みなさん、シャンパンやカヴァってどんなグラスで飲んでいますか? 今はフルートと呼ばれる細長いグラスが主流ですね。
先日、表参道のビーガンレストラン「エイタブリッシュ」でスパークリングワインを頼んだら、驚くほど薄いグラスで出されました。いわゆるクープグラスなんですが、ちょっと違う。グラスは広く円盤のよう。グラスの下のステムは細すぎてあまりにも儚い…。
聞いてみると、1910年に東京で創業した木村硝子店の『ピーボ オーソドックス』というグラスでした。江戸から伝わるガラスを極薄くする技術を、スロバキアの職人に伝えてつくっている、オリジナルデザインだそうです。木村硝子店の若旦那が、世界各地の伝統的なクープグラスを研究して発表した、新時代のクープグラスです。
いちばん違うのはグラスの形。通常のクープは縁が内側に丸まっていますが、これはあえてフラットにディスク状になっていて、鼻を近づけると飲み物の香りがふわっと広がります。直径約11㎝と、意外と広いんですよ。また浅く見えますが、240ccとしっかり量も飲めます。デザートグラスにしても素敵なんです。
手に触れてどきっとするのが、細いステム。わずか直径4㎜。これは職人がスーッと引き伸ばして手づくりしているそうです。強い力で持つと折れてしまいそう(折れませんけど)。だからお酒を口にするときに、少しきちんとした気持ちになります。エイタブリッシュのオーナーさんも「お店で使うときも、丁寧に扱おうという気持ちになりますから、割ってしまうことがないですよ」と言っていました。
そしてこのグラスのよさはもうひとつ。インテリアの目線で見ると、ステムが細く、強い主張がありません。テーブルの上や食卓越しに見えるインテリアの景色を邪魔することなく、静かに佇んでくれるのです。
問い合わせ先
- 木村硝子店 TEL:03-3834-1781
- TEXT :
- 本間美紀さん キッチン&インテリアジャーナリスト
公式サイト:REAL KITCHEN&INTERIOR
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- 文/本間美紀