雑誌『Precious』では「My Action for SDGs 続ける未来のために、私がしていること」と題して、持続可能なよりよい世界を目指す人たちの活動に注目し、連載しています。

今回は建築家 アドリアーナ・ブレイ・レビスキーさんの活動をご紹介します。

アドリアーナ・ブレイ・レビスキーさん
建築家
サンパウロ大学建築学部卒業。サンパウロ州の社会福祉、経済問題にも携わる。ブラジル建築事務所協会コンサルタント、サンパウロ建築都市評議会顧問。 都市立法技術会議所、都市景観保全評議会の代表メンバーを務める。

異なる文化、階層、宗教をもつ人々を混合させていく建築の力

アドリアーナさんが手掛けた建築物は、ブラジル最大のサステイナビリティ賞「グリーンベスト」を受賞している。その功積のひとつが、ビクトー・シビタ広場。

廃棄物が堆積し治安も悪化していた土地を、官民協働のプロジェクトで公園化。土壌汚染が深刻だったがすべての土を入れ替えるには予算が足りなかったため、土地はそのまま残し、通路とメインスペースを大きな吊り下げ式の木製デッキとした。

さらに、汚染拡大を防ぐため、水を使わず建築工事を実施。そのプロセスを説明するため、サステイナビリティ博物館を設立。あえて残した汚染土壌と共に、市民に環境問題へ関心をもつことを促した。

サンパウロ市内の3つの貯水パークも話題となった。そのひとつ、カンガイバ公園では、周囲を(※)ファベーラ(貧困地区)が取り巻く立地で、水を循環させるように通路をつくり、緑溢れる環境に。住民の意識を高め、従来抱えていたゴミ問題への改善へもつなげた。

「若い頃に、所属していたコンテンポラリーダンスのグループを通じて、ファベーラの子供たちと触れ合う機会がありました。違法に建てられた居住地での人々の暮らしを見て、空間の価値を知ったのです。

格差により分断されていたサンパウロの街を、人々をつなぎ、混じり合わせる空間に変えていかなければならない。私たちは法律を整え、国や自治体が予算不足でできないようなことに積極的に関わり、それを推進していきます」

アドリアーナさんの事務所は「いつも困難なプロジェクトを手掛けていることで有名」と笑う。

「この街の空間を、ひいては文化、社会の価値観そのものを変えていく。建築には、それができる」

【SDGsの現場から】

●ゴミだらけだった場所から資源が循環する広場へ

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雨水収穫システムで機能しているビクトー・シビタ広場。公共の場で国内初のLEDを使用。

●歩きながら水資源について学べる緑豊かな貯水パーク

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貯水施設を公園にすることで、ゴミ問題を抱えるエリアの人々の自然を慈しむ心を育てる。

※ファベーラとはブラジルの大都市や中規模都市の市内・郊外に見られる貧民街。木やトタン板などでつくられた違法住宅が数百〜数千戸集まっている。

WRITING :
剣持亜弥
EDIT :
大庭典子、喜多容子(Precious)
撮影・取材 :
Naoko Takahashi