丁寧な言葉遣い、人付き合いも上手で、挨拶も知的でしっかりしている。そのように思われていても、普段の一挙一動が洗練されていなければ、“ワンランクアップ”は難しいはず。

そこで『日本橋高島屋名コンシェルジュに学ぶ 人の心を動かす「気遣い力」』の著者・敷田正法さんに、「上品だと思われる人の仕草」についてお話を伺いました。上品な仕草とそうではない仕草の違いは、どこで生じるものなのでしょうか?

■1:普段から「社会性が備わった行動」をしているかどうか

社会性が備わった行動

上品な仕草は一日にして成らず。やってみようと思っても、なかなかできないものです。一流コンシェルジュの視点から、心がけるべき点はどのようなことなのでしょうか?

「具体的にいくつか挙げさせていただくと、『身だしなみに気をつけているか』『挨拶がきちんとできているか』『周囲の人に対する親切心があるか』『ご飯を食べるときに音を立てず、キレイに食べることができているか』『公共の場で大きな声で喋ったり、笑ったりしていないか』『上から目線で話をしないか』などです。普段の行動に社会性が備わっているかどうか?が、上品か、そうでないかを分けると思います」(敷田さん)

例えば、みんながワイワイ喋っているような場所であれば、ある程度大きな声で話しても大丈夫。しかし、落ち着きのあるフレンチレストランで、カチャカチャ音を立てて食事をしている、ゲラゲラと笑いながら大きな声で会話をする姿などは、品があるとは言えませんよね。友達同士で遊びに行くと楽しくなってしまい、つい周囲に気が向かなくなってしまうこともあるかもしれませんが、気をつけなければいけません。

■2:国・宗教・時代などを考慮して行動しているかどうか

ただ、社会性については、場所・国・宗教・時代、そして人種によって異なることも頭に入れなければいけないそう。

「例えば、私が外国の方をお蕎麦屋さんに連れて行ったときのことです。彼らはパスタなどの麺類を”すする”文化がないため、私は気を遣って、音をたてずに蕎麦を食べていました。すると『お前は日本人じゃない』という指摘が(笑)」と敷田さん。

郷に入っては郷に従え、彼らは日本人に、蕎麦を”すすって”食べることを期待していたようです。その期待に応えることも、上品な人への道かもしれません。

「逆に私がしばらく海外で生活したあと、日本に帰ってから蕎麦を食べに行くと、ズズズっと蕎麦をすする音が違和感として耳に残りました」とのこと。つまり、場所や時によって、社会性の基準は変わるということ。その場で悪目立ちしてしまう、というのは上品とは言えません。一緒にいる人たちと楽しい時間・空間を過ごすことができる人からは、知性や上品さが感じられますよね。

■3:大人も子どもも「正しい教育」を教えている・学んでいるかどうか

正しい教育を教える・学ぶ

同じ空間・時間を見ず知らずの人とも楽しむ。大人になってからも、しっかり考え、実践しなければならないことですね。もちろん、小さい頃から教育として教えるのが一番かもしれません。

「外国で、こんなことがありました。レストランで食事中に3、4歳くらいの子どもを連れた日本人のお母さんがいらして、子どもが急に騒ぎ出してしまったんです。そのとき、お母さんが『日本人なのだから、そんな風に騒いじゃダメでしょ』とたしなめていました。

これは違います。日本人だから騒いではいけない、ではなく、その周りの人が静かに食事をしている、鑑賞している、休んでいる場所であるなら、それに従うべき。『周りの迷惑になってしまうからダメよ』とか、『今、こんなに大きな声で話す必要ある?』と注意できる方は、上品です」(敷田さん)

そのように正しく注意できれば、親の品のよさが子どもにしっかり伝わることでしょう。

■4:エレベーターでは「我々が出ますから」と声をかけているかどうか

海外生活の経験が豊富な敷田さん。とりわけ日本人には見られない、エレベーターに乗った際のスマートな対応が印象に残っているそう。

「人がたくさん乗ったエレベーターで、同じ階に何人も降りると、日本人であればひとりずつ『すみません』『ありがとうございます』と一言かけて降ります。しかし、海外では一番初めに降りる人が『Excuse us please』と声をかけるんです。日本語で言うなら『我々が出ますから』となるでしょうか。すると、最初の人以外はみんな黙って、最初の人に続いてすっと出ていきます。スマートで上品です」(敷田さん)

確かにスマートでカッコイイ、学校では教えてもらえない表現ですね。

■5:人の顏と名前を覚えられるかどうか

お客様の顏と名前を可能な限り覚えて「〇〇様」と声かけするという敷田さん。そんなことができるということは、もともと名前を覚えるのが得意だったのでしょうか?

「実は名前を覚えるのは苦手なんです」と敷田さんが笑います。「だから、いつも持ち歩いている手帳に書き込んで覚えています。後は名刺を頂戴した際は『〇〇様ですね』と必ず名前を呼んで、名刺をいただく。さらに、時間があれば『〇〇様の漢字は〇〇という字を書くのですね』と名前についてお話して覚えています」

名前をきちんと呼んでもらえると、やはりうれしいものです。さらに、余裕があれば、名前以外にも誕生日や好きなことなど、相手についての情報を覚えておくと、さらに効果的。敷田さんは記憶するために手帳をよく使うそうですが、携帯電話の電話帳機能を上手に使ってみてもいいかもしれません。

以上、敷田さんのお話を総合すると、「周囲の人を楽しませる」「相手を喜ばせる」気持ちが、品のよさを醸し出す秘訣であるようです。自分だけが楽しいだけではいけない。周囲に常に気配りできるようになりたいですね。より素敵な女性を目指すなら、敷田さんの考え方をぜひ、参考にしてみてください。

敷田 正法さん
日本橋高島屋コンシェルジュ
(しきた まさのり)1947年福岡県生まれ。1970年早稲田大学法学部卒業後、高島屋に入社。外商部を経て、1972~79年ニューヨーク高島屋に出向。時計、貴金属を担当。帰国後は日本橋店、横浜店にて、特選衣料雑貨・洋食器、紳士服、紳士婦人雑貨、食料品を担当。2000年日本橋店にコンシェルジュを導入し、2007年に定年を迎えたのちも嘱託として勤務。百貨店のコンシェルジュの草分け的存在として注目され、テレビでたびたびその仕事ぶりが紹介される。
『日本橋高島屋名コンシェルジュに学ぶ人の心を動かす「気遣い力」』敷田正法・著 小学館刊

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この記事の執筆者
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WRITING :
冴島友貴