今回取り上げる言葉は、「お越しください」。ビジネスでも日常の場面でも、目上の方に対して、よく使われる言葉です。「二重敬語では?」と心配する声も聞かれますが、大丈夫。正しい敬語表現ですので、その使い方を詳しく知って、上手に活用なさってくださいね。
【目次】
「お越しください」は正しい敬語? どんな意味?
■「お越しください」の「意味」をその成り立ちから知ろう
「お越しになる」は「来る」の尊敬語です。「お越し下さい」は、「来る」の尊敬語である「お越しになる」+丁寧語の「下さい」から成り立つ依頼の言葉です。
■「敬語」として正しいの? 二重敬語では?
二重敬語とは、1つの言葉に対し同じ種類の敬語を重ねて用いる言い回しのこと。「お越しください」はふたつの言葉から成り立つ、正しい敬語表現です。これを「お越しになられてください」とすると二重敬語となり、適切な日本語ではなくなります。
使用頻度が高い「例文」で正しい使い方をマスター!
「お越しください」は、ビジネスの場面では打ち合わせや面接、説明会などへの呼びかけとして、具体的な日時と併せて使われることが多い言葉です。メールの最後に「お気をつけてお越しください」と添え、〆の言葉とするケースも多いですね。
日常生活でも、相手に自分のもとへ来てほしい旨を伝えたり、待ち合わせの約束をするときに使われます。
末尾に「ませ」を添え、■1のように「お越しくださいませ」とすると、やわらかな印象を相手に与えることができますし、■2のように「お越しくださいますようお願い申し上げます」とすれば、非常に丁寧に相手に依頼する気持ちを表現できます。
■1:「足元にお気をつけてお越しくださいませ」
■2:「ぜひお越しくださいますようお願い申し上げます」
■3:「お越しくださいまして誠にありがとうございます」
■4:「10時に弊社までお越しください」
「お越しください」と同じ意味で使われる「言い換え」表現6選
「お越しください」はとても便利な言葉ですが、頻繁に会う方に対して同じ表現ばかりでは、マナー上手とは言えません。同じような意味を持つ、バリエーションを覚えておきましょう。
■1:「お気をつけていらしてください」
■2:「お時間がございましたら、ご来場ください」
■3:「よろしければご出席ください」
■4:「15時に会場にて、お待ちしております」
■5:「お時間をおかけして申し訳ありませんが、ご足労ください」
■6:「お近くまでおいでの際は、お立ち寄りください」
■1の「いらしてください」は、「いらっしゃってください」を略した言葉。「お越しになる」と同じく、「来る」の尊敬語ですが、「いらっしゃる」には「行く」「いる」という意味もあります。
■2の「ご来場ください」と■3の「ご出席ください」は、丁寧語なので、少々事務的な印象になります。
■5の「ご足労」は少々古風な表現となります。わざわざ出向いてくださる相手への、ねぎらいと感謝の意を伝える表現で、目上の方に使うことの多い言葉です。ただし、「ご足労ください」という表現だけで使うと、命令のニュアンスが感じられるため、適切な表現とは言えません。例文のようにお詫びの一文を加えたり、「ご足労いただき、ありがとうございます」など、感謝を伝える際に使うのが正しい使い方です。
■6の「立ち寄る」とは、目的地へ向かう「ついでに」ほかを訪ねること。相手の負担を慮りつつお誘いする際に用いられます。一方、同時に不確実性を含んだ言葉ですから、「打ち合わせにお立ち寄りください」などとは使いません。
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「お越しください」はビジネス文書だけでなく、会話やプライベートでも使用できる言葉です。「気をつけてお越しくださいね」と言われて嫌な気分の人はいないはず。ちょっとした気遣いの言葉としても、上手に活用したいものです。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『精選版 日本国語大辞典』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂) /『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版) :