ビジネスシーンにおいて、「ご尽力」は目上の方への感謝の意を伝える際によく用いられる言葉です。ただし、間違った使い方をすると、相手に不快感を与えたり、周囲から失笑を買ってしまうことも。ポイントは、「尽力」が「力を精一杯、尽くすこと」を示す言葉であること。この点をしっかり踏まえ、正しい使い方を身につけましょう。
【目次】
まずは基礎知識から…ご尽力の「読み方」と「意味」は?
■「ご尽力」の「読み方」とその意味は?
「ご尽力」は「ごじんりょく」と読みます。
「精一杯力を尽くすこと」「骨を折ること」「ほねおり」「努力」を意味する「尽力」に、尊敬を示す美化語の「ご」をつけ、丁寧に表現した言葉です。似たような意味合いに「努力」がありますが、こちらは自分のためにする行為。「尽力」は他人のためにすることなので、少々違った意味合いとなります。
■「尽力」を敬語表現にするには?
「尽力」という言葉自体は敬語ではありませんが、「ご」を頭につけることで、目上の方への敬意を表し、力を尽くしてくださったことに感謝を表す敬語として使用できます。
■「ご尽力」は取引先の相手や上司にも使える?
使用可能です。自分と立場が同じ人や後輩に対しては、「ご」を外し「尽力してもらい感謝しています」などと アレンジして使用しましょう。
謝意が適切に伝わる言い回しを「例文」でチェック!
■1:「ご尽力のおかげをもちまして、イベントを成功に導くことができました」
■2:「皆さまのご尽力に感謝いたします」
■3:「この成果はご尽力の賜物でございます」
■4:「並々ならぬご尽力をありがとうございました」
■5:「ご尽力くださいましたのに申し訳ございません」
「ご尽力」は、目上の相手に対し、感謝の気持ちを表現する際に使われることが多い言葉です。「ご尽力いただき」「ご尽力賜り」など、頻度の高い言い回しを覚えておくと便利です。
間違いやすい「ご尽力」使用上の注意点は?
■相手にお願いするときにはNG
ここまで説明してきたように、「尽力」には「精一杯、力を尽くすこと」の意味があります。「ご尽力賜りますようお願い申し上げます」という文章は、一見、問題がないように見えますが、本来の意味を考えれば、「私のために精一杯、力を尽くしてください」ということになります。目上の方へのお願いごととしては、厚かましいとも言え、適切ではありません。
依頼の意味を込める文章としては、「お力添えをお願いします」など、少し控えめな表現に留めましょう。
■自分があげた成果についてはNG
改まった場面で決意表明をする際には、「精一杯、頑張ります」という意味合いで、「尽力いたします」「尽力して参ります」という表現を使用します。ただし、自分がすでに行った行為に対して「尽力いたしました」という表現は不適切です。成果を誇示する、あるいは押しつけがましい印象を周囲に与え、失笑を買うことになりかねません。
■「尽力を尽くす」は重複表現でNG
これもよくある間違いですが、「尽力」自体に「力を尽くす」という意味が含まれているため、「尽力を尽くす」は重複表現となってしまいます。重複表現とは、「頭痛が痛い」「必ず必要」といったように、同じ意味の語を重ねて使うことです。せっかく決意表明を行ったつもりでも、「尽力を尽くします!」では、「任せて大丈夫かな…」と、周囲は不安を感じてしまいます。充分に注意しましょう。
「ご尽力」と近い意味をもつ「類似表現」3選
■1:「ご支援のほど、どうぞよろしくお願いいたします」
■2:「ご協力賜りますようお願い申し上げます」
■3:「お力添えに感謝いたします」
「ご尽力」と似たような意味を持つ言葉に「ご支援」「ご協力」「お力添え」などがありますが、先に書いたように、「尽力」には「精一杯力を尽くすこと」の意味があります。そのため、「支援」や「協力」「力添え」よりも、「より労力の程度が大きい」ニュアンスを込めやすい表現となります。シーンによっては、「ご協力」「お力添え」という言葉では、少し軽い印象を与えかねないので、注意が必要です。
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いかがでしたか?「ご尽力」は目上の方が、力を尽くしてくださったことへの感謝を伝える際に使われる言葉です。裏を返せば、「ちょっとした心遣い」に対するお礼としては、少々オーバーな表現になってしまいます。
状況を客観的に判断し、適切な言葉を選びたいものです。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『精選版 日本国語大辞典』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂) /『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版) :