どう受け止めますか?変化する「妻のかたち」

男女平等の重要性や、性別にとらわれない生き方などの議論が盛り上がるなか、改めて目を向けたいのが、「夫婦のあり方」ではないでしょうか。そこで雑誌『Precious9月号』では、Preciousのメールマガジンにご登録いただいた読者の皆様に、記述式のアンケートを実施。そのなかから、30〜65歳までのパートナーのいる、働く女性(パート含む)の回答約300通を有効とし、その結果を基に記事を作成しました。年齢構成は30代15%、40代35%、50代30%、60〜65歳20%、東京在住47%を中心に日本全国から回答が寄せられました。

今回はそのアンケート結果から、家庭内のジェンダー格差にまつわる「家事負担」の意識差について、 モデルの牧野紗弥さんのご意見も交えてご紹介します。

〈アンケートテーマ〉家庭内のジェンダー格差はここから?「家事負担」への意識差

Q1 : 家事が自分だけの義務だと感じたことはありますか?

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※複数回答あり

「家事を押し付けられたと感じたことはない」という声が3分の2以上を占めるものの、「まったく感じない」に続き、「感じないが理解は欲しい」と考える女性も相当数いるという興味深い結果に。

・「『夜ごはんつくれなくてごめんね』と言うと『気にしないで』と夫。本当は『僕がつくるよ』と言ってほしい…」(37歳・設計事務)
・「深夜、彼が食べたお皿がそのままシンクに。『明日やるね』と言うものの、朝洗うのは私です」(36歳・アパレルMD)
・「やる気はあっても、夫はいつも指示待ち態勢。自発的に動いてくれれば…」(44歳・旅行会社)

など、微妙な思いを抱える女性の姿が浮かび上がります。

・「手を怪我して手術して帰ってきたとき、『で、夕飯はどうするの?』と夫に言われ…」(38歳・保育士)
・「家事を押し付けられたと考えるより、私自身の食べたいものを用意し、心地よいと感じるように洗濯したり、掃除したり、マイペースで家事を楽しみたい」(61歳・会社役員)
・「夫が管理職として出世するにつれ、私より早く帰宅するように。テレビを見ている彼を横目に急いで食事の支度をするとき、すべてを放り出したくなる」(54歳・大学教員)
・「ゴミ出しをお願いしたら『手が臭くなる』と言われ、大喧嘩に発展」(34歳・スタイリスト)

などの声も。家庭内ジェンダー格差を埋めるため、価値観のすり合わせが必要なこともあるようです。

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Q2 : 仕事で家事に手が回らないとき、マイナスの感情を抱くことは?

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責任ある立場で働いている限り、ときに家事がおろそかになってしまうのはどうしても避けられないこと。そのことに罪悪感などがあるかという問いには、「ない」という声が約半数を占めました。

・「罪悪感はまったくなし。家族全員で協力し合います」(45歳・客員研究員)
・「夫は一人暮らしが長く、むしろ細かいところまで丁寧にやってくれるので、助かっています」(38歳・美容医療経営)
・「お互いの仕事をリスペクトしているので、そういう感情を抱くことはありません」(42歳・ブライダルコーディネーター)

一方で、4人にひとりは家事に手が回らないことに辛い思いを抱えていました。

・「出来合いのお惣菜に頼る日々が続くと、劣等感を抱いてしまいます」(54歳・法律事務所)
・「夫が私の下着を洗って干して畳んでいる姿を見て、さすがに申し訳ない気持ちに…」(47歳・建築士)
・「家の中が整っていないと、罪悪感というよりもストレスを感じてしまう性分。そんな自分との折り合いのつけ方を探しています」(37歳・客室乗務員)

そんな手が回らないときの解決法をそれぞれに見つけている姿も印象的でした。

・「すべてを完璧にこなすことを手放しました!素直にお願いできるようになり家族の絆が強まった気が」(45歳・生命保険)
​・「家事に関してはなし。育児に関しては劣等感、罪悪感だらけです」(37歳・外資系IT企業)
・「悩んだ末に思いきって家事代行サービスをお願いしてみたら、家はピカピカ、その間に気分転換もできて大成功。今後も定期的に頼む予定」(47歳・外科医)
・「家事も仕事も…と無理を重ねた結果、体を壊すことに。家族のために頑張ったはずが、これでは本末転倒。『自分ができることをするだけ』と割り切ってから、心身が楽になりました」(40歳・外資系銀行)

ときに時間と労力をお金で買ってみたり、意識をアップデートしたり、自己改革を進める女性が増えているようです。

Q3 : 「家事分担」について、夫と話し合ったことはありますか?

