創刊18周年を迎え幸せに思うことは、これまでPreciousで紹介してきた数あま多たの逸品が、今も女性たちの愛用品として現役で活躍していることです。名作バッグに刻まれた傷も、飴色に変化した革靴も、古びて見えるどころかむしろそれぞれの個性が際立ち、輝きが増してラグジュアリー!

使って、使って、使い倒してはじめてわかるものの価値…。愛用品が紡ぐ物語はこれからも、私たち女性ひとりひとりの心を豊かにする、揺るぎない存在であり続けてくれると信じています。

スタイルある女性たちが行き着いた自分らしさ、「愛用品」との付き合い方。生き方が凛と美しい人々は、どんなものを、どのように慈しんできたのでしょうか。手に入れた経緯から、愛用品への育み方まで、4人の女性が、自らの人生論と共に語り下ろします。

今回はキャスターであり、ジャーナリストである安藤優子さんにインタビュー。愛用品は、エルメスのバッグ『バーキン』です。

「エルメス」のバッグ|安藤優子さん(キャスター、ジャーナリスト)

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ジャケット¥526,900/参考価格・パンツ¥128,700/参考価格・Tシャツ¥64,900・スニーカー¥121,000(ブルネロ クチネリ ジャパン)、その他/私物
安藤 優子さん
キャスター、ジャーナリスト
(あんどう ゆうこ)1958年千葉県生まれ。上智大学国際教養学部在学中からリポーターとして報道番組に携わる。その後フリーキャスターとして活躍。主な番組に『ニュースステーション』(テレビ朝日系)、『スーパータイム』『スーパーニュース』(フジテレビ系)ほか。1986年フィリピン政変のリポートでギャラクシー賞個人奨励賞を受賞。

「タフ、そしてラグジュアリー。共に世界を飛び回った“相棒”です」

「私にとってエルメスの『バーキン』は、実用品の最たるもの。このキャメルベージュの大きめタイプは、30年ほど前にパリで出合って以来、ずっと現役で活躍しています。ニュース番組を担当していた頃は、どこに行くにも一緒でした。

なぜってA4サイズの書類、分厚い本や資料、メイクポーチにストールまで、大容量でなんでも入るから。現場取材があって、生放送の収録があって、何かあればそのまますぐ海外に飛んで。そんなライフスタイルに見事マッチし、日々を支えてくれる“お仕事バッグ”だったのです」

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ジャケットに『バーキン』、そしてスニーカー! エルメスを長年愛用してきたからこそ、この軽快なスタイルが様になる

世界中の都市で開かれる首脳会談はもちろん、湾岸戦争を追ってクウェートへ、アパルトヘイト撤廃を見届けるべく南アフリカへ…。このバッグはいついかなるときも安藤さんのそばにいて、ジャーナリストとしての成長を見つめてきた。ただ、数多あるバッグのなかで、なぜエルメスの『バーキン』だったのだろうか。

「その理由はただひとつ、タフだからです。どこにでもドンと置いてしまうし、機内に持ち込んで座席の下にギュッと押し込むことも日常茶飯事(笑)。ほら、こんなふうにペンの跡が残っているけれど、見事なまでの風格を保っているのは、このバッグがタフだから。すぐに傷むようなものだったら、ここまで持ち続けていられなかった。

『バーキン』は気負ったり気どったりして持つものではないと思う。もちろん高価ではあるけれど、持ち主を支え、守ってくれる堅牢さがある。私はそこを信頼し、愛しているのです」

さらにもうひとつ、『バーキン』を愛用し続ける理由がある。それが“格式”。

「海外の一流ホテルのスタッフは、ゲストの荷物をよく見ています。そのときこのバッグがそばにあるだけで、どれだけ安心できることか。またサミットに随行取材すると、突然大統領の単独インタビューが許されることがあります。ビル・クリントン、ジョージ・ブッシュほか、各国のトップに話を聞いてきましたが、『バーキン』を携えると背筋が伸び、さらに相手からも一目おいてもらえる。

質実剛健であり、品性がある。この両方を併せもつ愛しいバッグを、私は一生手放すことはないでしょう」

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安藤さんは3つの『バーキン』を所有。ひとつ目は約30年前にパリで巡り合い、迷いなく手に入れたキャメルベージュ。ふたつ目はネイビー。約25年前、首脳サミットで訪れたロンドンにて購入。そして3つ目がオレンジ。「20年ほど前、パリにてレザーを指定してオーダーした思い出の品です」

時代が激変している今、ものや欲望について考えていることを率直に語ってもらった。

「私がエルメスの『バーキン』からもたらされたもの。それは仕事を続ける勇気、そして励ましです。日々表舞台に立てば批判を受けることもあるけれど、まず自分で自分を認めてあげる。そのご褒美として手に入れ、文字どおり一緒に働いてきました。

聖書には『物欲は魂の栄養』という言葉があるそうです。もうよけいなものはいらないけれど、人生を豊かにするものに対してケチにはなりたくない。何かに胸ときめかせ、手に入れたいと願うのはごく普通のこと。何も恥じる必要はないし、素敵な感性だと思うのです。欲しいものに対して正直でいる。そのことにはずっとずっと、貪欲でいたいと思っています」

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

PHOTO :
久富裕史(N°2)
STYLIST :
戸野塚かおる
HAIR MAKE :
hiro TSUKUI(Perle/ヘア)、三澤公幸(Perle/メイク)
WRITING :
本庄真穂
EDIT&WRITING :
兼信実加子、喜多容子(Precious)