今日は、「部長が戻りましたら申し伝えます」「〇〇に申し伝えることがありましたら承ります」など、電話対応でよく使われる「申し伝える」の敬語表現について。誰に対する敬語なのか、しっかり理解して使うことが大切です。気を付けたい“二重敬語”や“ウチソト逆転敬語”についても学んでいきましょう。
【目次】
- 「申し伝える」を徹底解明、その「意味」は?
- 電話やビジネスメールで使える「例文」5選
- 「申し伝えさせていただきます」のほうがより丁寧?
- 伝言を依頼する側の「申し伝えてください」はOK?
- 社内外での「申し伝える」の「注意点まとめ」
【「申し伝える」を徹底解明、その「意味」は?】
■フレーズの成り立ち
「申し伝える」とは、「言葉を取り次ぐ」や「伝言する」という意味で使う「言い伝える」の謙譲語。へりくだることで相手を高める敬語表現のひとつです。
■誰に対する謙譲語?
社外のAさんからの伝言を、社内のBさんに伝えるケースでは、Aさんに「Bに申し伝えます」と言いますよね。この場合はAさんに対する謙譲語になります。社内のBさんが、あなたの上司であろうと部下であろうと関係ありません。
■こんなシーンでよく使われます
第三者に伝える、というシーンで用いられる「申し伝える」は、こんなケースで活用されます。
・電話対応で、不在者に伝言する、といったケース
・外部との打ち合わせ時に、その場にいなかった社内の人(身内)に伝える、といったケース
【電話やビジネスメールで使える「例文」5選】
■1:「部長が戻りましたら、〇〇様にお電話差し上げるよう申し伝えます」
■2:「日程変更の件、私から担当者に申し伝えておきます」
■3:「ご質問の内容、確かに承りました。担当者に申し伝えます」
■4:「ご依頼ありがとうございます。本人に申し伝えまして、改めてご連絡いたします」
■5:「本日のご提案につきましては、後ほど上の者にも申し伝え、迅速に対応いたします」
【「申し伝えさせていただきます」のほうがより丁寧?】
■「申し伝えさせていただきます」は正しい敬語?
ここで、間違いがちなフレーズもご紹介しておきましょう。“させていただく問題”とでも言いたくなるほど、「~させていただく」という言い回しが溢れていますね。
『デジタル大辞泉』の「させていただく」には【相手に許しを請うことによって、ある動作を遠慮しながら行う意を表す】とあります。伝言することについて許しを求める必要はありませんから、「申し伝えさせていただきます」はNG表現というわけです。
■「申し伝えます」と「お伝えします」の違い
「申し伝えます」と「お伝えします」の使い分けは、誰に対しての敬語なのか、が肝心。伝言を受ける人に対して「〇〇にお伝えします」はNGで、やはり「○○に申し伝えます」が正解です。外部の人に自社の人間を高める「お伝えします」を使用するのは、たとえ伝言する相手が目上の人であってもNGなのです。
このように、社外の人に対して自社の上司を高めてしまう“ウチソト逆転敬語”は、犯しがちな間違いです。十分に気を付けたいものですね。
【伝言を依頼する側の「申し伝えてください」はOK?】
Aさんに用があって電話をしましたが、Aさんは不在で、電話に出たBさんに伝言を頼みます。その際の言い回しとして…
1.Aさんにご伝言願います。
2.Aさんに申し伝えてください。
3.Aさんにお伝えください。
4.Aさんにお知らせください。
5.Aさんにお話しください。
6.Aさんにご連絡ください。
そうです、2の「Aさんに申し伝えてください」のみがNGですね。
【社内外での「申し伝える」の「注意点まとめ」】
伝言を依頼する主体が社外の人(部外者)という前提で例文を紹介してきましたが、社内でも他部署とのやり取り、というような場合には社外の人同様に「申し伝える」が有効な場合も。注意点をまとめます。
・第三者への伝言、というシーンで
・Aさん(社外の人、あるいは社内他部署の人)から、社内Bさん(上下関係は不問)への伝言に
当事者である「伝言を依頼する人」と「伝言をつなぐ人」、そして第三者である「伝言を受ける人」。上下関係は敬語を使う上で大変重要ですが、「申し伝える」を用いるシーンでは当事者のみを考えるとわかれば、そう難しくはないでしょう。
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本日の「申し伝える」は、1対1ではなく第三者も介入してくるため、敬うのは誰なのかをはっきり認識すべき敬語でした。電話対応などでよく使っているフレーズでも、正しく使っているか改めてチェックしてみてください。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂)/『「させていただく」の使い方 日本語と敬語のゆくえ』(角川新書)/『とっさに使える 敬語手帖』(新星出版社) :