それはまるで「身につける夢物語」ハイジュエリーの世界へようこそ!
ジュエリーに興味はあっても、実はハイジュエリーのことはあまりわからなくて――。そういう人も多いのではないでしょうか。
最近の潮流も含めた、ハイジュエリーの魅力やPrecious流の見どころ、楽しみ方についてご紹介します。
【ブルガリ】麗しいビーズカットのカラーストーン
メゾンが創業されたローマが、デザインの着想源である「ブルガリ」。バロック建築の象徴であるアーチを、美しいカラーストーンで表現。連なる石は揺れると動く、精巧なつくりに。
【ハリー・ウィンストン】稀少性の高いサファイアを主役に
石の質にこだわりのある「ハリー・ウィンストン」。ダイヤモンドだけでなく、サファイアにもそれが表れている。メインの石は、色を鮮明にするための熱処理をしていない“非加熱”のもの。イヤリングは、同じクオリティの石をふたつ必要とするため、より稀少性が高い。
【ヴァン クリーフ&アーペル】月に腰かける優美な妖精にうっとり
ヨーロッパに伝わる、月の妖精の伝説から発想を得たデザイン。細かい動きを表現する精緻に制作されたボディも秀逸で、いつまでも見ていたくなる。
煌めきと技術と夢が詰まったものがハイジュエリーです
子供の頃に読んでいたおとぎ話を、もう一度、大人になって楽しむような気持ち。ハイジュエリーについて知っていくと、そんな錯覚にとらわれます。究極の宝石、デザイン、クラフツマンシップをもって完成させる、ジュエラーの情熱の結晶がハイジュエリー。ミステリアスな輝きをもつ石や、細やかで複雑な装飾は、眺めていると、どんどん吸い込まれてしまうほどです。
実は近年、ハイジュエリー界はさらに盛り上がる傾向に。稀少性の高まりや技術の進歩に加え、アートピースや伝統工芸品としての側面も、もち合わせていることから、石や技巧に惹かれる人など、多角的な視点から、大きな注目を浴びているのです。
あまりにラグジュアリーなものゆえ、自分のライフスタイルとは縁遠い世界と思われる人もいらっしゃるかもしれませんが、背景を知っていくと、実に興味深いことがわかります。ふだんジュエリーを愛してやまないプレシャス世代のために、昨今のハイジュエリーについて、お話ししていきましょう。
ハイジュエリーの見どころは、大きく分けて「宝石」と「細工」のふたつがあります。ジュエラーによって強みは変わりますが、一般的には「どれだけ上質な宝石を使っているか」と「どれだけ凝った技巧が施されているか」に注目すると、ハイジュエリーの見方がわかります。またデザイン性について触れるならば、アイコニックな作品はひとつの指針に。
例えば、上記でご紹介した「ヴァン クリーフ&アーペル」の『フェアリークリップ』のコレクションや、「ティファニー」の『バード オン ア ロック』などは、時代を超えて人気のある、伝説級のデザイン。華麗で夢のある佇まいは、世界中の女性の、永遠の憧れでい続けているのです。
また、先にハイジュエリーは「宝石」と「細工」が見どころと述べましたが、最近では、どちらのバランスも調和されている作品が多く登場。上質な宝石が見事な細工により、かつてない、素晴らしいハイジュエリーとして完成する。そんな洗練された時代へと突入しているのです。
【ピアジェ】アシメトリーに生命力を宿して
自然界がそうであるように、バラのモチーフはすべて形状が異なっている。カラーストーンのカットもあえて不揃いにし、個性を重んじる今の時代にフィットする逸品に。
【ティファニー】エリザベス・テイラーも愛した逸品
天才デザイナー、ジャン・シュランバージェのセンスが光る! 古代魚の、今にも泳ぎ出しそうな躍動感のある姿が印象的。
実はハイジュエリーは想像以上に自由で楽しい
バリエーション豊かな素材が楽しめるのも、ハイジュエリーの魅力のひとつです。一般に「プレシャスストーン」と呼ばれるサファイアやルビー、エメラルド、そしてダイヤモンドが中心かと思いきや、そのような概念は早くから払拭され、さまざまな石が扱われるように。トルマリン、ガーネット、スピネル、クオーツ…。自由な組み合わせは、常に最先端としてハイジュエリーの世界を大きく広げ、見る人、身につける人を楽しませてくれます。
またゴールドのカラーも然りで、ジュエラーによっては、デザインや石の色に合わせて割わり金がねを変え、絶妙な色に調節しています。これはかなりの手間と時間のかかること。ですが、ハイジュエリーにおいては、そういったクリエイティブな挑戦もジュエラーの威信をかけて実現してしまう。いかに大胆で革新的なデザインを生み出せるかが、腕の見せどころであることの証といえるでしょう。
どうやらハイジュエリーの世界では、私たちが想像する以上に、前衛的で発展的なことが行われているよう。そう考えると「もっとハイジュエリーのことを知りたい!」と、ワクワクしてきませんか?
