今、注目を浴びる一国のリーダーたちの、意外な共通点
今、こういう時代だからこそ、一国のリーダーが良くも悪くも目立ってきて、やはり国というものはリーダー次第なのだと思い知らされる。
そういう中で理想的なリーダーとされているのが、言うまでもなく、一夜にして世界が知る英雄となったウクライナのゼレンスキー大統領。そしてヨーロッパでは最も積極的に、プーチンを説得しようとしている人として、にわかに存在感を増しているフランスのマクロン大統領……。
全く別の意味で注目を浴びているのが、熾烈な大統領選に勝利した韓国の新しい大統領ユン・ソクヨル氏。過去の大統領の不正を許さなかった元検事総長という人物で、日本には今までよりもずっとバランス感覚のある対応をしてくれそうで、韓国大好きな自分にとっては嬉しい結果だった。
そして、ふと気づいたのがこの3人の大統領の、意外な共通点。それぞれのファーストレディたる妻たちも、別格の注目を浴びている人たちだけれど、もっと重要な共通点は、彼ら3人の大統領が、いずれも妻と結婚するために尋常ではない忍耐と努力を積み重ねたこと、一人の女性に対して全身全霊で向き合い、粘り勝ちとも言える愛を獲得したことなのである。
夫のスピーチ原稿にも関わっている、才能あふれる美しき妻
ゼレンスキー大統領の夫人は、オレナ・ゼレンシカさん44歳。脚本家として活躍する一方、建築家も目指し、今や大統領のイメージコンサルタントもこなす、実に多彩な女性である。そしてご覧の通り美しい。モデルのようなプロポーションは、女性誌の表紙を飾るほど。今は、ロシアの殺人リストに名前が載っているそうだがそれににもかかわらず、子ども達とキエフに残り、世界の惨状を伝えるとともに、絶え間なく国民にメッセージを送って、励まし勇気づけている。
ちなみにゼレンスキー氏が大統領選に出馬する時、この妻は当初猛反対したと言われる。そもそもが裏方を好む性格で、むしろ心静かに暮らしたいという思いが強かったと。しかし夫の出馬の意志が固いことを知るにつれ、覚悟を決めたということなのか、一転夫のサポートに回り、今や世界中を感動させるスピーチ原稿にも関わっているとも言われる。
まさに内助の功。ファーストレディの見本のような人だけれど、ゼレンスキー大統領はこの素晴らしい女性を妻にするまでに、8年の月日を費やしていると言われる。もともとオレナ夫人は、別に婚約者がいたともいわれるが、8年間にわたり求愛を続け、粘りに粘ってようやく落としたという逸話もあるのだ。
でも今の大統領の、勇気と信念と強い覚悟を見るにつけ、恋愛に関しても、この人と決めたら脇目もふらず、一途に愛を貫くタイプであることは容易に想像できる。2人の出会いは大学の同級生としてのものだったともされ、いまのオレナ夫人の働きを見る限り、美しさだけでなく、あくまでその知性や才能に惚れきったのだろう。どちらにしても、ぞっこんだ。
17歳でプロポーズし、12年待ち続けた男子生徒は大統領になった
さて一方、若くしてリーダーシップを発揮するマクロン大統領は、そういう意味で伝説的なドラマを見せてくれた人。よく知られていることだが、妻のブリジット夫人はマクロン大統領より25歳年上。しかも出会いは、大統領が通った高校の生徒と教師としてだった。
しかしその内情を知れば知るほど、驚愕の展開だったことがわかってくる。夫人には夫と3人の子どもがいたから、当時はそれ以上の間柄ではなかったと言われるが、マクロン氏15歳で40歳の教師に恋をして、なんと17歳でプロポーズをしたとされる。それが明るみに出て街のスキャンダルともなり、その後の約10年間、完全に引き裂かれた状態にあったともいうのだ。
でもこの時17歳のマクロン氏は「あなたが何をしようと、自分は必ずここに戻ってきて、あなたと結婚する」と断言したという。その後、膨大な数の文通や電話で、ブリジット夫人の決意も固まっていく。やがてマクロン29歳、ブリジット54歳で結婚に至るのだ。
まさに事実は小説より奇なり。にわかには信じがたいほどの情熱は、一途どころではない、「一念岩をも通す」。青春時代も血気盛んな時代も、すべてをこの人と結ばれるためにこそ生きたと言ってもよいくらい。
にもかかわらず、30代のうちに大統領になるという、あり得ない立身出世を遂げている。それこそ波瀾万丈にして奇跡的。こんな恋愛があるのだ、こんな人生もあるのだと、この話を思い出すたびに改めて驚かされるほどなのだ。
