雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は、森の幼稚園・シュタイナー幼児教育施設「こども島ボンサイ」共同設立者・園長、リッケ・ローセングレンさんの活動をご紹介します。

リッケ・ローセングレンさん
森の幼稚園・シュタイナー幼児教育施設「こども島ボンサイ」共同設立者・園長
オーストラリアの大学で幼児教育を学び、保育士に。2000年にパートナーと託児所「ボンサイ」を開設、2002年に森に隣接する場所で移動保育園としてスタート。現在は35名のスタッフで、1歳から6歳まで約140人を保育中。

「森は友達。だから大切にする」移動保育園に学ぶ自然との共生

およそ140人の子供たちが、毎日、日中のほとんどを森で過ごす。リッケさんが運営する「ボンサイ」は、移動保育園()と呼ばれるデンマークの保育施設で、通ってくるのは都市部に住む子供たち。コペンハーゲン中心部から北へ車で20分ほどのところ、森に隣接する建物が園舎になっている。

「子供たちには『森は友達』と伝え、自然を大切にすることを教えています。例えば、散歩中にカタツムリを見つけたら、捕まえずに観察する。花や木を切ったり、ゴミを捨てたりといった、森が悲しむことはしない。

人間が同じ場所を踏み続けると植物が育たなくなるから、散歩のルートは意識して変える。森の中での遊びや学びの際には、私たち保育者も声かけや手助けはしますが、子供たちはすぐに自身の判断で、自然を守る行動をとるようになるんです」

シュタイナーの幼児教育をベースにした独自の教育法は、国内のみならず、海外からも注目を集めており、研修や視察も多い。日本でも昨年『北欧の森のようちえん』と題した翻訳本が出版された。

「コロナ禍で、子供だけでなく大人も、屋外で過ごすことが重要になっています。森や海岸が身近にない環境だったとしても、公園ならあるはず。庭に野菜を植えてみるのもいい経験になります。制約のあるなかでもいろいろと試みてみる。そういう態度を、まず大人が示すべき。大切なのはゴールではなく、プロセスなのですから」

「ボンサイ」という名は、「小さな子供を盆栽のように丹精込めて育てる」というコンセプトを表す。

「世界中に、私たちと同じコンセプトをもつ保育園がたくさんできたらいいなと。それを広めていくことが、私のライフワークです」 

【SDGsの現場から】

●子供たちはお弁当や荷物をもって、毎日森へ

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「ゴミがあると森がかわいそう」と教わり、いつしか自ら行動していくようになる。

●保育園には、約140人の子供と35人のスタッフが在籍

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森に隣接する元レストランの2階で移動保育園としてスタート。現在は建物全部が保育園に。

※移動保育園とは…福祉国家として知られるデンマーク発祥の幼児教育法。屋外で過ごし子供の体力も養われる。公立も私立も国の援助で運営。

PHOTO :
Rasmus Rønne、Børneøen Bonsai
WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT :
大庭典子、喜多容子(Precious)
取材 :
Chieko Tomita