2022年4月4日(月)よりPARCO劇場にて開幕する『セールスマンの死』に出演する鈴木保奈美さん。かつては敏腕セールスマンだったけれど、現在は精彩を欠く夫を献身的に支える妻、リンダを演じます。鈴木さんにとって本作は実に25年ぶり、2度目の舞台。新しい世界に挑む決断のベースには、いつも変わらぬ好奇心があるようです。

先週公開された【前編】に続き本記事では、役柄に対して抱いている思いと共に、鈴木さんの原動力である”好奇心”についてもお話を伺いました。

【前編はこちらから】鈴木保奈美さんインタビュー|観てくださる方たちに、生きる力になる何かをお渡ししたい

新しい世界に飛び込むときの心境は、“楽しい!”しかない

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鈴木保奈美さん

――ひとりの女性としてリンダと共通点を感じる部分はありますか?

「自分との共通点はあまり考えないですし、リンダをどう演じようかということに関しても稽古が始まるまではまっさらでいようと思っています。リンダをどうするかによってかなり男性たちの関係性が変わってくるような気がするので、演出家が何かを考えているのではないかと期待しています(笑)

私のなかにはまだ演技についてのアイデアがないので、無理にひねり出すのではなく、何かが動くのを待っている感じですね」

――Netflixの『浅草キッド』でも夫に尽くす献身的な妻を演じていましたが、まったく違うキャラクターですね。

「私は『浅草キッド』では献身的な役を演じたつもりはなくて、夫である深見さんの芸が本当に好きで、成功したところを見たいと思っている人だと捉えていました。尽くすというよりも、自分が見たいもののためにやっている。やりたいことを我慢して相手のためにすべてを捧げているという感覚ではなく、ある意味では自分の欲望のためにやっているんだな、っていうふうに思っていましたね」

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鈴木保奈美さん

――今回の舞台のお仕事をはじめ、新しい世界に飛び込むときは勇気が必要ですか? それとも期待感のほうが上回るのでしょうか。

「“楽しい!”しかないです。私は臆病でいつもくよくよするたちですが、せっかく新しい機会をいただいたのに、これに乗らなかったら何をして日々暮らすのですか? って思います。勇気はないけれども、ひとつところにいたくないのかもしれませんね。食べたことがないものがあったら食べてみたいし、行ったことのない国には行ってみたいし、見たことがないものを見てみたい。好奇心が強いのだと思います」

インタビュアーとしてのお仕事は、かなり新しい冒険

――お仕事に限らず、日常生活でも好奇心が強いほうだと思いますか?

「それほど幅広くいろいろなことをやっているわけではないのですが、割とひとりでどこにでもよく出かけますし、好奇心はあるほうだと思います。逆に言えば現状に100%満足していなくて、もっと違うものがあるんじゃないか、もっと楽しいことがあるんじゃないかと常に思ってしまうほうなのかもしれません。たぶん欲張りなのだと思います(笑)」

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鈴木保奈美さん

――今、お仕事以外で好奇心のアンテナを刺激されていることは何ですか?

「今は割と何でもお芝居や書くお仕事につながってくるので、新しい体験をしてもこれは書くネタになるぞ、と思ったりしていますね(笑)。あとは『Precious』のカルティエの連載でインタビュアーとしていろいろな人に話を聞きに行くことは、かなり新しい冒険です。

人見知りで自分からお話をするのは基本的には苦手なんですけれど、こちらの連載では、『この人のお話を聞いたらいいかもしれない』と思ったら、どこかでお名刺をいただいた方に思い切ってメールをしたり。これはなかなか今までなかったことで、コンタクトをとるときもインタビューをするときもドキドキしますが、そのしんどさがあるからこそひとつずつクリアしていく喜びが生まれるような気がします。

宝石職人の方など、お話することが本業ではない方にインタビューをすることが多いので、どういう聞き方をすればいいのか気を遣いますが、新しい”筋肉”がついたなということは感じています」


以上、鈴木保奈美さんのインタビュー後編をお届けしました。舞台『セールスマンの死』の一般チケット発売は、本日よりスタート! 舞台上での鈴木さんの活躍が、今からとても楽しみです。

鈴木保奈美さん
女優
(すずき ほなみ)1966年8月14日生まれ。東京都出身、A型。Netflixで配信された映画『浅草キッド』(2021)で妻の麻里役を好演。2020年12月に発売されたエッセイ集『獅子座、A型、丙午。』(中央公論新社)など、文筆家としての才能も話題となっている。

<パルコ・プロデュース2022『セールスマンの死』作品情報>

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パルコ・プロデュース2022『セールスマンの死』メインビジュアル

1950 年代前後のアメリカ、ニューヨーク。かつて敏腕セールスマンだったウィリー・ローマンも63歳となり、精彩を欠いていた。妻のリンダは献身的にウィリーを支えるが、30歳を過ぎても自立できないふたりの息子たちとは、過去のある事件をきっかけに微妙な関係になっている。行き詰まったウィリーは、家族と自分のために、ある決断を下すが…。

トニー賞などを受賞している、アーサー・ミラー作の演劇界の金字塔をイギリス人演出家、ショーン・ホームズの演出で上演。出演に段田安則、鈴木保奈美、福士誠治、林遣都、鶴見辰吾、高橋克実ほか。

【東京公演】PARCO劇場 2022年4月4日(月)〜29日(金・祝)
※このほか松本、京都、豊橋、兵庫、北九州公演あり

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小倉雄一郎(小学館)
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WRITING :
細谷美香
EDIT :
谷 花生