「自分が一生ご飯を作ってあげます」とプロポーズしたのは次期大統領
そして3人目、韓国の新大統領、ユン氏の妻も12歳年下。人を介して知り合い、その場で心を揺さぶられたというが、自らの立場も鑑み、12歳という年の差を気にして、おそらくは彼女を諦めるために、もらった名刺をあえて捨てたという。
けれども思いが立ちきれずに、何年か後にメールを送って気持ちを伝えたと言うが、なんと名刺を捨てた際にとっさにメールアドレスを丸暗記していたという。きっと本能的に脳に刻みつけていたのだろう。
逆にゴンヒ夫人のほうは、彼の財産が当時200万円以下だったことに戸惑ったものの、自分でなければこの人は結婚できないと思ったと、のちに述べているらしい。
しかも2年の交際の末、プロポーズの際にはユン氏のほうが「一生自分がご飯を作ってあげますから」といい、実際その約束を10年間守っているという。微笑ましいと言うのか、いじらしいと言うのか、何かこの2人の関係は最初からユニークすぎる。
ゴンヒ夫人は美術関係のイベントプロデュースをする企業のCEOというキャリアウーマンでもあったから、 彼女が稼いで、ユン氏がご飯を作る、そういう関係が出来上がったのだろう。
ただご存知のように、夫人は大統領選の最中、経歴詐称で公に謝罪会見を行って物議を醸した。不思議なカップルであるのに加え、虚偽発覚というケチがついたものの、素直な謝罪が逆に好感度を高め、美しいファーストレディの誕生に韓国は少し湧いているとも言う。まぁこれも、夫が妻に「ぞっこん」と言っていいパターン。
1人の女性に一途になれる男は、いつか大きなことをやり遂げる?
ここで何が言いたいか? ズバリ、1人の女性に一途になれる男性は、天下を取る! 偶然に過ぎないかもしれないけれど、でも偶然ではないかもしれない。実際、一国のリーダーになるような人には、1人の女性を愛し続けるタイプが少なくない。
元俳優だったレーガン大統領然り、オバマ大統領然り、日本でも、かつての首相、橋本龍太郎氏、今の岸田首相もまた一途系の愛妻家で知られる。一流企業の創業者にも、そういう人は少なくないのだ。
じゃあなぜ、天下を取るような人は、1人の女性を脇目もふらずに求めることができるのか?
それは、まず圧倒的にモノが見えているから。物事の本質が見えている人だから。何が正しくて何が正しくないのか、自分なりの答えがはっきり見えているからこそ、自らの人生において理想とする女性に会ってしまったら、もう何があろうと気持ちが揺らぐことがない、その人と生きる人生に向けて自分をパワフルに真っ直ぐ進めていける、そういう能力のある男だからなのだ。
もちろん彼らにはもともと、目的を成し遂げるパワーと根気があるからこそ、 恋が成就したと言えるが、だから仕事でも、世の中が明快に見えているその視力の良さと、物事をやり遂げるエネルギーがあるからこそ、当然のように成功したのである。
でもそれぞれの妻たちは、そんな夫の潜在能力に気づいていたのだろうか。自分に根気よく求愛する男が、まさか後の大統領になるなど、夢にも思っていなかったはず。でもそういうふうに、相手が自分を“運命の女”と思って疑わず、決してあきらめないような男が、自分の目の前に現れたら、そういう凄い人生を自分に見せてくれる男であるとイメージしてみても良いのかもしれない。
自分をひたむきに思い続ける男に何かを感じたら、それは運命!
フランスの大統領夫人は、17歳のマクロン氏と演劇の話をしていて、知らず知らず翌朝もまたその続きがしたいと思うようになっていたと、結婚後に告白している。高校生にして少年っぽさはなく、大人と話しているような錯覚とともに、次第に相手に惹かれていったと。そしてやがては、ここで踏み切れなければ“自分の人生をダメにする”と感じたとも言う。
自分をひたむきに思い続ける男に、何らか神秘的な力を感じたら、それはやはり特別な運命なのだろうし、そこには思いもよらない奇跡的な人生が待っているのかもしれないのだ。
1人の女性に生涯を通じてこだわる男の価値観は、男の生態から考えて、やはり格別なものなのだ。そしてそういう男に、全身全霊で愛される女は、やはり女性として、また人間として、格別なのである。
期せずして、ここで脚光を浴びることになった3人のリーダー、3人のファーストレディに、そうしたずば抜けた人間力と数奇な運命の法則を学びたい。
- TEXT :
- 齋藤 薫さん 美容ジャーナリスト