「コンセンサスを取る」というフレーズを、使ったり言われたりしたこと、ありませんか? ビジネスや政治の世界でもよく使われているので、「なんとなくわかる」という人が多いかもしれませんね。単語としての意味と、仕事での使い方や意味など、それぞれしっかり把握しておきたいもの。「デキる社会人」としての「コンセンサス」の使い方を身に付けましょう。

【目次】

「コンセンサスを取る」というフレーズで覚えましょう
「コンセンサスを取る」というフレーズで覚えましょう

【「コンセンサス」をひと言でいうと…基礎知識】 

■「コンセンサス」は「合意」です

「コンセンサス[consensus]」は、「意見の一致」や「合意」を意味する英単語。「社内のコンセンサスを得る」といったら「社内の合意を得る」ということで、物事を決定する際などに合意を得るときに「コンセンサスを得る」というように使います。簡単にいえば「賛成を得る」ということですね。

ただし、多数決のように賛成人数が多ければよいのではなく、基本的には全員の承認を得ることを指します。

ちなみに「コンセンサスを得る」を、英語では[gain (win/reach) a consensus]といいます。

■「コンセンサス」は「得る?」「取る?」「図る?」

「社内のコンセンサスを得て(が取れて)おりませんので、本日決定に至ることはできかねます」

「先方のコンセンサスは取れて(得て)いるんだろうね」

「これは事前にコンセンサスを取って(得て)おかないとまずい案件だな」

いずれも「取る」でも「得る」でも正解。ビジネス用語の解説書などでは「コンセンサスを得る」「コンセンサスを取る」のどちらも使われていて、明確な違いは見受けられません。また「コンセンサスを図る」という言い方もあり、日本語の表現の豊かさが見てとれます。

■要注意! ビジネスシーンで使われるときの「意味」

「コンセンサスを取る」というフレーズが「全員の合意を得る」ということだとわかりました。ここで注意したいのが、日本人気質がもたらす“ビジネスシーンでの意味”です。

民主的な社会では話し合いをベースに物事は決められていきます。しかし、日本人は話し合いや議論がやや苦手。大勢が集まる場で発言したり、自分の意見をはっきり言ったりするのが得意ではないとされていますね。そこで登場したのが、会議や話し合いが一向に進まない…ということを避けるための裏ワザ「根回し」なのです。

「根回し」は、事前に個別の打ち合わせや説得を試みて、あらかじめ合意を得ておくこと。上司から「難しい案件だから、事前にコンセンサスを取っておくように」と言われたら、「こっちの意見に賛成するよう、根回しよろしく!」という意味なのです。

「根回し」というと「裏取引」や「密談」などダークなイメージがあるかもしれませんが、日本社会の「事前合意」は賢い知恵ですね。


【一般的な「コンセンサス」の使い方】

それでは、ビジネスシーンでの「コンセンサス」の使い方を見てみましょう。医療や金融の世界では少々特殊な使い方や意味をもちますが、それは後の章で紹介します。

■1:「その件は制作部とのコンセンサスも取れていますので、予定通りの進行で問題ありません」

■2:「新プロジェクトは、社内各部署のコンセンサスを得てから公表すべきだ」

■3:「大幅な変更は、クライアントに報告する前に関係各位のコンセンサスを図っておかなければならない」


【「コンセンサス」の「同義語」「類語」「言い換え」】

私たちのビジネスシーンで使われる「コンセンサス」は英語から来たカタカナ語。同じ意味で言い換えるなら、下記の単語やフレーズが使えます。

■合意 ■同意 ■総意 ■一致 ■同心 ■共通認識 ■共通理解 
■意識のシェア ■ビジョンのシェア

「同意」を表す英語には「アグリーメント[agreement]」があります。ただし、「アグリーメント」は例えば多数決などで決める場合の単なる「同意」にも使えるのに対し、「コンセンサス」は、話し合い等を経た相互の承認が必要となるという違いがあります。


【「医療」「金融」業界の「特殊なコンセンサス」】

医療業界や金融業界では「コンセンサス」をどう使っているのでしょう。

■「医療の現場」での「コンセンサス」

「医学的コンセンサス[medical consensus]」とは、議論が必要な事象に対し、専門家集団が化学的な知識に基づいて公表する公式声明。発表される合意声明 は「コンセンサスステートメント[consensus statement] 」と呼ばれます。「インフォームドコンセント[informed consent]」というフレーズを聞いたことがあるでしょう。これは「十分な情報を得た(伝えられた)うえでの患者と医師のコンセンサス」のことをいいます。

■「金融・投資の現場」での「コンセンサス」

金融マーケットの共通認識を知るために、企業の収益や株価動向、経済予測について、複数のアナリストやエコノミストなどの見通しを調査し、予測値を集計して平均化したものを「市場コンセンサス[market consensus]」と呼びます。「コンセンサス調査」や「コンセンサス予想」なども使われます。


【「コンセンサス」の関連用語】

最後に知っておきたい「コンセンサス」の関連用語をいくつかご紹介します。

・コンセンサスゲーム:課題に対してチームで話し合い、意志決定をするゲームのこと。複数人が合意に至るまでの難しさを体感することが目的で、ビジネス研修などのグループワークで利用されています。

・コンセンサス方式:会議などでの「コンセンサス」は全会一致の合意を指しますが、このように反対意見のない状態で決定する会議方式を「コンセンサス方式」といいます。

・コンセンサスアルゴリズム:「ビットコイン」のような仮想通貨の業界で使われている、取引の整合性を担保するアルゴリズム、またはルールのこと。

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「コンセンサスを取る」というフレーズは耳慣れていても、「コンセンサス」という単語が業界によってさまざまに使われていることは知らなかった、という人もいるのでは? 外来語によるカタカナビジネス用語は、日本のビジネスシーンで変化や進化を続けることも。おちおちしていられませんね、しっかり学んでいきましょう!

この記事の執筆者
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参考資料:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『すっきりわかる! 超訳「カタカナ語」事典』(PHP文庫)/『ビジネス用語図鑑』(WAVE出版)/『情報・知識imdas』(集英社)/『いまさら聞けない ビジネス用語BOOK』(成美堂出版)/『使い方のわかる 類語例解辞典』(小学館) :