帰社した同僚をねぎらったり、挨拶代わりにも使うことがある「ご苦労様」というフレーズ。これって正しい敬語なのでしょうか? 上司や仕事相手に使ってもOK? 今日は、あなたの印象をよくする「ご苦労様」の上手な使い方をご紹介します。
【目次】
「ご苦労様」の「意味」は? 「目上の人に失礼」な理由
■「ご苦労様」を分解して意味を把握
まずは、「ご苦労様」というフレーズの基礎知識から。「ご苦労様」は、「ご」「苦労」「様」の3パーツから成り立ったフレーズです。この場合の「苦労」は苦労そのものではなく、その苦労をねぎらって表現したもの。接頭語の「ご」を付けて他者の苦労をねぎらう際に使います。「様」を付ければより丁寧な表現に。
例えば、「出張ご苦労様」や「早朝からご苦労様です」といったように用います。
■誰にでも使える?
苦労の「労」という字は、訓読みで「ねぎらう(労う)」、さらに「いたわる(労る)」とも読みます。意味は微妙に違いますが、いずれも「ご」や「様」を用いた丁寧な表現であっても、自分より目上の人、上司や取引先には使いません。「上位者から下の者へ」掛けるフレーズなのです。
「ご苦労様」は、自分と同等か下位の人に向けて使いましょう。
「お疲れ様」と「ご苦労様」はこう違う
■同じ? 違う? 微妙な差異をしっかり把握
「ご苦労様」とよく似たフレーズ「お疲れ様」も、ビジネスシーンでよく使われています。しかし、意識して正しく使い分けているでしょうか?
どちらも相手をねぎらっていますが、「ご苦労様」が目上にはNGなのに対し、「お疲れ様」は「お疲れ様です」「お疲れ様でした」と、敬語表現にすれば目上の人にもOK! ただし、これは社内など身内の人に限ったもので、取引先やお客様などには敬語表現にしても適していません。
相手別にまとめるとこのようになります。
<上司に(社内)>×ご苦労様でした 〇お疲れ様でした
<取引先に(社外)> ×ご苦労様でした ×お疲れ様でした
<同僚や部下、後輩に> 〇ご苦労様 〇お疲れ様
「お疲れ様でございました」は二重敬語の疑惑もありますが、文法上間違いはありません。「お疲れ様」をより丁寧に表現したい場合は使ってOKですが、口に出してまどろっこしいと感じるなら「お疲れさまでした」で十分でしょう。
慰労の気持ちを伝える正しい「言い換え表現」
ねぎらいには感謝の気持ちがあるはず。「ご苦労様」も「お疲れ様」も使わず、感謝やいたわりの気持ちを述べることで言い換えは可能です。言い換え表現をご紹介しましょう。
■1:「お疲れのところ恐縮ですが~」
■2:「早朝からお越しいただき申し訳ございません」
■3:「いつもありがとうございます」
■4:「お先に失礼します」
■5:「ご苦労をおかけしました」
■1と2は上司や取引先など目上の人に。■3は宅配業者などをねぎらう際に。■4は退社時など周囲に。■5は取引先に感謝を込めて使います。どんなシチュエーションでも相手が誰でも、ねぎらいや感謝の声掛けはコミュニケーションを円滑にしてくれるので、積極的に口に出したりメールの出だし文に使いたいものです。
「ご苦労様」を使うときの「注意点まとめ」
最後に、このフレーズの注意点をまとめてみます。
・「ご苦労様」が使えるのは自分と同等か下位の人
・身内以外へは「ご苦労様です」ではなく「お疲れ様です」や感謝の言葉で
***
本日は、相手を選んで使いたい「ご苦労様」について見てきました。言ったり言われたり、使用頻度が高く慣れているフレーズこそ、きちんと意味を把握し、正しく使ってこそ“敬語美人”です。さぁ明日も頑張りましょう!
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 『デジタル大辞泉』(小学館)/『印象が飛躍的にアップする大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版) :