【目次】

元麻布ってどこにあるの?「場所」

前回紹介した南麻布と並び、港区の「麻布」とつく地名の中で高級住宅街として人気の高いエリアが元麻布。今回は、ここ、元麻布についてご紹介します。元麻布は六本木ヒルズのちょうど南側あたり、麻布十番駅の東側に位置しています。

元麻布の「最寄駅」

麻布十番駅には、都営地下鉄大江戸線と東京メトロ南北線が通っています。駅前には布十番商店街があり、とても賑やかな街並みです。麻布十番駅のほかにも、六本木駅や広尾駅も徒歩圏内です。バス路線も充実していて、麻布十番駅からは、渋谷、目黒、五反田、新橋、東京タワー方面行きの都バスが出ています。

麻布十番駅。東京メトロの南北線と、都営地下鉄の大江戸線が乗り入れています。

元麻布は、元麻布1丁目から3丁目のエリアの高級住宅街です。南麻布と同じく高台にあり、坂道も多い場所。そして、江戸時代には大名屋敷が多数ありました。ですが、南麻布の緑の多いイメージとは少し異なる印象です。

元麻布の「地図」

南麻布との「違い」は?

幕末には初代アメリカ公使館となった善光寺。福沢諭吉など多くの偉人が訪れたといいます。
幕末には初代アメリカ公使館となった麻布山善福寺。福沢諭吉など多くの偉人が訪れたといいます。

台地と谷地の境界に位置するこのエリアには、神社仏閣が多く建てられました。だからでしょうか、下町の雰囲気も漂い、アットホームな印象の街並みです。

元麻布には、麻布山善福寺、大法寺、長伝寺、賢崇寺、安全寺、麻布氷川神社、本光寺など神社仏閣が点在しています。ぽっかりと窪んだ谷間にある本光寺周辺には、今でも古くからの街並みが残っているのだとか。また、麻布氷川神社はアニメ“美少女戦士セーラームーン”の聖地としても知られています。

元麻布の「歴史」

元麻布の「由来」とは?

麻布の歴史はとても古く、永禄2年(1559年)の戦国時代、小田原北条氏の軍役賦課台帳「小田原衆所領役帳」にも「阿佐布」と出てくるのだとか。「麻布」という漢字に決まったのは、明暦元年(1655年〜)です。

元麻布の「坂の歴史」

狸坂から一本松坂向かう。高台にあるこの辺りには高級マンションが立ち並びます。

元麻布にも南麻布と同じく、多くの有名な坂があります。中でも有名なのが、源経基にまつわる伝説のある「一本松坂」でしょうか。この坂の南側には、古来から植え継がれているという「麻布一本松」があります。「江戸名所図解」などにも立派な一本松が登場しており、とても歴史が古いことがわかります。当時、この松は麻布台地のランドマークの役割をしていたようです。

「麻布一本松」は、麻布台地の尾根部を通る古い道が4本に分かれる分岐点に立っています。東に降る道を「大黒坂」、麻布十番商店街へと降る道を「暗闇坂」、西に下る道を「狸坂」と呼び、急坂です。それぞれの歴史を見ていきましょう。

◆一本松坂:源経基などに関する伝説を持つ。古来、植えつがれている一本松が、坂の南側にある。

◆大黒坂:坂の中腹北側に大黒天をまつる大法寺があったため

◆暗黒坂:樹木が暗いほどおい茂っていたことからこの名がついた

◆狸坂:人をばかすたぬきが出没したという

麻布山善福寺には麻布七不思議にも登場する「柳の井戸」があります。「柳の井戸」は弘法大師が手に持った杖を突き立てたところ水が湧き出たと伝えられる「井戸」です。

一本松坂近辺には高級マンションが立ち並びます。近くには神社仏閣が数多くあり、麻布山善福寺もそのひとつ。麻布山善福寺は都内では、金竜山浅草寺につぐ最古の寺院といわれています。かつては戦国大名にも匹敵する勢力を持っていたといわれ、ここに湧水が出たので古くから住居の好適地とされていて、寺院も維持されたそう。

安政6年(1859年)には最初のアメリカ公使館が麻布山善福寺に置かれました。しかし、攘夷派浪士による放火で書院などが焼失。それでも、日米の友好の絆を深め、明治8年(1875年)までアメリカ合衆国公使館として使用されました。

