新型コロナウィルスの流行で、一気にメジャーな言葉として広がった「エビデンス」という単語。信憑性を確認する際に「エビデンスを示してください」のように使われますが、正しく意味を理解していますか?業界によって、少々異なる意味で使われていますので、その点でも注意が必要な言葉です。今回は「エビデンス」の意味や、業界ごとの使い方を例文と共にご紹介します。

【目次】

「エビデンス」とはビジネスシーンには欠かせない「裏付け」のこと。
「エビデンス」とはビジネスシーンには欠かせない「裏付け」のこと。

【まずは「エビデンス」の基礎知識から】

■「意味」は?簡単に言うと?

「エビデンス[evidence]」は、「証拠、確証」を意味する英語です。一般的なビジネスシーンでは、「裏付け」の意味で使用されることが多く、「今回のシステム開発に関するエビデンス(=証拠書類)を出してください」のように使われます。
また、会議の議事録やメールなど、書面で残すことを「エビデンスを残す」と表現します。
口頭で確認しただけのやり取りを、ミスが発覚してから後悔した経験はありませんか? ビジネスシーンにおけるエビデンスの取り忘れは、扱う数字が大きな企業同士の取引ほど、大きな損失につながりかねません。「文書による証拠=エビデンス」の記録は、ビジネス上、とても大切な習慣のひとつです

■医療、IT業界、金融…業界・分野によって微妙に意味が異なる

「エビデンス」は、業界によって微妙に異なる意味合いで使われています。
例えば、医療の現場では、臨床結果などの科学的根拠、その治療法がよいとされる証拠、根拠となる論文や実験データなどを指します。
IT業界では開発したシステムの動作検証が問題なく完了したことを示す、システム稼働中のスクリーンショットやデータファイルのことです。
金融・不動産業界では、預貯金や保険、株式などの金融資産や、源泉徴収票、確定申告書など、所得を証明する書類、および身分証明書を「エビデンス」と呼びます。また、海外への送金の際には、「送金目的」や「送金額の根拠」を記した書類のことを「エビデンス」と呼ぶこともあります。

■EBMって何?

ビジネスシーンでは、根拠に基づいた判断を「エビデンスベース(あるいはエビデンスベースド)」と呼びます。例えば医療業界では、「根拠に基づいた医療」を意味する「EBM[Evidence-Based Medicine]」というアルファベット略語が使われます。


【ビジネスシーンや業界別の使い方がわかる「例文]6選】

では具体的に、「エビデンス」がどのように使われているのか、例文でチェックしましょう。

■1〈一般的なビジネスシーン〉:「今日の会議のエビデンスをいただけますか」

会議の議事録の提出を求める際の表現です。

■2〈一般的なビジネスシーン〉:「今回の契約に関するエビデンスを見せてください」

この場合の「エビデンス」は、契約書やそれに関連する見積書などの書類を指します。

■3〈一般的なビジネスシーン〉:「訪問先には今回のエビデンスが残っているはずです」

営業職では客先訪問の場面で、名刺交換などの「訪問した形跡」を表します。

■4〈医療業界〉:「この治療法に関するエビデンスを示してください」

この表現では、その治療法の根拠となる論文や実験データなどを求めていることになります。

■5〈IT業界〉:「今回のシステム開発に関するエビデンス、すなわち証拠書類を出してください」

最終検証において、システムが正常に稼働していることを示すデータの提出を求めています。

■6〈金融・不動産業界〉:「ローン審査にあっては、必要なエビデンスの提出が求められます」

各種ローンや不動産の売買、賃貸物件への入居審査の際には、本人確認書類や通帳、金融資産や確定申告書など、収入を証明できる書類等を指して「エビデンス」が使われます。


【「類語」は?似た意味をもつビジネス用語】

「エビデンス」と似た意味をもつビジネス用語はいくつかあります。
「ソース」は「出どころ、みなもと、出典」という意味で、日本語では主に情報源を指すことが多く、「エビデンス」のように「(確証が得られた)根拠」とは異なりますので注意してください。
「プルーフ」は「証拠。証明」の意味で「エビデンス」と同じように使えますが、認知度は低いため、「エビデンス」が一般的です。
「ファクト」は「実際にあったこと。事実」
。「エビデンス」との違いとしては、「新型コロナウイルスの治療にAという薬が使われている」のが「ファクト」。その「エビデンス」が実験データや論文になります。つまり「ファクト(事実)」を補足するのが「エビデンス(証拠)」です。

■ソース[source] ■プルーフ[proof] ■ファクト[fact]

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「エビデンス」は使用される業界によって、また使用するシーンによって、微妙に意味が異なる要注意ワードです。ときにはスマホによる録音がパワハラの「エビデンス」になることも。また、普段から使い慣れない人にとっては意味を捉えにくく、場合によっては嫌味に聞こえてしまう可能性のある言葉ですから、相手や状況に応じて、使うべきか否か適切に判断しましょう。

この記事の執筆者
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