さまざまな出来事があった2017年が終わりを迎え、2018年がスタートします。年始には親族の集まりや新年会が催され、親戚や上司などに向けて、改まった挨拶をする機会があるもの。

そのような場で気をつけたいことのひとつは「言葉遣い」ではないでしょうか。正しい言葉遣いができていれば気になりませんが、「あれ?」と思うような間違った言葉遣いだと、マイナスな印象を持たれてしまうことも…。一年の始まりである新年の挨拶。する側もされる側も、気持ちのよく行いたいですよね。

そこで本稿では『日本橋高島屋名コンシェルジュに学ぶ 人の心を動かす「気遣い力」』の著者・敷田正法さんにインタビューを敢行。「名コンシェルジュが教える、使わない方がいい耳障りな言葉」をテーマにお話を伺いました。

■1:「とんでもございません」

謙遜のつもりで言った一言。実は間違った使い方だった、という失敗は避けたいところですね。とはいえ日本語、特に敬語はやはり難しい。そう感じる人が多いのではないでしょうか。

まずはじめに気をつけたいのが、「とんでもございません」というフレーズです。一見、普段から使っているようで、特に問題なさそうですが…。

「ある講演会の際、講師のNHKのアナウンサーの方から『とんでもございません』という表現は間違った日本語である、と聞きました。正しくは『とんでもないことでございます』となります」(敷田さん)

講師の方に正しい表現を教わった敷田さんは、早速自分で辞書を開き調べたそうです。「いつも電子辞書を持ち歩き、わからない言葉や表現があれば引くようにしています。また、家のリビングのテーブルには国語辞書と英和辞書を置いておき、テレビで出たわからない言葉を調べるようにしているんです」とのこと。敷田さんのような正しい日本語を学ぼうとする姿勢が、美しい言葉遣いに繋がるのかもしれませんね。

誤:とんでもございません
正:とんでもないことでございます

■2:「〇〇は本日、休みをいただいております」

休みをいただいております
休みをいただいております

会社にかかってきた電話に答える際、つい言ってしまいますが、これも耳障りなフレーズ。どう伝えればよいのでしょうか。

「いかにも丁寧そうな表現ですが、社員に休みを与えているのは誰でしょう。お客様ではなく、会社です。お客様との会話のなかで、休みを与えている自社にへりくだることになってしまいますので『〇〇は本日、休みを取っております』で大丈夫です」(敷田さん)

言われてみれば、確かにその通り。しかし、敬語を使おうとするあまり、あやふやになってしまい、「丁寧そう」な表現は使ってしまいがちです。丁寧な言葉遣いをする際には、正しい表現か一考する必要があります。また、間違った言葉遣いをしてしまっても、ひとつひとつ調べるクセをつけ、同じ間違いをしないようにしたいものですね。

誤:〇〇は本日、休みをいただいております
正:〇〇は本日、休みを取っております

■3:「ご苦労様です」

表現は正しいけれども、使う場面によって誤りになってしまうことも。「ご苦労様です」はそのひとつ。上司や目上の人に使ってしまうと、かえって失礼になってしまいます。

「上司や目上の人には『ご苦労です』ではなく、『お疲れ様です』。これが正しい挨拶となります」(敷田さん)

どんなに気ごころが知れた上司であっても耳障りではない、美しい日本語を使いたいものです。ほかにも、表現自体は間違っていないけれども、目上の人に使ってはいけないフレーズがあるそう。

「『了解しました』も目上の人に使うと失礼になってしまいます。『かしこまりました』『承知いたしました』が正しい表現です」(敷田さん)

誤:ご苦労様です
正:お疲れ様です

■4:「私のお母さんは~」

お母さん
お母さん

身内の話をする際にも注意が必要です。普段は「お父さん」「お母さん」と呼んでいても、外では「父」「母」と呼ぶのが正しい日本語。特に、年末年始のちょっと遠い身内への挨拶で気をつけたいポイントですね。

また、会社の人間関係も身内となります。社外の方へ「わが社の〇〇社長は」という言い方はせず「わが社の〇〇は」と家族同様、敬称は省略するのを忘れずに。

誤:私のお母さんは〜
正:私の母は〜

■5:ら抜き言葉・い抜き言葉・二重敬語

友人同士でメッセージ交換など、お互いに気にしないという間柄であれば問題ありませんが、目上の人に対しての“ら抜き言葉”、“い抜き言葉”、“二重敬語”は気をつけたいところです。

例えば、ら抜き言葉であれば『食べれない』ではなく、『食べられない』。い抜き言葉なら『わかってる』ではなく、『わかっている』。二重敬語は『おっしゃられた』ではなく、『おっしゃる』が正しい日本語となります。

「また、最近多いなと感じるのは『お話は伺っておりますが』と『~が』で会話が終わってしまう人。相手は『話の続きがあるぞ』と身構えてしまいますので、耳障りに感じてしまう人が多いでしょう」(敷田さん)

誤:食べれない、わかってる、おっしゃられた
正:食べられない、わかっている、おっしゃる

 

「会社の代表として接しているわけですから、常に丁寧な言葉遣いを心がけています」という敷田さん。お客様が気持ちよく買い物できるように、相手を想っての言葉であるように感じます。もちろん、お客様相手でなくとも、相手を敬う、大切に想う気持ちがあれば、『耳障りな言葉を使わない』ことが会話の基本です。

言葉遣いは褒められることはあっても、家族や上司ではない限り、なかなか指摘されることはありません。敷田さんのように常日頃から言葉遣いにアンテナを張り、正しい日本語が使えるようになりたいものです。

敷田 正法さん
日本橋高島屋コンシェルジュ
(しきた まさのり)1947年福岡県生まれ。1970年早稲田大学法学部卒業後、高島屋に入社。外商部を経て、1972~79年ニューヨーク高島屋に出向。時計、貴金属を担当。帰国後は日本橋店、横浜店にて、特選衣料雑貨・洋食器、紳士服、紳士婦人雑貨、食料品を担当。2000年日本橋店にコンシェルジュを導入し、2007年に定年を迎えたのちも嘱託として勤務。百貨店のコンシェルジュの草分け的存在として注目され、テレビでたびたびその仕事ぶりが紹介される。
『日本橋高島屋名コンシェルジュに学ぶ人の心を動かす「気遣い力」』敷田正法・著 小学館刊

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この記事の執筆者
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WRITING :
冴島友貴