麻布十番駅7番出口を出るとすぐ「十番稲荷神社」があります。空襲により消失した末廣神社と竹長稲荷神社が合併して誕生。かえるの語音から、若返る、欲しかったものが買えるなどのご利益があるそう
麻布十番駅7番出口を出るとすぐ「十番稲荷神社」があります。空襲により消失した末廣神社と竹長稲荷神社が合併して誕生。かえるの語音から、若返る、欲しかったものが買えるなどのご利益があるそう。

元麻布にも、幕臣の邸地が数多くありましたが、特に有名なのが山崎主税助邸です。この邸内の池のがまが江戸時代後期(文政年間)の火事に水を吐きかけて屋敷を守ったという伝説のある場所。このお守り札が「上の字様」と称されました。以後、末広神社(現在の十番稲荷神社)で発行されています。

元麻布の5つの「魅力」

■1:麻布十番商店街があります

麻布山善福寺の門前町として江戸時代から栄えたこの商店街は、創業100年以上の老舗と新しいお店が立ち並ぶ賑やかな商店街です。

「麻布十番納涼まつり」には、2日間で30万人が訪れるといいます。どこか下町風情のある商店街です。
8月に開催される「納涼まつり」には、2日間で30万人が訪れるといいます。どこか下町風情のある商店街です。

歴史のある有名店としては、たぬき煎餅(昭和3年創業)、紀文堂の人形焼(明治43年創業)浪花家総本店のたい焼き(昭和23年麻布十番店開店)、蕎麦屋「永坂更科布屋太兵衛」(寛政元年)、商店街の真ん中にあるのが豆菓子屋「豆源」(慶応元年創業)などが有名です。

■2:大人の遊び場、六本木も徒歩圏内です

美術館や映画館、飲食店、200を超える多数の有名店を有する六本木ヒルズも徒歩圏内にあります。六本木ヒルズの敷地内には、江戸時代末まであった大名庭園「毛利庭園」を再現した回遊式庭園があります。

六本木ヒルズのある場所は、長門府中藩毛利家の上屋敷がおかれていました。

■3:古くから国際色豊かな地域です

元麻布には、インターナショナルスクールや大使館が点在していて、街を散策しているだけでも異国を感じる場面にたくさん出会うことができます。この街は10月のハロウィン時期になると、家々が華やかな装飾で彩られます。というのも、オーストリア大使館、アルゼンチン大使館、中華人民共和国大使館など、多数の大使館があり、外国人が多く住むエリアだからです。

また、元麻布には戦後1949年に日本人が初めて設立した西町インターナショナルスクールがあります。西町インターナショナルスクールでは、幼稚園から9年生まで一貫教育を行なっています。アメリカをはじめとする30か国の生徒が在籍するといわれています。

■4:人気校がある

トップクラスの進学校として不動の地位を築く名門校・中高一貫校の「麻布学園」があります。麻布学園は、自由闊達・自主自立の校風のもと、6年一貫教育を行っています。

元麻布ヒルズの向かいにある西町インターナショナルスクールは、子供達を自由な雰囲気の中で、広い考えと思いやりのもとに自分で考えて行動できる人間に成長させたいとして創立者・松方種子が、戦後1949年に学級を開き、それがインターナショナルスクールへと発展。校舎の一部として今でも使われている「松方ハウス」は、1921年に松方種子の両親の自宅として建てられたクラッシックな洋館で、東京都選定歴史的建造物に指定されています。

■5:おしゃれな高級マンションがあります

元麻布ヒルズフォレストタワー。2002年に完成した地上29階、地下4階の大型マンション。

「一本松坂」沿いに、言わずと知れた高級マンション「元麻布ヒルズ」があります。また、高台に建てられた「元麻布ヒルズフォレストタワー」は周りに高い建物がなく目立っていて、樹木をイメージしたという特徴的な形をしています。芸能人や著名人が住んでいるという噂も。敷地内の「ヒルズスパ」にはプールやフィットネスルームが。そして季節の花々が楽しめる「四季の丘」という緑豊かなオープンスペースがあり、近隣住民の散歩コースにもなっています。

大きな公園がランドマークにもなっている南麻布ですが、元麻布も緑地が整備されています。商店街もトレンドを発信する大型複合施設も徒歩圏の元麻布は、住みやすさも抜群。ぜひその足で歩いてみてください。


参考:港区ホームページ
  :デジタル版 港区のあゆみ
  :麻布十番商店街
  :麻布山善福寺
  :ザ・AZABU
この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
PHOTO :
Getty Images AC
WRITING :
柳堀栄子