案内文や仕事相手からのメールなどで、「お知りおきください」というフレーズを目にしたことはありませんか? 何気なく受け取っていたかもしれませんが、「お知りおき」っていったいどこから発生した言葉? 日本語として正しいのでしょうか? 敬語や丁寧な言い回しになっている? 今日は、この「お知りおきください」というフレーズを、実際に使いそうなビジネスシーンを例に見ていきましょう。自信をもって使える言い換え表現もご紹介します。

【目次】

「お知りおき」という日本語は正しい?
「お知りおき」という日本語は正しい?

【「お知りおきください」は敬語なの? 「意味」と「基礎知識」】

まずは、「お知りおきください」について分析してみましょう。

■「お知りおきください」は正しい日本語です

「お知りおきください」を分解すると、「お・知りおき・ください」となります。「知りおく」はこの表現以外で使う機会がないようにも感じ、正しい日本語かどうかも不安…。しかし『デジタル大辞泉』に【知って覚えておく。了承しておく】と記載があるように、立派な日本語なのです。漢字で書くと「知り置く」となります。単純に「知る」ということではなく、「心に留める」や「覚えておく」といった継続の意味を含んでいます。

■「お知りおきください」は目上の人にも使える敬語?

「お知りおきください」は、「覚えておいてください」を柔らかな表現で丁寧にお願いしている敬語です。しかし、一方的な印象や上から目線と感じる人も少なくないようです。不特定多数の利用者などに向けてはOKですが、取引先や目上の人など特定の相手への使用はケースバイケースと心得ておきましょう。相手との関係性などを考慮しながら、次の使用例を参考にしてみてください。


【ビジネスではこんなシーンで…「例文」5選】 

大切な要件に対して「念押し」や「再確認」はとても重要です。しかし、取引先や目上の人に何度も同じことを伝えるのは、信用していないようで失礼にあたることも。そんなとき「お知りおきください」という表現が役に立つはずです。例文の下の( )に、“「お知りおきください」使用時の内なる声”を記しました。はっきり言わないことで角が立たずスムースに運ぶこともあるもの。それが通じる相手かどうか見極めることも大切です。

■1:「次回の会議には弊社社長も臨席しますことをお知りおきください」

(上役が来るので心づもりをしておいてください)

■2:「ご提出の最終締め切りは●月×日の△時ということをお知りおきください」  

(●月×日の△時以降は受け付けません

■3:「開催最終日は1時間早く終了することをお知りおきいただけますと幸いです」

(ギリギリの時間に来てもらっても困ります

■4:「この会議室は18時に施錠されますことをお知りおきください」

時間内に終わらせたい…)

■5:「発注決定後のキャンセルや変更には違約金が発生しますことをお知りおきください」

(誤発注には十分ご注意ください!


【似た意味で使える「言い換え」表現で印象アップ!】  

「お知りおきください」をもう少しストレートに、けれど柔らかなニュアンスのままで言い換えた表現もご紹介してきましょう。

■1:「ご承知いただけますようお願いいたします」

■2:「お含みおきいただけますと幸いです」 

■3:「どうぞご理解くださいませ」

■4:「あらかじめ心づもりをお願いいたします」

■5:「お忘れなきよう願います」

■6:「お間違えないようご注意ください」

■7:「事前にお伝えいたします」

「覚えておいて」や「忘れないで」といったストレートな表現より、「お知りおきください」のほうが物腰柔らか。よい関係性が築かれている間柄なら、躊躇なく使ってOKでしょう。

本日の「お知りおきください」で見てきたように、相手との関係性や時々の状況を的確に判断し、その場にふさわしい言い回しや敬語表現を上手に使いたいものですね。明日もまたひとつ、学びましょう!

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂) :