「微力ながら〜」は、自分の力量を謙遜して表現した言葉で、ビジネスの場面でよく使われます。ただし、的確な使い方をしないと先方に頼りない印象を与えかねません。正しい使い方や類語を学びましょう。

【目次】

「微力ながら」はどんな時に使うのが正解?
「微力ながら」はどんな時に使うのが正解?

「微力ながら」の読み方と意味は?【基礎知識編】

今さら聞けない慣用表現である「微力ながら」。まずは基本からおさらいしましょう。

■「微力ながら」はどういう意味?

「微力ながら」は「びりょくながら」と読みます。

『デジタル大辞典』によれば、「微力」は【力が弱く足りないこと。また、その力】とあります。さらに「~ながら」は、逆説を表す接続助詞で、「にもかかわらず・けれども」という意味を持っています。【自分の力量をへりくだっていう語】として、「微力ながら協力させていただきます」というように使用します。

■どんな時に使うのが適切?

「微力ながら」は、目上の方や取引先、上司などに対して、会話でも文章でも使用することができます。
自分の実力を謙遜しながらも、後に続く言葉で意欲・やる気を表明する時によく使われます。

対になる言葉とセットで考える、正しい「例文」5選

「微力ながら」は、自分の力量をへりくだって表現する言葉です。従って、対になりやすいのは、「お役に立つ」「尽力する」「取り組む」など、相手のために尽くしたりサポートする意を含んだ言葉です。あらかじめ「微力」であると自分の力量を少なく表現することで、「手伝ってあげますよ」といった不遜な印象を避ける効果が期待できます。

■1:「微力ながらお役に立てて光栄です」

■2:「微力ながら応援しております」

■3:「微力ながら尽力いたします」

■4:「微力ながらお力添えできたら幸いです」

■5:「微力ながら頑張らせていただきます」

同じような謙遜の意を含む「類語」や「同義語」は?

「微力ながら」と同じような意味のフレーズとしては、次のようなものがあります。

■1:「僭越ながら」 ■2:「及ばずながら」 ■3:「憚りながら」 ■4:「お役に立てるかわかりませんが」

■1の「僭越」は、「自分の地位や立場を越えた出過ぎた行い」という意味。「出過ぎた振る舞いとは承知の上で、あえて〜させていただきます」というニュアンスを表現します。
■2の「及ばずながら」は、「私の力は決して十分ではありませんが」の意。
■3の「憚(はばか)りながら」は、「恐れ入りますが」「生意気な言い分ですが」といった意味で、「恐縮ですが」というニュアンスが強い表現です。目上の方に反論しなければいけない時などにも使われます。
いずれも自分の力量や立場をへりくだり、提案や協力の申し出などをするときに使われます。

「微力ながら」を正しく使うための「注意点」は?

■「微力では困るよ!」と受け取る人もいる

「微力ながら」は謙遜した表現ですが、「微力では困る」という考えの人もいますので、相手と状況を見極めての使用が大切です。また、自分をアピールしなければならない場面にもふさわしくありません。プレゼンテーションや転職活動などで使うと、自信がなさそうな印象を与える危険性が。同様に、自ら申し出た協力や支援に関して使うのも、違和感があります。
ある意味、とても日本人らしい表現でもあります。謙遜を美徳とする日本独特の表現ですから、外国の方との会話でそのまま使うと、ネガティブで頼りない印象を与えてしまうかもしれません。

■「嫌味」と受け取られないように注意

例えば、英語の苦手な上司に対し、帰国子女が「微力ながらお手伝いさせてください」と通訳としての協力を申し出たとします。言った本人にそんな気持ちはなくとも、上司としては「嫌味」のように聞こえてしまうかもしれません。
誰がどう見ても仕事ができて、経験や実績がある人が「微力ながら」を使うと、言った人はそんなつもりではなくても、嫌味のように捉えられる場合があります。

■他人に対しては使わない

大前提として「微力ながら」は自分の力量を謙遜して使う言葉。言うまでもなく、自分以外の力量や実力に関しては使いません。

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いかがでしたか? 基本的に、謙遜の意図で使用する「微力ながら」が、嫌味やネガティブな言葉として受け取られてしまうこともあることを頭に留め、場面や相手との距離感を図りつつ、上手に使ってくださいね。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞典』(小学館)/『大人なら知っておきたいモノの言い方サクッとノート』(永岡書店) :