ビジネスシーンだけでなく、日常、何気なく使っている「お納めください」という言葉。お中元やお歳暮、お土産などをお渡しする際、「どうぞご遠慮なく」という気配りを込めて使われる言葉です。あなたの使い方、大丈夫ですか?

【目次】

お納めください
「お納めください」を正しく使えますか?

覚えておきたい「お納めください」の基礎知識

■「お納めください」の「読み方」と「意味」は?

「お納めください」は、「おおさめください」と読みます。
『デジタル大辞泉』によれば、「納める」には以下のような意味があります。
・収納する。決まった所にしまう。
・お金や物を受け取って自分のものとする。
・渡すべきお金や物を受け取る側に渡す。
・乱れているものを、落ち着いて穏やかな状態にする。
・物事をそれで終わりにする。
・死骸を葬る
「お納めください」は、「納める」に「お~ください」という要望表現を組み合わせた、尊敬語です。お中元やお歳暮、お礼や手土産など、目上の方に感謝の気持ちを込めた物品をお渡しする際に、「どうぞお受け取りください」という意味で使われます。相手が受け取るのをためらうことを事前に察して「どうぞご遠慮なく」と促す、気配りの言葉でもあります。

■「ご査収ください」との違い

「ご査収ください」は、「内容をよく調べたうえでお受け取り下さい」という意味の敬語として使用されます。請求書や企画書など、確実に目を通してもらいたい書類等の受け渡しに使われることが多い言葉です。一方で、「お納めください」に調査・確認の意味合いは含まれていません。

お金を渡すときや謝罪に使ってOK? 使用時の「注意点」

「納める」には「渡すべきお金や物を受け取る側に渡す」という意味もあります。そのため、納税や授業料などを渡す場合にも「納める」の漢字が使われますが、一般的に使われる「お納めください」という要望表現は、お礼や手土産など、渡す義務がないプラスαの贈り物に対して使われます。従って、契約もしくは約束を前提とした、給料や月謝、報酬、商品代金などには使いません。ただし例外として、神社やお寺にお供えする金品やお香典については、「お納めください」という表現が使われます。

また、「納める」には「物事をそれで終わりにする」という意味もあります。お香典に使われる言葉でもあり、マナー違反と感じる人もいるようです。結婚式などの慶事でお祝儀をお渡しする際には避けましょう。

そしてもうひとつ。「納める」がもつ、「乱れているものを、落ち着いて穏やかな状態にする」という意味を踏まえれば、謝罪の場面でも使える言葉であることが腑に落ちるはずです。

ビジネスシーンでの使い方がわかる「例文」4選

「お納めください」は上司や取引先の担当者など、敬語で話す相手になら、どなたにも使える表現です。「ほんの気持ちですが」「ささやかな品ですが」「お口にあうかわかりませんが」など、ひと言添えると、より丁寧で気持ちのこもった言い回しになります。

■1:「先日のお礼ですので、ぜひお納めいただけたらと存じます」

■2:「些少ではございますが、どうぞお納めくださいませ」

■3:「ほんの気持ちですが、お納めいただけますと幸いです」

■4:「お詫びの気持ちとして、心ばかりではありますがどうぞお納めください」

「お納めください」の「類語」や「言い換え表現」を知ってスマートに!

ビジネスシーンで使いやすい、「お納めください」の類語をご紹介します。

■ご受納ください

「納める」と、ほぼ同じ意味で使われる言葉です。ただし、口語ではあまり使われず、メールや手紙などで用いることがほとんどですね。

■お受け取りください

お土産やプレゼント、あるいは支払いでも。広い範囲で使われる言葉です。

■ご笑納ください

謙遜の意味を込め、「ささやかなものですから、どうぞ笑って受け取ってください」といったニュアンスで使われます。ただし、カジュアルな印象を受ける人もいるので、目上の方に使う際は慎重に。親しい間柄に留めたほうが無難かもしれません。

「お納めください」にはどう返すべき?

最後に、「お納めください」への返答例を。

相手は尊敬語で厚意を示してくださっているのですから、こちらも「ありがたく頂戴いたします」「お心遣いありがとうございます」と、丁寧な表現で返しましょう。

メールや手紙で贈り物への感謝を伝える際には、「結構なものを頂戴しまして、ありがとうございました」「お心遣いに感謝申し上げます」など、より丁寧な言い回しで、できるだけ早く、お伝えするのがマナーです。

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ビジネスシーンでもプライベートでも。ちょっとしたお品をお渡しする際、「どうぞ」だけでは、心もとなく格好がつかないもの。「お納めください」という言葉を添えれば、スマートかつ気配り上手な人として、評価が高まりそうです。

この記事の執筆者
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参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館) :