人の印象は第一印象で決まってしまうもの。よそ行きの服の糸がほつれている、髪の毛がボサボサしている、といった見た目では台なしです。そして、見た目と同じくらい相手の印象を決定づけてしまうのが、“挨拶”ではないでしょうか。挨拶をしないのはもちろん、挨拶をしても心がこもっていない様子が伝わってしまえば、逆効果になってしまいます。

しかし、大人になると、正しい挨拶の仕方を学ぶ機会はなかなかありません。そこで、挨拶回りが多くなる年始に備えて、『日本橋高島屋名コンシェルジュに学ぶ 人の心を動かす「気遣い力」』の著者・敷田正法さんに「知的に見える挨拶」を伝授していただきました。

毎日、多くのお客様と接してきた名コンシェルジュの挨拶とは、一体どのようなものなのでしょう?

■1:相手の目を見る

相手の目を見る

挨拶は最初のコミュニケーション。相手に好印象を残すために疎かにすることはできません。お客様をお出迎えするコンシェルジュは、どのようなことを意識して挨拶しているのでしょうか。

「まず、お客様の目を見ます。それから『いらっしゃいませ』とはっきり申し上げてから、頭を下げて、ゆっくり上げる。これが基本です」(敷田さん)

このとき、注意しなければならないのが、言葉を発しながら頭を下げないこと。言葉を届けたいのは地面ではなく、挨拶をする相手です。頭を下に向けながら言葉を発すれば、声は地面に届いてしまいます。

急いでいると、ついついお辞儀と一緒に挨拶してしまいがち。気をつけたいポイントです。

■2:「マニュアルの挨拶」は心を込めて

接客を主体とするサービス業には、「挨拶のマニュアル」が存在します。始業前に挨拶の練習をするお店もあり、場面場面に応じた挨拶ができる店員さんが多いようです。そんな「マニュアルで決められた挨拶」を使ううえで、気をつけなければならないことは何でしょうか。

「マニュアルは便利ですが、相手に合った使い方をしなければいけません。私がパン屋で朝食を摂っていたとき、店員さんに『すみませんが、爪楊枝はありますか?』と尋ねると、『あいにく、手前どもには爪楊枝を置いてございません』というお返事が。

素敵な言葉遣いをする方だな…と感心したのですが、なんとなく気にかかった。なんでだろうと考えてみたところ、『あいにく』という言葉に、感情がこもっていないことに気がつきました。どんなに丁寧な言葉遣いであっても、心がこもっていないと、わかってしまうものです」(敷田さん)

マニュアルではお辞儀の角度も15度、30度、45度と決まっているところもあるそうです。

お辞儀の角度

しかし敷田さん曰く、心がこもっていれば、角度は何度であろうと大丈夫、とのこと。形だけでなく、挨拶を向ける相手を想うことが大切ということですね。

■3:大袈裟な挨拶はNG

逆に相手を不快な気持ちにさせてしまう、やってはいけない挨拶もあるそう。どのような挨拶なのでしょうか。

「わざとらしく深々とお辞儀をする方は、あまり下げ過ぎてしまうと、相手に大変失礼な印象を与えてしまいます。そして、ただ大きな声を出している挨拶も“知的”とは言えません。このような常識を欠いた挨拶は避けましょう」

「深々と頭を下げればいい」「大きな声を出せばいい」。そう考えて心を込めず、形式的に挨拶をしてしまうと、よかれと思っていても、かえってマイナス印象になってしまいます。T.P.O.をわきまえた挨拶を心がけましょう。

「こんな話があります。ある会社では、お客様が来られた際、社員全員が起立して挨拶をするよう指導していました。しかしあるとき、お客様から『大袈裟だよ。全員で挨拶しなくていいよ』という指摘があり、その後、社員全員で立って挨拶をすることはなくなったそうです。つまり、大切なのはお客様に喜んでもらうということ。この場合、よかれと思ってしていた行動が、お客様に喜んでもらえなかったということです」(敷田さん)

自己満足で挨拶するのではなく、挨拶を受け取った相手がどう感じるか?を考えなければいけない、ということですね。

■4:年末年始は「相手の忙しさ」を探る

多忙かどうか

年末年始を迎えるにあたって、やはり気になるのは年始の挨拶。親戚や仕事関係の挨拶回りでの注意点はあるのでしょうか。

「相手が忙しい人か鑑みて、話をする時間を変えなければいけません。次から次に来客がある方の場合は、早々にお暇(おいとま)させてもらう。逆に時間がある方には、ゆっくり話す。相手が喜んでもらえる挨拶をしないと、感謝を伝える訪問であっても逆効果になってしまいます」とのこと。しっかり相手を見て、判断しなければいけないようです。

ほかにも、好印象が与えられるポイントはあるのでしょうか?

「やはり、目を見ることは大事です。例えば、相手がお詫びで来たとしても、目を見ればどのような要件で来たのかわかります。『目は口ほどに物を言う』と言いますから。ごちゃごちゃといろいろ取り繕って話すよりも、しっかり目を見て、短い言葉できちんと伝えれば大丈夫。目はそれほど強い力を持っているんです」

ウソをつく、何かやましいことがある、という時は思わず目をそらしてしまうもの。そういう挨拶はなかなか信用されることがないので、こちらも注意が必要です。

「目を見る」「心を込めて短く話す」「相手を見て、帰る時間を決める」など、年末年始の挨拶以外にも、仕事先との挨拶などにも使えそうなお話ばかりでした。目を見ることを習慣にすれば、相手の本音がわかるようになるかもしれません。

敷田 正法さん
日本橋高島屋コンシェルジュ
(しきた まさのり)1947年福岡県生まれ。1970年早稲田大学法学部卒業後、高島屋に入社。外商部を経て、1972~79年ニューヨーク高島屋に出向。時計、貴金属を担当。帰国後は日本橋店、横浜店にて、特選衣料雑貨・洋食器、紳士服、紳士婦人雑貨、食料品を担当。2000年日本橋店にコンシェルジュを導入し、2007年に定年を迎えたのちも嘱託として勤務。百貨店のコンシェルジュの草分け的存在として注目され、テレビでたびたびその仕事ぶりが紹介される。
『日本橋高島屋名コンシェルジュに学ぶ人の心を動かす「気遣い力」』敷田正法・著 小学館刊

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この記事の執筆者
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WRITING :
冴島友貴