【ショパール】クラシックにして大胆なデザイン
ハイジュエリーでも人気のエメラルドを、定番のエメラルドカットではなく、ペアシェイプやスクエアカットに。シャンデリア形の優美なイヤリング。
【ダミアーニ】さまざまな色のダイヤモンドを堪能
質を超えた魅力が見出せる“物語”という価値
さらにハイジュエリーは、コレクションテーマや、ジュエリーそのものにまつわる背景など、“物語”を知ると、胸を打つような感動に触れることができます。ジュエラーの歴史のなかで起こった史実や、セレブリティの情熱的なラブストーリー、上流階級の社交界の風景など、作品にまつわる夢のようなストーリーの数々は、ハイジュエリーの存在をよりいっそう奥深いものにし、ものの価値以上の愛情が湧くように。
冒頭に「ハイジュエリーを知っていくと、大人になって、おとぎ話をもう一度楽しんでいるような気持ちになる」と記したのは、まさにこのことで、幼少時代に「いつか私も、お姫様になる日が来るかもしれない」と、胸をときめかせていた純粋な記憶が、呼び起こされるのです。美しさやラグジュアリー感だけでなく、ドラマティックな出来事に思いを馳せることで、心が揺さぶられる。そんな感動も、ハイジュエリーの楽しみ方のひとつではないでしょうか。
【ルイ・ヴィトン】シンプルななかにも緻密な計算が
宝石のカットをデザインの一部と考える「ルイ・ヴィトン」のハイジュエリー。中世の城壁を思わせるブレスレットは、バゲットカットとラウンドブリリアントカットのダイヤモンドが、異なる面で輝く。ふたつの光が複雑に交差して。
【ブシュロン】モノトーンがモダンな佇まいに
ジェンダーレスな要素も組み込まれ、話題となっている「ブシュロン」。1920年代のアーカイブをもとに生まれたボウタイのブローチは、男性が身につけても素敵。付属のパーツでヘアピンにすることもできるマルチユース。
【ブチェラッティ】レースのように繊細な透かし技法
これぞ超絶技巧といいたくなる、圧巻の金細工!よく見ると2種類の透かし模様で構成される、熟練した職人だけが完成することのできる、軽やかなオープンワーク。ボリュームがあっても、さらりと身につけられそう。
【エルメス】アイコンモチーフを現代的に表現
「エルメス」の象徴である馬を立体的に再現し、片方は鏡面仕上げのピンクゴールド、片方は全体をブラックスピネルで覆ったデザインに。コレクションのテーマ「闇と光」が、ミニマルに描かれている。
ハイジュエリーは常に進化し続けている
最後に、近年話題となっている、ファッションブランドから発信されているハイジュエリーについても、触れたいと思います。なによりもその魅力は、モードを基盤とした、柔軟な発想力ではないでしょうか!
デザイナーのクリエイションが光る造形はもちろんのこと、ファッションブランドらしい、“コーディネートが想像できるデザイン”が際立つのも、特筆すべき点。これによりハイジュエリーが、レッドカーペットや舞踏会といった特別なシチュエーションだけでなく、日常でも身につけられる存在へとなる動きに。新しい風がハイジュエリー界全体への刺激となり、より素晴らしい作品の誕生へと導いていくのです。
この先きっと、自分が身につけてみたいと思うハイジュエリーが登場するはず。そのときは、作品自体のデザインや素材の魅力だけでなく、ハイジュエリーのもつ意味や、背景を感じ取ることができたら、もっと着こなしを楽しめるのではないでしょうか。そんな想像を巡らせながら、のびやかな気持ちで、ハイジュエリーと向き合っていただけたらと思うのです。
※この特集に登場するジュエリーは、過去のPreciousに掲載した記事からの転載のため、現在では購入できないものも含まれています。ブランドへのお問い合わせはご遠慮ください。
※文中の表記はPT=プラチナ、YG=イエローゴールド、WG=ホワイトゴールド、RG=ローズゴールド、PG=ピンクゴールドを表します。
- PHOTO :
- 戸田嘉昭(パイルドライバー)
- COOPERATION :
- 福田詞子(英国宝石学協会 FGA)
- EDIT&WRITING :
- 湯口かおり、古里典子(Precious)