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夫婦間のコミュニケーションは大切にしたいものの、「家事分担」がテーマとなると、ややハードルは上がる…?。ただ、約半数の女性たちはしっかりと話し合いの機会を設けているようです。

・「何度も話し合いを重ね、試行錯誤した結果、『気付いたほうがやる』のがわが家のやり方に。負担が少ないほうが外食に連れ出すことも暗黙のルールになりつつあります」(39歳・嘱託産業医)
・「チェック表をつくって可視化しています。ドライになりすぎないよう『ありがとう』の感謝の気持ちをお互い意識して伝え合うように」(48歳・歯科衛生士)
・「私が起業するタイミングで徹底的に話し合いました。食材の買い出しほか、ルーティンの見直しにもなり、話し合ってよかったと実感!」(36歳・フラワーデザイナー)
・「夫は理系男子なので、感情抜きで伝えたほうがスムーズ。『15時に洗濯物を取り入れること』『クリーニング3点をピックアップ』などお互いビジネスライクにやりとりします」(54歳・ITエンジニア)
・「『俺は忙しい』『俺の母親は完璧だった』が口癖の夫。『では仕事を辞めますので、このぶん稼いできて』と給料明細をたたきつけて以来、家事に協力的になり、話し合いがもたれるように」(43歳・損害保険会社)
・「夫から『察してほしいという態度が辛い』と言われ、すぐ不機嫌になる自分を反省。お互い言葉にする努力を重ねています」(34歳・シンクタンク研究員)

話し合いをしていない夫婦は、「順調で問題がない」、もしくは「話してもむだ」というふたつのパターンに分けられるよう。

・「私は料理と洗濯が好き、相手は掃除と整頓が好き。補い合える人なので、改まって話をしたことはないかも」(41歳・フリーランスPR)という良好な場合と、「夫は『ザ・昭和の男』なので、まったく耳を貸そうとしません。もし話し合いの結果、家事分担したとしても、洗い方や畳み方など、さまざまなところで不満が残りそうで諦めています」(58歳・住宅メーカー)という諦め派と。ふたりの関係性が大きく問われることになりそうです。


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◇◇新しい妻のかたち◇◇ モデル・牧野紗弥さん

牧野紗弥さん
モデル
まきの・さや モデル。『VERY』『Domani』などのファッション誌や広告で活躍中。3児の子育てと仕事の両立に悩む等身大の姿が共感を呼ぶ。家族とジェンダー、女性の自立について、実体験から発信を続けている。

「家庭内ジェンダー格差を実感し、ペーパー離婚に向け、始動中」

現在3人の子供を育てながら、モデルとして活躍する牧野さん。数年前から家庭内のジェンダー観に違和感を抱くようになり、「新しい夫婦のかたち」へ関係を変化させるべく、ペーパー離婚による事実婚へ動いている最中です。

「子供が『夫の家の孫』と言われたり、お宮参りや七五三が『夫の家の都合を優先』という空気感になるたび、モヤモヤを抱えるようになりました。転機は私が復職を考え始めたときのこと、夫の予定を優先し、家事育児と両立して…というなかで、『あなたは何もしていない』と夫とぶつかるようになり、こう言われたのです。『言われたことはできても、言われてないことは想像ができない』と。夫からは『1週間、家事育児のすべてを自分がやってみる』という申し出があり、その後『知らなかったことを知る機会をくれてありがとう』という言葉をもらいました。そこで私も『妻』という役割に縛られていたこと、夫の知る機会を奪っていたことなどに気が付いたのです」

少しずつ関係がフラットになるなか、以前から考えていた夫婦別姓を提案。事前に調べていたメリット、デメリットを丁寧に説明し、今では子供たちを含めた話し合いに発展しています。

「これからは『女なのに』『男だから』などのジェンダーバイアスから自分も他者も解放し、自分の幸せと家族の幸せを並行して考えていきたい。その先にはきっと思い切り笑う私がいるはず。そんな明るい未来を想像しています」

PHOTO :
Getty Images
EDIT&WRITING :
本庄真穂、喜多容子(Precious)