雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は「アプローズ」代表理事 光枝茉莉子さんの活動をご紹介します。

光枝 茉莉子さん
「アプローズ」代表理事
(みつえだ まりこ)東京都福祉保健局で、障がい者の工賃アップのプロジェクトに携わる。’14年、「一般社団法人 アプローズ」を開設。’21年、東京都認証ソーシャルファーム事業所「アプローズガーデン」開設。

障がい者が働く花屋さん彼らの社会参加を後押ししたい

’14年にオープンした「アプローズ南青山」は、知的、精神的障がい者が、フラワーアレンジメントのスキルを学び、働く場だ。代表の光枝さんは、東京都福祉保健局(都庁)に8年間勤め、福祉施設で働く障がい者の工賃の低さを目の当たりにした。

「現在でも全国の平均月給が1万6千円ほどですから、経済的な自立はとても困難です。行政でやれることには限りがあると感じ、自分で福祉事業所を立ち上げました」

通常の事業所では箱詰めなどの内職作業が多いなか、「せっかく立ち上げるならまだ誰もしていないことをしたい、働く人もお客さんも、そして私もワクワクできることって何だろう」と考え続け、フラワーショップに思い至った。

事業所をのぞくと、慣れた様子で花材を手に取り、集中してフラワーアレンジメントを制作する利用者の姿があった。工賃アップに少しでも貢献できるよう、ここでは経費を除いた花の売り上げはすべて利用者の工賃となり、年間収支は毎年きれいにゼロになる。

「この場を社会参加のための一歩にしてもらいたい。長くいるよりも、スキルや自信をつけて企業への就職を目指そうと利用者さんにいつも話します。企業で一従業員として働くことが、経済的な自立に最も近い道だからです」

光枝さんの事業は、就労継続支援B型(※)と呼ばれ、重い障がいをもつ人が多くいる。通常一般就労は難しいが、「アプローズ南青山」では毎年大手花屋などへ就職する人を輩出し続けている。そして’21年、シングルマザーや受刑者など就労困難者の雇用の受け皿として、新しい花屋を開業した。

「彼らの社会参加を後押しする場としてこれからも成長し続けたい」(光枝さん)

【SDGsの現場から】

●毎日約18名の利用者が熱心に働く事業所

インタビュー_1
事業所は基礎プログラムを用意。数か月〜半年でフラワーアレンジメント技術を習得する。

●港区や財務省など公的機関からのオーダーも

インタビュー_2
港区内の商店街や美術館前の花の植え替えなどを請け負う。国際会議で飾る花の受注も。

※就労継続支援B型とは…障がい者が一般企業への就職が困難な場合に、彼らに雇用契約を結ばず軽作業などの就労訓練を行う福祉サービス。

PHOTO :
望月みちか
EDIT :
大庭典子、喜多容子(Precious)
取材・文 :
大庭典子