マックスマーラやドルチェ&ガッバーナなど、Precious.jpでも人気の海外トップブランドのプレスを歴任してきたロイ・明美さんによる連載企画。

結婚を機に英国へ渡りロンドンで暮らし、2014年からはスコットランドの小さな町と村に2つの住まいをもつ彼女の素敵なカントリーライフを、自然、食、インテリアなどさまざまな側面からお伝えします。

今回は、野生動物や植物の保護区でもあるバラクーダー村ならではの、自然豊かな景観の中に暮らす動物の姿をお届け。コテージに遊びに来る動物や、農場で働く動物など…その種類は実に多彩です!

心と体を癒してくれる自然と動物たち

スコットランドは英国だけでなくヨーロッパの中でも、多様な生物が生息しているトップに上がると言われている国。そして、私たちのコテージがあるバラクーダー村は、スコットランド初の国立公園「ローモンド湖とトロサックス国立公園」内にあり野生動物や植物の自然保護区に指定されています。

ここは、多くの自然愛好家がアカリスやバードウォッチング、生物や植物の写真を撮りに訪れるヒーリングスポットでもあります。

コテージに遊びにやって来る野生動物たち

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コテージの窓から見える朝靄に包まれた景色。池には鴨の親子が(ちなみにフェンスは改装中)。

カントリーサイドの暮らしは、野生の動物たちと一緒に朝を迎えます。

鳥の声で目覚め、池にやってくる鴨の親子やつがいの白鳥の水しぶきの音。小石の上を歩く小さな足音は、逃げることなく悠々と歩く雉。フィールドには野生の鹿が群れをなして来ます。

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カモの親子はいつも一緒。
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鹿の群れは、迫力のある光景。
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身動きせずにこちらを見つめる鹿。
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毎日池にやって来るつがいの白鳥。

保護指定されている英国固有種、アカリス

スコットランドは、絶滅危機にある英国固有種のアカリスの数少ない生息地です。

2009年に学者や地主が絶滅を防ぐためのアカリス保護プロジェクトを立ち上げました。スコットランド政府の支援のもと、アカリスを脅かす北米から来た灰色リスの駆除を実行しています。

アカリスを見るために訪れる人も多く、村人たちも遭遇した時は大喜びで、おしゃべりの話題になるほどです。

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餌箱の蓋を開けて食べる姿が微笑ましい。

我が家の大木ダグラスファーの高い所にも、アカリスのための餌箱があります。すばしっこく木に登って蓋を開けて食べる動作や、止まって振り向いてこちらを見る仕草など、とてもチャーミングで思わず笑みがこぼれるほど!

この餌箱は、アカリス保護のために私たちができることのひとつとして取り付けたものです。そしてまた、ときどき車に轢かれてかわいそうなことになっているので、外から村に来た人にもわかるように「アカリス注意」のサインを作って通りのポールに設置しました。

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村の通りに設置した「アカリスに注意」のサイン。

世界最古の登録牛、ハイランドカウ

村にはスコットランド在来種の牛、世界最古の登録牛種のハイランドカウもいます。

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村のファームで飼育されているハイランドカウ。

フレンドリーでおとなしいのでペットとして飼っている人もいるハイランドカウは、長い角を持ち、毛が長いため寒さに強く、自然保護のために役立ってくれる草食動物です。彼らを荒れた土地を放牧することで、長い毛に付着した草花の種子が風にのって広がっていき、豊かな緑が生まれるのです。また糞は優れた肥料となります。

食用となる肉は、牛肉より40%も脂肪とコレステロールが少なく、たんぱく質と鉄分が多く柔らかい食感に深みのある風味で高級肉として知られています。

可愛い風貌が観光客にも人気! ハイランドカウがモチーフのお土産物も沢山あります。

自然と動物たちが奏でるヒーリングサウンド

夜明けから日中聞こえる野鳥たちのさえずりは、まるで大合唱のようで心地よい響きです。お昼時になると、キツツキが木をつつく音やカッコウの声が村中に響き渡ります。

天気のいい日は、車でカヌーを湖まで運んで山々に囲まれた誰もいない湖で過ごすのも、最高のヒーリング効果が得られる方法です。

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自然の音がよく聞こえる誰もいない湖。

鳥の鳴き声、馬の蹄の音、風にそよぐ木々や透き通る水の音、羊や牛の声、さまざまなワイルドライフの音がこだまして、清々しい自然の恵みに癒されることに感謝の気持ちが湧いてきます。

