街なかからビジネス文書まで、いたるところで見かける「ご注意ください」というフレーズ。現代に生きる私たちは、さまざまなモノ・コトに注意して生きていかなくてはなりません。このフレーズをあまりに頻発しすぎて効果が薄れる…といった事態を避けるためにも、ビジネス文書では効果的に使用したいものです。本日は、そんな「ご注意ください」のビジネスシーンでの正しい使い方をチェックしましょう。

【目次】

「ご注意ください」に注目してもらうには?
「ご注意ください」に注目してもらうには?

【ビジネスでもよく使う「ご注意ください」の「意味」】

注意を促す場面で使われる「ご注意ください」のフレーズは、駅や電車の中、スーパーや飲食店、劇場やイベント会場など、日常のいたるところで目にします。もちろんビジネスシーンでも。しかし、意外にも使い方には注意が必要! まずはフレーズを分解してその意味を見てみましょう。

■「ご」「注意」「ください」

「ご注意ください」は3つの単語で構成されています。『デジタル大辞泉』によると、「注意」には下記の4つの意味が。

1. 気をつけること。気をくばること。「よく―して観察する」「日々健康に―する」】

2. 悪いことが起こらないように警戒すること。用心すること。「交通事故に―する」】

【3. 気をつけるように傍らから言うこと。忠告。「過ちを―する」】

【4. ある一つの対象を選択し、認知・明瞭化しようと意識を集中する心的活動。同時に、その他のものは抑制・排斥される】

日常的に目にし、ビジネスシーンでも使われる「注意」の意味は、1と2の「気をつけること」「気をくばること」「用心すること」ですね。

「注意」の前に接頭語の「ご」を付け、「くれる」の尊敬語「くださる」を命令形にした「ください」で結んだものが「ご注意ください」。相手や第三者に、やんわりと注意を促すときに便利に使えるフレーズですが、実は命令形なのです。


【「ご注意ください」のビジネス例文5選】

「ご注意ください」は文法的には命令形ではあるものの、丁寧な言い回しの尊敬表現ですからビジネスでも使用可能です。ビジネスでそのまま使える例文をご紹介しましょう。

■1:「資料の取り扱いには十分ご注意くださいますようお願いいたします」

■2:「納品につきまして、以下の点にご注意いただければと存じます」

■3:「十分にご確認いただき、人的ミスが発生しないようご注意くださいませ」

■4:「ここ数日、弊社を装った不審メールが横行しておりますので、ご注意ください」

■5:「URLに×××が入っているアカウントはなりすましです。ご注意ください」

ただし、かなり目上の人に「ご注意ください」と注意を促すのは適切とは言えません。その場合は、次の「言い換え表現」を活用してください。


【目上の人にも使える「言い換え」表現5選】

「注意」の類語には「配慮」「留意」「用心」などが挙げられます。これらを使って、上記の例文を目上の相手やビジネスメールなどでも使える表現にしてみましょう。

■1:「資料の取り扱いにご配慮いただけますと幸いです」

■2:「納品につきまして、以下の点にご留意いただければと存じます」

■3:「十分にご確認のうえ、人的ミスが発生しないようご用心くださいませ」

■4:「ここ数日、弊社を装った不審メールが横行しておりますので、ご用心ください」

■5:「URLに×××が入っているアカウントはなりすましです。ご留意くださいますようお願いいたします」

「配慮」は心を配ったり心配したりすること、「用心」は「注意」と同じように心を配ったり気を付けること、「留意」はある物事に心をとどめて気を付けるという意味が。目上の相手にはこれらを使い、「お願いいたします」や「幸いです」なども用いるのが得策です。


【類似する「ご注意してください」や「ご注意なさってください」は正しい敬語?】

■「ご注意してください」はアウト!

「ご注意ください」のほかに、「ご注意してください」という表現を見かけることがありますが、これは日本語として間違い! 「ご〇〇する(してください)」という表現は謙譲語です。つまり、注意するのは第三者なので、相手がへりくだることになってしまう「ご注意してください」は間違い表現です。 

■「ご注意なさってください」はセーフ?

「ご注意なさってください」の「なさって」は「する」の尊敬表現ですから、さらに「ご」を付ける必要はありません。「注意なさってください」で十分です。

相手との関係性によって、向き不向きがあるという点も敬語表現の難しさ。しかし、使わなければいつまでたっても“敬語美人”にはなれません。慎重にかつ、思い切って使っていきましょう。

 

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本日は、丁寧な言い回しではあるものの、命令形である「ご注意ください」に注目しました。類語や言い換え表現なども用いて、正しいビジネス敬語をさっと使えるようになりたいものですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂) :