雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動を連載でご紹介しています。
今回は、山本能楽堂事務局長、山本佳誌枝さんの活動をご紹介します。
能をリデザインする「Noh for SDGs」伝統芸能でよりよい未来をつくる
650年にわたって演じ続けられてきた能楽を、「難解な芸能」から「現代に生きる芸能」へ――。
大阪「山本能楽堂」三代目、観世流能楽師・山本章弘氏を夫にもつ山本佳誌枝さんは、事務局長として、能の世界を外へと開いていくためにさまざまな取り組みを行ってきた。なかでも「Noh for SDGs」を掲げて10年以上にわたり公演を重ねている新作能『水の輪』と『オルフェウス』は、国内のみならず海外でも上演。
「環境問題をテーマに新作能をつくるのは、これまでになかったことだと思います。『水の輪』は、大人たちが汚してしまった水環境を、子供たちが水鳥となって、力を合わせて再生する物語。
『水都大阪2009』(※)というイベントの一環で実現したプロジェクトだったのですが、能の世界以外の人や子供たちと一緒になって作品をつくり上げるということが、すごくうれしく、楽しかった」(山本さん)
大阪大学大学院で能の研究をしていたブルガリアからの留学生と知り合ったことをきっかけに、ブルガリアとの交流も生まれた。『オルフェウス』は、ブルガリアの国民的女優と共に発案し、進めたプロジェクトで、地元の貧しい子供、マイノリティの子供たちも出演。現地でも話題を呼んだ。
【SDGsの現場から】
●ブルガリア・ペトカ村の子供たちが出演
●新作能『水の輪』|初演は特設船上ステージで!
「そもそも、日本人の考え方はSDGsなんです。能装束もすべて虫干し、能面やお道具も修繕して大切に使い続けています。電気がなくても演じられますし。伝統のなかにサステイナブルな要素が残っている、そのことを再確認して、次の世代に伝えていくことが大切だと思っています」(山本さん)
3作目の新作能も制作中。伝統芸能だからこその普遍的な視点で、今を生きる人の共感を呼ぶ。
※水都大阪とは…かつて「水の都」と呼ばれた大阪を取り戻そうとする活動が、2001年に都市再生プロジェクトに指定。さまざまな試みが展開されている。
- PHOTO :
- 香西ジュン
- EDIT&WRITING :
- 大庭典子、喜多容子(Precious)