「ご入用のものがございましたらお申し付けください」といったフレーズは、オン・オフどちらでも目にしたり聞いたりしますよね。今日は日常生活でも使われる「ご入用」について、ビジネス利用に特化して見ていきます。実は間違いやすい熟語でもあるので、正しい敬語表現もしっかり学びましょう。
【目次】
【まずは「入用」の基礎をしっかりチェック!】
■「入用」を正しく読みましょう
「入用」は、実は「いりよう」とも「にゅうよう」とも読むことができ、意味も変わりません。口語では「いりよう」と発音するのが 一般的。「ごにゅうようでしたらおっしゃってください」と聞かれたら、なんのことだかわかりませんよね。
敬語は、訓読みには「お」を、音読みには「ご」を付けるという原則があります。そのルールに従えば、「いりよう」は訓読みなので「お」を付けて「お入用」とすべきですが、「ご入用」が浸透しているため例外的に認められているというわけです。
■「入用」の3種類の意味
では、「入用」の意味を確認しましょう。 『デジタル大辞泉』には下記の3つの説明があります。
【1 必要であること。また、そのさま】
【2 必要な費用。入費。いりめ】
【3 大切なこと。重要】
このように「入用」は、「ある事柄に必要なものやこと」や「大切なこと」、また「費用」を示す熟語です。 「ご入用」は、相手に必要なものがないか尋ねる際に、接頭語を付けて丁寧な言い回しにしたもの。ビジネス例ではありませんが、「月末までに入用だ」や「引っ越しは何かとご入用ですね」など、「入用」は主に金銭を指す場合にも使用します。
■「入用」「入り用」どっちが正解?
日本語としては「どちらも正解」です。「入り用」のほうが間違いなく「いりよう」と読めますが、送り仮名は省く傾向にあります。「入用」としたほうが、文章がすっきり見えてこなれた感じがするものです。
【「ご入用」は誰に使える? 正しいビジネス例文】
■1:「ご依頼の件、いつまでにご入用でしょうか?」
■2:「他にご入用のものがございましたらお申し付けください」
■3:「製品サンプルを用意してございますので、ご入用でしたらお使いください」
■4:「明細書はご入用ですか?」
必要なものの有無や期限を尋ねる際に使用する「ご入用」は、敬語表現ですから目上の人や取引先など、自分より上位の相手に対して使用します。
同僚や部下、後輩、またチームの仲間などといった相手には「入用」ではなく、「明細書は必要ですか?」というように「必要」を使います。
【「ご入用」の「類語・言い換え」と「間違いやすい使用例」】
「ご入用」の代わりに使える類語・言い換え表現と、NGな使用例をご紹介します。いずれも似たような熟語なので注意が必要です。
■「類語・置き換えOK」3ワード
〇 ご入用の品を用意いたします = ご所望の品を用意いたします
「所望(しょもう)」は、ある物を欲しがったり、こうしてほしいと望むこと。
〇 ご入用がありましたらおうかがいします = ご要望がありましたらおうかがいします
「要望(ようぼう)」は、物事の実現を強く求める際に使用します。
〇 ご入用でしたら用意いたします = ご必要に応じて用意いたします
「ご入用」と「ご必要」の違いは、ストレートな表現か否か、ということ。例えば必要な金額を尋ねる際に、「どのくらい必要ですか?」はストレート、「どのくらいご入用ですか?」はやんわりした表現です。日本人は金銭に関して直接的な表現を避ける傾向にあるため、ビジネスシーンにおいても「ご入用」が好まれます。
■間違いやすいのは「ご利用」と「ご用命」
× (資料の)コピーはご入用ですか? ≠ コピー(機)をご利用になりますか?
「入用」と語感が似ている「利用」は、最も間違いやすい熟語でしょう。上記のフレーズも文章としては間違っていませんが、右は「資料のコピーを取りますか?」と行動を尋ねているので、「ご入用」を使った「資料をコピーしたものが必要かどうか」の代わりにはなりません。
また、「ご入用」と間違いやすいのが「ご用命」です。「用命」は、「言いつけ」や「注文」のこと。「ご用命ください」は「どうぞ言いつけてください」という意味になるので、「ご入用」とは異なります。むしろ、「ご入用のものがありましたらご用命ください」など、「ご入用」と「ご用命」は併用可能と覚えておくといいでしょう。
【「入用」の反対語は「不用」「不要」「無用」どれ?】
最後に反対語や返答もチェックしてみましょう。
「不用」「不要」「無用」、いずれも「必要がないもの」「いらないもの」を意味しますので、すべて「入用」の反対語です。「ご入用ですか?」と尋ねられた際に用いることができますが、ビジネスシーンでは少々直接的な表現ですね。
「ご入用ですか?」に「いらない」と返答するなら、「結構です」や「お気遣いなく」が大人の返しでしょう。
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本日は、接客業やサービス業、あるいは営業職などで、相手の意向をうかがう際によく使われる「ご入用」について学びました。敬語に慣れることはとても重要です。毎日ひとつずつでも…明日もしっかりチェックしてください!
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- Precious.jp編集部
- 参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語ネイティブになろう!!』(くろしお出版) /『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版) :