありがとうございます

招待する側のあいさつは、「本日は、お忙しい中をお越しいただきまして、ありがとうございます」が正解。

「わざわざ」という表現は、ほかのついでではなく、そのためだけに行うという意味のほかに、しなくてもよいことをするという意味もあるため、「よけいなことをしてくれて」という意味合いを帯びることもあるため、少々注意が必要です。

また、今日のために時間をさいてくれたことへの感謝の意味を込めて「お忙しい中を」といった表現を加えます。「来てくれて」の部分は、「来る」の尊敬語「お越しになる」を使い、「お越しいただきまして」とします。

×:「わざわざ来てくれてありがとうございます」
○:「本日は、お忙しい中をお越しいただきまして、ありがとうございます」

■2:「今日はゆっくりしていってください」も×

正しくは、「今日(本日)は、どうぞごゆっくりなさっていらしてください」です。「ゆっくりする」の尊敬語は「ごゆっくりなさる」、「いって」は「いらして」になります。「今日」はそのままでもよいですが、もう少し改まった言い方をしたい場合は「本日」にします。

これは「改まり語」といわれるもので、尊敬語や謙譲語などとは異なりますが、敬語を使う上では欠かせず、使用することによって前後の敬語が生きてくるものです。また、「どうぞ」や「どうか」などの言葉を添えることで、その気持ちを強める効果があります。

×:「今日はゆっくりしていってください」
○:「今日(本日)は、どうぞごゆっくりなさっていらしてください」

■3:「今日はどうもありがとうございます」は△

今日はどうもありがとうございます

招待を受けた側のあいさつは、「本日はこのような席を設けていただきまして恐縮に存じます」か「本日はこのような場にお招きにあずかりまして、まことにありがとうございます」が正解です。

接待の場を設けてくれた、相手の厚意に対する感謝の気持ちを丁寧に述べます。

△:「今日はどうもありがとうございます」
○:「本日はこのような席を設けていただきまして恐縮に存じます」

■4:「飲み物は何がいいですか」は×

飲み物を聞くときは、「お飲み物は何がよろしいですか」「お飲み物は何になさいますか」「お飲み物は何にいたしましょうか」がベスト。「飲み物」は、相手の飲む物なので「お飲み物」としたほうが丁寧ですね。

「何がいいですか」の「いいですか」は、「よろしいですか」となります。「何にしますか」と置き換えた場合は、「する」の尊敬語「なさる」を使い、「何になさいますか」にします。あるいは謙譲語「いたす」を使い、「何にいたしましょうか」とします。

×:「飲み物は何がいいですか」
○:「お飲み物は何になさいますか」

■5:「お酒は普段よく飲まれますか」は△

お酒は普段よく飲まれますか

お酒が飲めるかどうかを聞くときは、「お酒は、普段よくお飲みになるのですか」か「お酒は、普段よく召し上がりますか(お召し上がりになりますか)」を。

「飲まれる」は、「れる・られる」型の敬語ではありますが、もっと丁寧に表現するならば「お飲みになる」(「お(ご)~なる」型の尊敬語)になります。

あるいは、「食べる・飲む」の尊敬語である「召し上がる」を使い、「召し上がりますか」「お召し上がりになりますか」とすることも可能です。

△:「お酒は普段よく飲まれますか」
○:「お酒は、普段よくお飲みになるのですか」

■6:「遠慮せずたくさん食べてください」は×

料理を勧めるときは、「どうぞご遠慮なさいませんように。たくさん召し上がってください」か「どうぞご遠慮なさいませんように。たくさんお召し上がりください」が正解です。

そのままの表現でいくなら「遠慮なさらずに~」「どうぞご遠慮なく~」となるのですが、なんとなく自分が偉そうに聞こえる感もなくもありませんので、「どうぞご遠慮なさいませんように」としたほうがスマート。

そのうえで、「たくさん召し上がってください」あるいは「たくさんお召し上がりください」とした方が、きつい感じがせず、収まりがよいかと思います。

また、「お召し上がりください」は、二重敬語だと思っている方もあるようですが、こちらは昔から定着している例で、誤りではないとされています。

×:「遠慮せずたくさん食べてください」
○:「どうぞご遠慮なさいませんように。たくさん召し上がってください」

■7:「とてもおいしい料理でした」は△

とてもおいしい料理でした

招待した側にお礼を述べるときは、「とても(たいへん)おいしいお料理でした」か「とても(たいへん)おいしいお料理でございました」を。

最初の文例でも決して間違いではありませんが、もう少し重きをおくならば、「料理」を「お料理」に、さらに文末の「でした」を「ございました」にするとより丁寧になります。

また、やや古風な言い方にはなりますが、「おいしゅうございました」でもよいでしょう。

△:「とてもおいしい料理でした」
○:「とても(たいへん)おいしいお料理でした」

■8:「今日は楽しく過ごせました」も△

正しくは、「お蔭様で、今日(本日)はたいへん楽しく過ごすことができました」か「お蔭様で、今日(本日)はたいへん楽しく過ごさせていただきました」か「お蔭様で、今日(本日)はたいへん楽しいひとときでございました」になります。

「今日」は「本日」という改まり語に換えても可です。「過ごせました」は「過ごすことができました」、「過ごさせていただきました」としていくとより丁寧度が増すでしょう。「お蔭様」とのひと言を添えることで、相手への感謝の意が強まります。

招待する側・される側、それぞれの立場から、相手への感謝や心遣いを言葉に込め、最大限に表現できるようにしていきましょう。

△:「今日は楽しく過ごせました」
○:「お蔭様で、今日(本日)はたいへん楽しく過ごすことができました」

井上明美さん
ビジネスマナー・敬語講師
(いのうえ あけみ)国語学者、故金田一春彦氏の元秘書。言葉の使い方や敬語の講師として、企業・学校などの教育研修の場で講義・指導を行う。長年の秘書経験に基づく、心くばりに重きを置いた実践的な指導内容には定評があり、話し方のほか、手紙の書き方に関する講演や執筆も多い。著書に『敬語使いこなしパーフェクトマニュアル』『最新 手紙・メールのマナーQ&A 事典』(ともに小学館)、『知らずにまちがえている敬語』(祥伝社新書)、「大和ことばで書く短い手紙・はがき・一筆箋」(日本文芸社)、『一生使える「敬語の基本」が身につく本』(大和出版)など多数。Webサイト「ALL About」では、「手紙の書き方」のガイドを務めている。
『敬語使いこなしパーフェクトマニュアル』井上明美・著 小学館刊
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
WRITING :
小野寺るりこ