2022年4月4日(月)よりPARCO劇場にて開幕する『セールスマンの死』は、鈴木保奈美さんにとって25年ぶり、2度目の舞台となります。アーサー・ミラーの名作戯曲の舞台は、1950年代のアメリカ。かつて敏腕セールスマンだったウィリー・ローマンを中心に、競争社会の現実や挫折、家族の崩壊などが描かれていきます。
念願だったという舞台のお稽古を前に、イギリス人の演出家がどのような視点で演出をするのか、主演の段田安則さんをはじめ豪華な顔ぶれとの共演を心待ちしていると語ります。
【後編はこちらから】鈴木保奈美さんインタビュー|好奇心は強いほう。たぶん欲張りなのだと思います
素敵な俳優さんたちに囲まれて、“新人”として立つ舞台
――以前から、舞台に立ちたいという思いをお持ちだったそうですね。
「結構前から出たいとは言っていたのですが、出たいと言ったからといって出られるものでもなく、今回はいろいろなご縁で声をかけていただいて舞台に立たせてもらうことになりました。PARCO劇場で共演が段田安則さんとうかがって、すぐに『やります!』とお返事させていただいたんです」
――25年ぶり、2回目の舞台ということも話題を呼んでいます。
「話題というよりも『25年ぶりで大丈夫なのだろうか』ということなのではないかと思います(笑)。私としては舞台が久しぶりだから緊張するということではなく、ドラマでも映画でも新しい作品に入るときには緊張感があるんですね。そういう意味では、いつもと変わらない心境で向き合うことになると思います」
――お稽古を前に、楽しみにしていることを教えてください。
「尊敬する段田さんをはじめ、これだけの素敵な俳優さんたちが集まっている舞台ですから、ご一緒できることがただ楽しみです。稽古がどのように進むのかもほとんどわかっていないので新人のような感じですし、百戦錬磨の方たちに囲まれて私はひよっこ状態なのではないか、と。でもこんなに贅沢な経験はそんなにできることではないので、間近でお芝居を十分に見させていただこうと思っています」
現代との共通点と違いを、お稽古で探るのが楽しみ
――『セールスマンの死』の戯曲を読まれて、どのような印象を受けましたか?
「いかにも1950年代のアメリカを象徴する話だな、と思いました。実によく時代背景を反映していて、発表された当時はものすごく新しかったのだと思います。描かれているのは、年を取っていくことに対するネガティブな部分や、父と子のコミュニケーション不足と断絶、いろいろなすれ違いや格差の問題。特に私が演じるリンダは専業主婦で夫にひたすら尽くす女性として描かれていて、その時代にはぴったりだったんだろうな、と。
そう思うと同時に、70年経った今でもネガティブな部分が実はあまり変わっていないということが驚きでもあり、がっかりでもあり……。最初の印象は、そういう感じでしたね」
――おっしゃるように、この物語には2022年の日本にも重なるところが多くあるように感じます。
「でもだからといって、70年前のアメリカと今の日本って一緒ですよねと提示するだけでは、あまりにも切なくて夢のないことかなと思うんですね。何が現代と違っていて何が同じなのか、そして我々はこの物語をどう捉えたらいいのか。ショーン・ホームズさんというイギリス人の演出家がどういう視点から切り取って演出をされるのか、とても楽しみです。
今はまだ私にはちょっと予想がつかないので、あれこれ考えるのはやめてまっさらな状態で受け止めようと思っている段階ですが、観てくださる方たちに生きる力になる何かをお渡しできればな、と。演劇って生きるためのものですし、戯曲が発表されたときから人間たちが積み重ねてきた70年分の経験があるわけですから、一歩前に出て新しい見方ができるといいなと思っています」
以上、鈴木保奈美さんのインタビュー前編をお届けしました。舞台『セールスマンの死』の一般チケット発売が開始となる2022年2月11日(金・祝)に、後編を公開予定です。こちらもぜひお楽しみに!
<パルコ・プロデュース2022『セールスマンの死』作品情報>
1950 年代前後のアメリカ、ニューヨーク。かつて敏腕セールスマンだったウィリー・ローマンも63歳となり、精彩を欠いていた。妻のリンダは献身的にウィリーを支えるが、30歳を過ぎても自立できないふたりの息子たちとは、過去のある事件をきっかけに微妙な関係になっている。行き詰まったウィリーは、家族と自分のために、ある決断を下すが…。
トニー賞などを受賞している、アーサー・ミラー作の演劇界の金字塔をイギリス人演出家、ショーン・ホームズの演出で上演。出演に段田安則、鈴木保奈美、福士誠治、林遣都、鶴見辰吾、高橋克実ほか。
【東京公演】PARCO劇場 2022年4月4日(月)〜29日(金・祝)
※このほか松本、京都、豊橋、兵庫、北九州公演あり
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- 小倉雄一郎(小学館)
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- WRITING :
- 細谷美香
- EDIT :
- 谷 花生