みなさんはゴルフやホームパーティーなど、人がたくさん集まる催しに参加しますか? 初めて出会う人の話を聞くのは勉強になり、とても刺激的。また、これまであまり話したことがない人と距離を縮めることができる、絶好のチャンスでもあります。

しかし、多くの人が参加するイベントには、周りの空気を読まずに行動してしまう、ちょっと困った人がいることも。気づいてみれば、その人に振り回されてしまい、場を楽しむことができなかった……というのは、もったいないですよね。

そこで、今回は『日本橋高島屋名コンシェルジュに学ぶ 人の心を動かす「気遣い力」』の著者・敷田正法さんに「上手な人付き合いのための心得」を伺ってきました。たくさんのお客様をもてなしてきた敷田さんの人付き合いの極意とは、どのようなものなのでしょうか。

■1:クセが強い人の対処法は「見ない」「言わない」「許す」

見ない・言わない・許す
見ない・言わない・許す

ゴルフコンペやホームパーティーといった、人が多く集まるイベントには、ちょっとクセが強い方が参加する可能性も高まります。このような方との接し方には、気をつけなければいけません。その際、何かポイントはあるのでしょうか?

「まず、人の欠点は“見ない”“言わない”“許す”ことが肝心です。欠点を見てしまうと、自然とそこに目が行くようになってしまいます」と敷田さん。確かに、せっかく楽しもうと参加しても、人の欠点が気になり、イライラしてしまっては有意義な時間が台なしです。

「そして、もし欠点を見つけてしまっても、それを指摘してはいけません。場の空気が悪くなってしまいます。最後に、自分が相手を許せることができれば、場を乱すことなく、楽しく有意義な時間が過ごせます」(敷田さん)

しかし、気をつけていても、困った人はお構いなし。こちらが気をつけても、場の雰囲気を壊してしまう場合は、どうすれば……。

「例えば、ゴルフだとパターを打つ前が長い、打った後にダラダラと歩く、などほかのメンバーの迷惑になってしまうことをする人がいます。このような人は、たいてい自分が迷惑をかけていることに気づいていません。しかし、直接『ダメだよ』と注意すると傷ついてしまいますし、場の空気も悪くなってしまいます。だから、私は『前、空きましたから急ぎましょうか』と言って、なんとなく促す声かけをします」(敷田さん)

みんなが最後まで楽しめる空間づくりをするのが、名コンシェルジュ流。周囲に迷惑をかけてしまう人とは関わらないように…と蓋をするのではなく、積極的に声かけしてみましょう。

■2:注意喚起するのではなく「肯定的な声かけ」を行うとうまくいく

肯定的な声かけを
肯定的な声かけを

ついついやってしまうのが、「遅いですよ」「早くしてください」という注意喚起の声かけ。どんなに正しいことであっても、否定的な声かけでは相手の機嫌を損ねるだけで、改善に至らない場合もあります。否定的でなく、肯定的な声かけをするのが敷田流です。

「最近のトイレの注意書きもそうじゃないですか? 一昔前は『キレイに使ってください』と少し命令調だったものが、近ごろは『いつもキレイに使っていただき、ありがとうございます』といった種類のものが増えました。こちらのほうが悪い気はしないですし、『キレイに使おうかな』という気持ちになりますよ」

子どもに「〇〇しなさい」と言っても、なかなか言うことは聞きません。かえってやる気を失くしてしまうこともあります。大人も同じで相手を否定するのではなく、肯定して行動を促してあげるのがベストです。

ただ、肯定的な声かけであっても、一人だけに伝えてしまうと気分はよくないもの。人によっては気にしてしまい、その後ずっと、憂鬱そうに過ごしてしまう、なんてこともあるでしょう。

「集団に声かけしてあげるのも、コツのひとつです。『みなさん、次はみんなで〇〇しましょう』と言えば、意外とすんなり意見を聞いてくれるものです」とのこと。

相手に知らしめてやる、懲らしめてやる、というスタンスは、角が立ってしまいます。せっかくみんなが楽しめる場をつくったのに、雰囲気が壊れてしまうのはもったいない。声かけは“ふんわりと”がポイントのようです。

■3:「望みはできるだけ長く、あきらめはできるだけ早く」と考える

望みはできるだけ長く
望みはできるだけ長く

周りの空気を悪くしてしまうクセのある人ですが、自分がそのように空気を悪くしてしまう可能性もあります。自分自身が周囲に迷惑をかけないようにするためには、どのようなことを心がければよいのでしょうか。

「私も怒ることもあれば、イライラすることもありますから、気持ちはわかります。そんな時は『望みはできるだけ長く、あきらめはできるだけ早く』と考えましょう。良いも悪いも全部自己責任。自分で気持ちをコントロールしようと努めてください。

コツとしては『楽しくやろう』『今日は楽しむんだ』と自分に暗示をかけることです。楽しいと思っていれば、自然と楽しくなりますし、周りに楽しい雰囲気が伝染します。逆に自分がクヨクヨしていたり、イライラしたりすれば、周りもそうなってしまうものです」(敷田さん)

そして、「全体の迷惑になってしまうのであれば、何度もあきらめずに言います」と敷田さん。

「あくまで、ふんわりと。その人に何か気づきがあれば、変わってくれるはずです。それが、何回も続いてしまうと、その人ともう一度行きたい、とは思わなくなってしまいます。また、その会に参加している方が、お互いに楽しくやろうと思って、スタートから終わりまで楽しめるようにすること。これが参加した人の“仕事”ではないでしょうか」

たくさんの人が集まる遊びの場。最中の雑談や世間話にこそ、キラリと光る情報や仕事のヒントがあるものです。イライラしていては、そういう情報やヒントを見逃してしまいがち。せっかくの機会だから楽しみつつ、有益な情報にも耳を傾けたいものです。振り返るべきは、自分が一人よがりな楽しみ方になっていないかどうか? 自分だけでなく、その場にいる方々も一緒に楽しめるよう努めたいですね。

敷田 正法さん
日本橋高島屋コンシェルジュ
(しきた まさのり)1947年福岡県生まれ。1970年早稲田大学法学部卒業後、高島屋に入社。外商部を経て、1972~79年ニューヨーク高島屋に出向。時計、貴金属を担当。帰国後は日本橋店、横浜店にて、特選衣料雑貨・洋食器、紳士服、紳士婦人雑貨、食料品を担当。2000年日本橋店にコンシェルジュを導入し、2007年に定年を迎えたのちも嘱託として勤務。百貨店のコンシェルジュの草分け的存在として注目され、テレビでたびたびその仕事ぶりが紹介される。
『日本橋高島屋名コンシェルジュに学ぶ人の心を動かす「気遣い力」』敷田正法・著 小学館刊

人付き合いの極意シリーズ

この記事の執筆者
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WRITING :
冴島友貴