ビジネスのシーンでよく使われる「了承を得る」という言葉。「OKしていただきました!」くらいのニュアンスで、軽く使っていませんか? 実は「了承」には、「納得して承知、同意すること」という意味があります。先方は本当にあなたの話に「納得して同意」してくれたのでしょうか? 「了承を得る」を正しく使いこなして、円滑なコミュニケーションを目指しましょう!
【目次】
【「了承を得る」の意味は? 「承諾を得る」と同じ?】
■「意味」は?
『デジタル大辞泉』によれば、「了承」は、【事情をくんで納得すること。承知すること。承諾】とあります。つまり「了承」は、ある事柄を「知っている」だけではなく、「納得して承知、同意すること」を指します。「了承を得る」は、先方に「了承してもらう」こと。単に案件の内容を「知らせて理解してもらった」だけではなく、「こちらの事情や都合に納得し、同意してもらうこと」までが含まれた意味となります。
■「了解」「承諾」との違いは?
『デジタル大辞泉』で「了解」を調べると、【物事の内容や事情を理解して承認すること。了承】と出てきます。つまり「了承」と「了解」は、ほぼ同じ意味の言葉であることがわかります。相手の依頼や提案に対して「納得して同意」という意味であり、「了承」も「了解」も現代の敬語マナーでは目上の方に対しては使用しません。目上の方から、同僚や部下、後輩などに対して、「わかりました。いいですよ」といった「許可」のニュアンスで使われます。
「承諾」は、【相手の意見・希望・要求などを聞いて、受け入れること】。「了承」と同じような意味と思いがちですが、実は「承諾」はもうひとつ、少々重い意味合いももっています。「承諾」とは【法律で、申し込みに応じて契約を成立させる意思表示】。そのため、ビジネスシーンで「承諾を得る」とは、取引や契約等の手続きを認めるときに使われます。
【ビジネスやメールでそのまま使える「例文」5選】
「了承を得る」は、了承した本人がその場にいないときに使われることの多い表現です。例えば取引先に、上司の許可を得ていることを伝える際に使われます。反対に上司に対して、取引先から「納得・同意」してもらったことを報告する際にも使用することができます。
「了承を得る」という言葉自体は敬語表現ではありませんので、行為の主体に応じて適切な敬語表現にして使いましょう。
■1:「上司より了承を得たうえでご連絡しております」
■2:「この件への対応は関連部署の了承を得る必要があります」
上記1〜2のように、上司や関係部署など、身内の行為について話す場合は、敬語表現にせず、「了承を得る」とフラットな表現のまま用います。
■3:「すでに先方の了承を得たと認識しております」
■4:「見積もりの件、先方よりご了承いただきました」
1〜2とは異なり、3〜4では「了承」したのは取引先など外部の人。本人がその場にいないので、3のように「先方の了承を得た」と、フラットな言葉で伝えても間違いではありません。ただ、「了承」してもらったのはあくまで自分たちの事情や都合。「ご了承いただきました」と敬語表現にして、相手への敬意を表したいものです。
■5:「ご了承くださいますようお願いいたします」
取引先や目上の方に「了承」していただけるようお願いする際、「ご了承ください」という表現は、すでに決まった方針や案件を「受け入れてくださいね」と一方的に言われたように感じる方もいます。どうしても「事前にご理解・ご納得ください」という意志を伝えたい際には、「ご了承いただけますか?」といったへりくだった「依頼」のかたちで使用するか、「〜ますようお願いいたします」として、「了承を乞う」かたちで使うのがよいでしょう。
【似た意味で使える「類語」「言い換え」表現】
「了承」とは、【事情をくんで納得すること。承知すること。承諾】という意味です。取引先など外部の人の行為に使う場合は、敬語表現にする必要があります。これを踏まえて、言い換え表現も覚えておきましょう。
■ご納得いただきました ■ご承諾いただきました ■ご理解いただきました
■ご同意いただきました ■受諾いただきました
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「了承を得る」という言葉自体は、敬語表現ではありません。ですから、このフレーズをそのまま使用できるシーンはごく限られています。謙譲語など、敬意を示す言葉と組み合わせ、正しく使ってくださいね。
- TEXT :
- Precious.jp編集部
- 参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『とっさに使える敬語手帳』(新星出版社) :