雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は「オルト・デイ・ソーニ」副代表 ティツィアナ・ストラッツィーニさんの活動をご紹介します。

ティツィアナ・ストラッツィーニさん
「オルト・デイ・ソーニ」副代表
アブルッツォ州ペスカーラ出身。医薬学に特化したカンファレンスやイベントなどを企画・プロデュースする会社の代表を経て、念願だったジュエリーデザイナーに転身。日本文化をこよなく愛し、本協会に'12年から参画。

福島の子供たちの転地保養を通じて豊かな自然のなか日伊の国際交流を

ティツィアナさんが副代表を務めるNPO協会「オルト・デイ・ソーニ」。イタリア語で「夢を育む小さな畑」を表し、東日本大震災直後に、イタリア在住の日本人とイタリア人によってミラノで設立された。「被災地の子供のためにイタリアができること」を原点に、毎夏、福島から約20人の子供を無料でイタリアに招いている。

「約1か月の集団転地保養(※)プログラムの目的は、心身の免疫力の向上と健康促進です。イタリアの豊かな自然と食文化のなかでのびのびと過ごすことで、子供たちは抱えていた不安やストレスを解放していきます。

もうひとつの大切なテーマは、国際交流。現地の子供たちとの共同生活で、互いの国がもつ豊かな文化や精神に触れ、異なる価値観を感じられることは、貴重な経験になります。

私自身も子供たち同様、オープンマインド、共感、感謝の気持ちなど、気づくことがたくさん。彼らが、日に日に目を輝かせ、たくましくなっていく姿に毎年感動してきました」

活動資金は、ボランティアスタッフによる年間を通じての募金活動と、個人や企業からの寄付だ。

「活動を始めてから11年。今でこそ支援者も参加者も増えましたが、設立当初は大変でした。まず、『日本は裕福な国なのに、なぜ手助けが必要なの?』と考えるイタリア人に、日本の状況を理解してもらう苦労がありました。そして、子供を海外へ送り出す保護者の心配も。

なので福島現地のパートナーに協力を仰ぎ、保養説明会はもちろん、私たち自身が被災地の現状を深く理解するための勉強会も重ねてきました」

この小さな一歩が健全な子供たちの未来につながる。ティツィアナさんは、そう信じている。

【SDGsの現場から】

●’16〜’18年にはドキュメンタリー映画の上映会も

インタビュー_1
福島で暮らす母親の声を集めた、鎌沖ひとみ監督『小さな声のカノンー選択する人々』を各地で上映。

●イタリアの豊かな自然のなかで過ごす1か月

インタビュー_2
8〜12歳を対象に、過去5年間はサルデーニャ島、3年間はリグーリア州の海辺の街で保養を。

※転地保養とは…福島原発事故による放射線汚染の不安にさらされる子供たちを対象に、一定期間、健全な環境下で健康回復を図る活動。

PHOTO :
Francesco Dolfo
WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT :
大庭典子、喜多容子(Precious)
取材 :
Yuki Katagiri