「拝聴」は、「聞く」の謙譲語表現です。上手に使って、いかに自分が「相手のことを慮っているか」「相手の話に心から耳を傾けたか」を、さりげない言い回しで伝えましょう。

【目次】

拝聴
「拝聴」はどんな意味?

「拝聴」の意味は?「敬語」として正しく使うには?

■「拝聴」の意味は?

「拝聴」は「はいちょう」と読み、「聞く」の意の謙譲語。「つつしんで聞くこと」を意味します。

■「拝聴する」は正しい「敬語」?

「拝聴」は謙譲語のため、「自分が聞く動作」をへりくだって表現するときにのみ、使われます。一方、「ご拝聴くださいませ」のように、他人の行為に対しては使用できません。
「他人の聞く動作」を表現する際には、「○○をお聞きになりましたか?」というように、尊敬語、丁寧語を使用します。

ほかに「他人が聞く行為」の敬語表現としては「清聴」があり、「ご清聴に感謝いたします」などと使います。「清聴」は、言葉自体に尊敬の意味を含んでいますが、実際の使用では尊敬の「ご」をつけて使われることがほとんどです。
「せいちょう」の漢字変換では「静聴」も出てきますが、こちらは、「(人の)講演、話などを静かに聞くこと」。目上の方に誤用しないように気をつけて。

■「拝聴させていただく」は「二重敬語」?

丁寧な文章や口調を意識するあまり、二重敬語になってしまうことがよくあります。
「拝聴」の二重敬語としては、「拝聴いたします」や「拝聴させていただきます」が、例としてよくあげられています。「いたす」や「いただく」は謙譲語。「させていただく」は、「最も丁重な謙譲語」のため、二重敬語になるのです。
ただし、『敬語マニュアル』によれば、「させていただく」という言葉が持つ意味には、「相手の許可を得て〜する」「相手のおかげで〜できた」「自分の意志に関係なく〜する」というものもありますので、場面によっては、例えば「(ご許可がいただけましたので)拝聴させていただきます」といった用法であれば、間違いとはいえません
「ご拝聴」に関しても、文法としては二重敬語にあたりますが、実際のビジネスシーンでは「ご」を単なる「美化語」として、「お食事」「お電話」と同じように使われることが多いようです。

シーン別に考える「拝聴」の正しい「例文」をチェック!

では実際に、「拝聴」はどんな場面で使われるのでしょうか。

■1〈講演や音楽の演奏を聴いたとき〉: 「昨日、○○先生の講演を拝聴しました」

■2〈目上の人の発言、スピーチを聞いたとき〉:「御高説を拝聴し、大変勉強になりました」

■1は、目上の方の講演などを聴いた後で、その報告をしたり、他者と話題にするシーンです。続けて自分なりの感想を添えるなどすると、熱心に聴いたことが伝わり、さらに好印象かもしれませんね。■2は、目上の人の発言に対して「ご高説」と表現し敬い、さらに「勉強になりました。ありがとうございます」という感謝の意も込められています。

■「テレビ」や「動画」を見たときには使えるの?

テレビや動画は、「聞く」というより「見る」ものという認識が一般的です。「拝聴」よりも「拝見」が適切でしょう。
一方でラジオであれば、「先日の放送を拝聴しました」などと「拝聴」が使えます。

「拝聴」と同じ意味をもつ「類語」や「言い換え」表現は?

「拝聴」を、ビジネスで使える別の言葉で言い換えてみましょう。

■1:「傾聴」 ■2:「謹聴」 ■3:「伺う」 ■4:「承る」

■1の「傾聴」は、「耳を傾けて、熱心に聞くこと」。熱心に聞き入る態度を表現できますが、敬語表現ではありません。■2の「謹聴」は「拝聴」同様、「つつしんで聞くこと」を表す言葉ですが、よりフォーマルなシーンで使われます。
「伺う」も「承る」も、「聞く」の謙譲語で、自分がへりくだることで相手を尊敬している気持ちを含んだ使い方となります。「伺う」より「承る」のほうが、敬意が強い表現となります

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いかがでしたか?「拝聴」は、ビジネスシーンで頻出する謙譲語のひとつです。「拝見」「拝読」同様、上手に使いこなしたいですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂)/『大人なら知っておきたいモノの言い方サクッとノート』(永岡書店) :