雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。
今回は「ローカルフードサイクリング」代表取締役社長 平由以子さんの活動をご紹介します。
生ゴミを堆肥化するコンポストで半径2km圏内の循環生活を目指す
家庭から出る生ゴミや落ち葉などの有機物を、微生物の働きを活用して発酵・分解させて堆肥にする「コンポスト」。平さんは’98年から、ダンボールを活用して家庭で手軽にできる「ダンボールコンポスト」(※)を国内外で普及する活動を続けている。’20年にはバッグ形コンポストも発売。
首都圏を中心に1万3千世帯が採用しており、支社のあるフランスでも拡大中だ。
「きっかけは、私が28歳のとき、父が病気を患ったことでした。栄養士の資格を生かして食事療法を考えたのですが、無農薬野菜も安全な水もなかなか見つかりません。どうにか集めた安全な食によって、父は元気を取り戻し、余命数か月の宣告から2年生きることができたんです。
しかし、娘がいた私は、未来に強い危機感を覚えました。母親が1960年代から家庭菜園のためにコンポストを使用していたこともあって、土の改善と暮らしをつなげる活動をしようと決意しました」
目標は、「半径2km圏内で持続可能な食の循環をつくる」こと。
家庭から出る生ゴミをコンポストで堆肥化→スタッフが回収→近くの畑でそれを使って野菜を育てる→堆肥提供者にプレゼントしたり地元のマーケットで販売したりする→各家庭で出た生ゴミが再びコンポストになる、という「ローカルフードサイクリング」プロジェクトが、’17年から福岡市の複数の住宅地で展開中だ。
「持続可能な栄養サイクルができて、地域のつながりや楽しさが生まれ、安全安心な食べ物が身近で手に入る。今はふたりの娘も参加し、母から3世代での活動に。スタッフも増えました。’30年、生ゴミ100%資源化の実現に向け、これからも全力で走ります」
【SDGsの現場から】
●アジアを中心に技術を普及。フランス支社も
●バッグ形はベランダに置いてプランター代わりに
※ダンボールコンポストとは…ダンボールを使った生ゴミ処理容器のこと。腐葉土などの材料を入れたダンボール箱に、家庭から出る生ゴミを入れて、堆肥化する。
- PHOTO :
- 石川浩太郎
- EDIT&WRITING :
- 大庭典子、喜多容子(Precious)
- 取材 :
- 佐々木恵美