そして夜になると、村は静かで幻想的なムードに包まれます。

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月明かりの中、静かに立ちつくす馬。

隣のフィールドに放牧されている馬たちがゆったりとしたリズムで走る音は、夜だとより響いて、気持ちのよい音で癒されます。

夜になると忙しいのはフクロウです。「ホッホーホッホッー」と深い声に、最初は一体何なのか不気味に思いましたが、フクロウとわかってからは「あっ、また来たな」と耳を傾け、ほっこりとした気持ちになります。

美しい景観に彩りを添える動物たち

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景観をより美しくしてくれる馬の姿。

村の散歩は、可愛い動物たちに会える楽しい時間です。彼らがいることで、村の豊かな自然にさらなる魅力が加わっていることがよくわかります。

たとえば、湖が一番よく見えるフィールドに放牧している友人の3頭の馬。湖を囲む山並みと大きな空、そして馬たちが織りなす美しい景色は、観光客も車を止めて写真におさめる絶好の撮影スポットにもなっています。

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湖と山並みを見渡せる絶景。
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人懐っこくて優しい性格の3頭。

奥にいるのがスコットランド原産のシェットランド・ポニーのカーラ。その隣で優雅で凛としている毛並みのいい茶色はハル。ハルが大好きな白馬のファーガスです。遠くから名前を呼ぶとゆったりと歩いて近寄ってくるハルの姿は、ひときわ優雅で美しくうっとりします。

また、ファームで飼育されている羊たちも自然の中の景色を彩るようにブレンドされています。遠くの山にいる羊たちは、白いコットンボールがちりばめられているようです。

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大きなカールの角を持つ真面目顔の羊。

羊たちは、よく見ると可愛かったり面白い顔をしています。子羊が生まれる季節は、ピョンピョン跳ねる動作や姿が本当に可愛くて、ずっと見ていたくなります。

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お母さんと一緒の可愛い子羊。

羊は穏やかな性格ですが、たまに雄の羊が角をぶつけ合って格闘しているのが、ものすごい大きな音と何時間も続くので驚かされます。これは優劣または交尾争いなのだそうです。

豚をペットとして飼っている人もいます。土壌を再生してくれるので、豚に働いてもらっているようです。子豚が並んで一緒にチコチコと歩く姿は、なんとも言えず愛らしく和ませてくれます。

こんなふうに動物たちの姿や声が日常生活の一部になっている暮らしは、日々新鮮で、自然と共に生かされていると実感します。

今日のおすすめ「なごみワンコ」は…笑顔いっぱいのスコティッシュ・テリア

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    みんなに笑顔を振りまくスコティ。
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    尻尾をふってジャンプして、幸せ一杯の挨拶をしてくれました。

森で出会ったスコットランド原産のスコティの愛称で人気のスコティッシュ・テリア。写真を撮るのもやっとなくらい、笑顔一杯で嬉しそうに大はしゃぎ。赤いカラーがよく似合う、フレンドリーなスコティでした。


以上、スコットランド在住のロイ明美さんの連載第14回をお届けしました。

豊かな自然と共に生きる、「リアル・ラグジュアリー」なライフスタイル。次回はどんなエピソードが届くのか、ぜひお楽しみに!

この記事の執筆者
東京生まれ。父の仕事の関係で小学生時代をペルーのリマで、高校から大学までを米国シカゴで過ごす。帰国後、ジョルジオ・アルマーニ、マックスマーラ、ロメオ・ジリ、シンシア・ローリー、モスキーノ、ドルチェ&ガッバーナと海外有名ブランドのプレスを歴任。東京で知り合ったスコットランド出身のカメラマンのご主人と8年の遠距離恋愛の末、2005年に結婚して英国へ。 撮影コーディネートや、伝統工芸の取材執筆などを手がけながら、温かくセンスのいいカントリーライフを楽しんでいる。掲載写真の多くは夫のコリン・ロイ氏によるもの。インスタグラムアカウント:akemi_okumura_roy
PHOTO :
COLIN ROY