ビジネスシーン、とくにメールや案内などの文書でよく使われる「高覧」という熟語。「ご高覧ください」「ご高覧いただければ幸いです」など、目にしたことがあるでしょう。「見る」という意味の敬語表現ですが、実際にはどんなシーンで誰に対して使用できるのかご存じですか? 本日は「高覧」のビジネス活用から言い換え表現などを紹介します。
【目次】
【上手に使うための「高覧」の基礎知識】
■「高覧」はなんと読む?
「高覧」と書いて「こうらん」と読みます。接頭語の「ご」を付けて「ご高覧(ごこうらん)」としたほうが、目にも耳にもなじみがあるでしょう。
■「高覧」の正しい意味
「高覧」とは、相手が見ることを敬って表す語。「見る」の尊敬語は「ご覧になる」ですが、それをさらに丁寧に表現したのが「ご高覧」です。
「見てください」→「ご覧ください」→「ご高覧ください」の順で尊敬表現が高まります。
■「高覧」は上司にも使える?
「高覧」は尊敬表現なので、目上の人や取引先など、自分より上位の相手に使う熟語です。同僚や部下など、同等以下の相手には使用しません。
“上位だけど身内”という自分の上司に「ご高覧ください」では、慇懃無礼な言い回しに感じられてしまう場合も。上司には「ご覧ください」で十分です。
【文書で、口頭で、リアルに使える「例文」7選】
それでは、実際に使用するシーンを想定した例文を見てみましょう。■1~4は見てほしいときに、■5~7は見てもらったことへのお礼文です。
■1:「お送りしました資料をご高覧賜りますよう、何卒よろしくお願いいたします」
■2:「見積書を高覧のうえ、ご検討くださいますようお願い申し上げます」
■3:「当社ホームページの『よくある質問』をご高覧いただければ幸いです」
■4:「職務経歴につきましては、履歴書に詳細を記しましたのでご高覧いただけますようお願いいたします」
■5:「ご多用にもかかわらず、ご高覧いただきありがとうございました」
■6:「ご高覧賜りました皆さまに、心より感謝申し上げます」
■7:「本日はご高覧を賜り、大変光栄に存じます」
このように、「ご高覧」には「賜る」や「いただく」を接続するのが一般的。また■1~4のようにお願いする場合、文書は「ご高覧」でOKですが、口頭では堅苦しさも。その際は「ご覧ください」が適切でしょう。■5~7の感謝の辞の場合は、文書でも口頭でも違和感なく使えます。
【「ご高覧」の類語、返答フレーズもチェック!】
ビジネスシーンで「ご高覧」を使用する際、下記の単語で言い換えることができます。
■ご清覧 ■お目通し ■ご一読 ■ご笑覧
「ご清覧」は「ご高覧」とそっくり入れ換えてOK! 「お目通し」や「ご一読」は「ご高覧」より柔らかな言い回しです。気心の知れた取引先へのメールなら、「ご高覧」より気持ちのよい敬語表現といえるでしょう。「ご笑覧」は、「ご笑納」や「ご笑読」同様、へりくだった表現です。
「ご高覧」と似ているけれど実は意味が異なる「ご査収」は、「受け取って確認する」という意味も含むため、請求書や日程表など、確認が必要な書類などに対して使用します。特に詳細な確認が必要ない場合は、「ご高覧」や「ご清覧」を使用しましょう。
■「ご高覧ください」に対する「返答フレーズ」
「ご高覧ください」「ご高覧賜りますと幸いです」などに対する返答例を、「拝見」「拝受」「拝読」を使用してご紹介します。
・至急拝見してご連絡申し上げます。
・お見積書、確かに拝受しました。
・楽しみに拝読いたします。
「拝見」「拝受」「拝読」は謙譲語なので「させていただく」を使用するのは間違い! 謙譲語と謙譲表現で二重敬語になるからです。「拝見させていただきます」はよく見かけるフレーズですが、謙譲表現がダブらない「拝見します」もしくは「拝見いたします」が正解です。
【「ご高覧」使用上の注意点まとめ】
最後に、ビジネス文書で不可欠ともいえる「高覧」という熟語について、使用上の注意点をまとめます。
■1:「【ご+高覧+賜る(いただく)】を基本にアレンジ」
■2:「取引先やお客さまなど、上位の相手に使用」
■3:「上司など身内の上位者には使用しない」
■4:「お願いや依頼の意味での使用は文書で」
■5:「謝辞で使用する場合は文書・口頭、どちらも使用可」
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本日は、相手を敬って表現した「高覧」について、使い方や注意点を見てきました。「ご高覧」は1対1の会話ではあまり使用しませんが、文書では使用頻度の高いワード。積極的に用いて“敬語の達人”を目指しましょう!
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂) :