ビジネスシーンだけでなく、日常でもよく使われる「デフォルト」という言葉。「デフォ」と略して使うことも多いですね。すでにおなじみすぎて、「いまさら意味を聞けない」単語のひとつではないでしょうか。実はこの言葉、使われる場面によって意味が大きく異なります。正しい意味を知って、自信をもって使いこなしてくださいね。

【目次】

「デフォルト」には複数の意味が!
「デフォルト」には複数の意味が!

【まずは「デフォルト」の「基礎知識」から】

■「デフォルト」を簡単に言うと…

「デフォルト」は、使われるシーンによって意味が異なる言葉です。使われ方を大きく分けると、主に4つ。

・スマートフォンやパソコン、ブラウザなどコンピュータ用語として……出荷されたときのままの「初期設定」の状態にあることを指す。

・金融・経済用語として……「債務不履行」。国や企業の財政事情が悪くなり、支払うべきお金がなくなった状態。企業がデフォルトになったら、倒産です。

・日常生活で(多くは「デフォ」と略される)……「標準装備、定番、いつも通り」

・スポーツに関して……「棄権、不参加、欠場」

どの意味で使われているのかは、会話の前後、文脈で判断しましょう。

■「英語」での使い方は変わる?

「デフォルト」はもともとの英語では[default]。【債務不履行、怠慢、義務の不履行、棄権、不出場、不足、初期設定】など、たくさんの意味をもちますが、いずれも負のイメージが強い言葉です。後述する「デフォ」として使われる「定番・いつも通り・素のまま」といった意味はありません。

■スマホやパソコンなどの「デフォルト設定」とは?

スマートフォンを購入して立ち上げた際、すでにメールやアドレス帳、地図やカメラなどのアプリが、標準仕様としてインストールされています。これらを指して「デフォルト設定」といいます。「デフォルト」には「設定」というニュアンスも含まれますので、「デフォルト」だけでも意味は通じます。

パソコンやスマートフォンにいろいろインストールしすぎて起動が遅くなってしまうなど、不具合が起きた際に、「デフォルトした」、つまり「工場出荷時の初期設定に戻した」などと使います。

■「テクニカルデフォルト」とは?

テクニカルデフォルト[technical default]とは、【資金的には支払い能力がありながら、他の条件から債務不履行(デフォルト)状態となること】を指します。格付け会社が認定を行うもので、経済の破綻などで支払い不能になる、本来の「デフォルト」とは意味が異なります。

■「略語」は「デフォ」

「デフォルト」の略語は「デフォ」。「ネットスラング」もしくは「若者言葉」と捉える人もいるようですが、日常生活やSNSでも広く使われています。ただし、特に若い世代の間では、「初期設定」などといった「デフォルト」本来の意味が転じて、若干違ったニュアンスで使われることも多いようです。

・「彼は待ち合わせに遅刻するのがデフォ」
・「ダイエットしたらリバウンドするまでがデフォ」

上記のように、「いつも通り」「定番」「素のまま」といった意味になります。メイクをしていない「すっぴん」や、レストランの定番メニューを指すことも。
また、あまり頻繁には使われませんが、「デフォルメ」を略して「デフォ」と使う人もいるようです。こちらはフランス語の「déformer」がルーツの言葉で、「対象を変形して表現すること」を意味します。「大げさに言う」といった意味でも使われ、「デフォルト」とはまったく違った意味になるので気をつけましょう。


【一般的なビジネスシーンで使われる「例文」3選】

では実際に使える例文で、「デフォルト」の意味を復習してみましょう。以下の3つは、「初期設定」「債務不履行」の意味で使われています。

■1:「このPCのデフォルトのブラウザは“Safari”ですが、“Google Chrome”に変更しました」

■2:「このPCはデフォルトのままだと使い勝手が悪い」

■3:「〇〇株式会社がデフォルトに陥ったとの報道があった」


【使われるシーンで意味が違う! その1:「インスタグラム」の場合】

インスタグラムの「デフォルト」は、自分がフォロー中のアカウントの並び順の初期状態を指します。どういう基準で並んでいるのかは非公開のようですが、並び替えは可能のようです。


【使われるシーンで意味が違う! その2:「ロシア関連」の場合】

国際経済で話題となる「デフォルト」は、主に国債の債務不履行のことを指します。ロシアのウクライナ侵攻に対する経済制裁のひとつとして、外貨資産の凍結があります。ロシアは潤沢な外貨準備をもっているため、通常であればデフォルトを起こすとは考えられないのですが、現在外貨準備のほぼ半分が凍結されているため、デフォルト懸念が高まっていたのです。これが前述した「テクニカルデフォルト」です。そしてついに『日本経済新聞』が、「ロシア国債『デフォルトに該当』 ムーディーズが見解」という記事を報じました(2022年6月28日)。

※編集部注/ロシアは不当な経済制裁の影響だとし、デフォルトを認めていません。今後の情勢については注視が必要です。

【使われるシーンで意味が違う! その3:「ネットショッピング」の場合】

ネットショッピングでは、例えば買い物して「いつも届けてもらう住所」のことを「デフォルトのアドレス」といいます。メインの支払方法となるクレジットカードは「デフォルトのカード」。Amazonの配達のデフォルトは「玄関への置き配(指定された場所に商品を置いていくこと)」。つまり、自分で最初に登録した情報や、ショッピングサイトが設定した規定のことです。

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日常でも頻繁に使われる「デフォルト」は、超訳すると「まっさらな状態」のことと言えます。こう覚えておくと「初期設定」「債務不履行(→倒産)」「いつも通り」などの意味が連想しやすいかもしれません。さまざまな意味合いで使われる言葉なので、意思の疎通に勘違いが生まれないように、自信がもてないときは「デフォルト? つまり初期設定ですね!」などと、さりげなく、でもしっかりと意味の共有をはかりましょう。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)/ 『外来語新語辞典』(成美堂出版)/『一生分の教養が身につく! 大人の語彙力強化ノート』(宝島社)/『これ1冊であとはいらない! 大人の語彙力大全』(中経の文庫)/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP)/『イミダス』(集英社) :