雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は「Another Tomorrow」CEO ヴァネッサ・バルボーニ・ハリックさんの活動をご紹介します。

ヴァネッサ・バルボーニ・ハリックさん
「Another Tomorrow」CEO
金融大手「モルガン・スタンレー」に15年間勤務したのち、’17年に退職。’18年にパートナーと共に「Another Tomorrow」をローンチ。素材づくりからパッケージにいたるまでサステイナブルな視点を徹底させている。

原材料から徹底的にこだわった真にサステイナブルな服を実現

SDGsへの意識の高まりに伴って「なんとなく地球に優しそう」な服が世の中に溢れるなか、ヴァネッサさんが主宰するアパレルブランド「Another Tomorrow」が提案するアイテムは、科学的にも隙のないサステイナビリティを誇っている。

ブランドの立ち上げのために、30代の終わりからコロンビア大学地球研究所で持続可能性管理博士課程に入学し、専門知識を身につけたという徹底ぶりで、’18年ECのローンチ以降、ECを中心に人気を博し、現在では32か国に顧客をもつ。昨年はウエストビレッジに旗艦店もオープンした。

「金融業界の最前線で15年間働いたあと、自分自身の情熱―DKNY―持続可能な社会実現に関わりたいという想いを叶える仕事がしたいと、転職活動をしていたときに、アパレル業界のサステイナブル化の遅れに気付いたんです。そして、自分の価値観に合う服がどこにも存在しないということにも。

そこで、「DKNY」でデザイナーをしていたパートナーと共に、ブランドを立ち上げました」

例えば人気の高いウール製品は、素材をタスマニアのふたつの家FSC族経営農場と協業生産。絹の代替品であるビスコースは、スウェーデンのFSC承認(※)のものを採用。

原材料はイタリアに出荷され、職人の労働条件が守られ技術も高い工場で仕上げられる。ボタンは再生プラスチック50%と、熱帯地方のヤシの実からつくられているなど、ディテールにもこだわる。

今後は、ヨーロッパやアジアへの出店も計画中。柔らかな物腰のなかに芯の強さを感じさせる彼女の人柄が投影されたような、上質でミニマルなワードローブが、世界に広がり、意識を変えていく。

【SDGsの現場から】

●’21年6月にウエストビレッジに旗艦店がオープン

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オーガニックコットンのシャツやタスマニア産の羊毛を使ったウールのパンツが定番人気。

●原材料までさかのぼりサステイナビリティを徹底追求

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現地にも積極的に足を運ぶ。写真は、タスマニアの家族経営農場にて。 Courtesy of Another Tomorrow/Lauren Bamford

※FSC承認とは…Forest Stewardship Council(R)(森林管理協議会)による、「適切に管理された森の生産品」であることを証明する国際的な認証制度。

PHOTO :
Hiroshi Abe
WRITING :
剣持亜弥(HATSU)
EDIT&WRITING :
大庭典子、喜多容子(Precious)
取材 :
Junko Takaku