ビジネスシーンにおいて、相手の期待に添えそうにないときや、要望をやんわりとお断りしたいときに使用する「ご容赦ください」という言葉。相手に対し申し訳ないという気持ちを表しつつ、理解を求めるときに使う言葉です。ただし、使い方次第では、相手を不快な気持ちにさせてしまうことも。「ご容赦ください」を正しく理解して、先方に誠意ある姿勢を示しましょう。

【目次】

お断りしなければならないシーンで「生憎ですが…」は気遣いの言葉。
誠意ある「ご容赦ください」は「許してください」と同じ意味?

【「ご容赦ください」の正しい「意味」は?】

「ご容赦ください」は、行為の主体を立てる接頭語の「ご」+「容赦」+動詞「くれ」の尊敬語「くださる」から構成された言葉です。

「容赦」には【ゆるすこと。大目に見ること】という意味のほかに、【ひかえめにすること。遠慮すること。手加減すること】といった意味もあります。この場合は、「容赦なく追求する」のように使われます。

「ご容赦ください」は、「許してください」を、より丁寧にした正しい敬語表現です。相手に詫びる気持ちを表しつつ、理解を求めるときに使われます。ただし、【大目に見る】という意味があることからわかるように、明らかにこちらに非がある過失や深刻な失敗に対する、心からの謝罪の意味合いで使うのは不適切です。相手に「ミスを軽く見ているのでは?」という懸念を抱かせ、火に油を注ぐ結果になりかねません。注意しましょう。


【ビジネスでよく使われるシーンは?】

「ご容赦ください」を直訳すれば、「お許しください」という意味になります。詫びる気持ちを表すフレーズですが、ビジネスシーンにおいて「ご容赦ください」が主に用いられるのは、相手からなんらかの要求があり、ストレートに「無理です」とは断れないとき。「どうかご容赦ください」「何卒ご容赦いただきたく存じます」などと使われることが多いようです。

あるいは、先方からなんらかの要望が出されると予測されるときにも、「あなた(御社)のご希望・ご期待には応えることができませんが、致し方ないことですので、(申し訳ありませんが)ご理解・ご協力ください」といった意味で使われます。この場合、言外に「お気持ちはわかるのですが、会社の規則ですので…」といった気持ちをにじませ、予防線を張る意図で使われます。

例えば、「当日は混雑が予想されます。駐車場には数に限りがございますので、お車でのお越しはご容赦くださいませ」と事前に断りを入れておけば、何か不手際(この場合は駐車場の数が足りない)が起こったとしても、こちらに対する非難を軽減することができるのです。

■1:申し訳ないという気持ちを表すとき

■2:期待に沿えそうにないとき

■3:やんわりと拒絶したいとき

■4:事前に相手の行動を止めたいとき

■5:出過ぎたまねになりそうなとき


【5つのシーンに応じた使い方がわかる「例文」5選】

上記、5つのシーンに応じた例文をご紹介します。

「ください」はくれる」の尊敬語「くださる」を命令形にしたものです。正しい敬語表現ではありますが、強制のニュアンスを感じる人もいるようですので、特に目上の方に対しては、「何卒〜」「どうか」「どうぞ」と添える、あるいは語尾に丁寧の助動詞「ます」の命令形「ませ」を付けて、相手への敬意を表しましょう。

■1:「何卒ご容赦くださいますようお願いいたします」

■2:「不測のトラブルの際には悪しからずご容赦ください」

■3:「生憎ですが、お貸出しできる商品はございません。ご容赦くださいませ」

■4:「時世もございますので、不急の会議招集はご容赦ください」

■5:「行き違いがございましたら、ご容赦ください」


【「失礼の段、ご容赦ください」の意味は?どう使う?】

「失礼の段」の「段」は、【そういう場合】という意味です。つまり「失礼の段」とは、「失礼な行為をしてしまった場合は」、または「失礼な発言をしてしまった場合には」といった意味になります。

「失礼の段、ご容赦ください」とは、先方に対し、失礼な行為や発言があると予測できるときに、それをあらかじめ申告し、謝罪して理解を求める際に使われる表現です。「失礼がございましたら」という表現を改まった言い方にすることで、相手に対する敬意を高めた言葉が「失礼の段」です。手紙や文書をはじめ、メールなど、主に「書き言葉」として活用されます。

■「至らぬ点も多々あるかと存じます。失礼の段、ご容赦ください」


【似た意味で使える「類語」「言い換え表現」】

前述の通り、「ご容赦ください』は、「あなた(御社)のご希望・ご期待には応えることができませんが、致し方ないことですので、ご理解・ご協力ください」という意味で使われることが多い言葉です。そのため、言い換え表現もそういった意味の言葉となります。

ただし、「ご容赦ください」には非礼を詫びるニュアンスが含まれているのに対し、「ご理解ください」や「ご了承ください」には、謝罪の意味は含まれていませんので注意が必要です。「大変申し訳ございませんが」「恐縮ですが」といったクッション言葉を活用して、相手への敬意を表しましょう。あるいは「悪く思わないで欲しい」という意味の「あしからず」を使い、「あしからずご了承ください」と言い換えることもできます。

「海容(かいよう)」は耳慣れない言葉かもしれませんが、「海のように広い寛容な心で、相手の過ちや無礼などを許すこと」。主に手紙文で用いられます。

■お許しください  ■申し訳ございません  ■ご容赦願います 
■ご了承ください  ■ご理解ください    ■ご海容ください

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「ご容赦ください」は、相手の期待や要望に応えられないときに理解を求める、お詫びの言葉です。事前に予想される相手の行動を止めたいときも、リスクを避ける意図で使われます。上手に使えば、小さなトラブルを未然に防げるかもしれませんよ。活用してみてくださいね。ただし、心からの謝罪を表する言葉ではありませんので、あきらかに自分に非があるときや、目上の方に対しては、「申し訳ございません」「お詫び申し上げます」と伝えましょう。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂)/『大人なら知っておきたいモノの言い方サクッとノート』(永岡書店)/『これ一冊であとはいらない! 大人の語彙力大全」(中経の文庫) :