日本各地で育まれてきた高度なものづくりの技術と、若き匠たちの美意識や情熱が結びついた「新時代のジャパンラグジュアリー」を体現する逸品を、ギフトという形で提案しているスタイリストの河井真奈さん。
今回ご紹介いただくのは、竹林面積日本一を誇る鹿児島県にて大正14年に創業した八木竹工業が手掛ける「八木竹style」の竹細工の箱。そもそもは弁当箱として生まれたこのアイテムですが、シンプルなつくりだけにその用途はアイデア次第で広がるのだそう。
近年、サステナブルな素材としても注目されている「竹」を用いた箱の魅力を、河井さんに教えていただきます。
さらなる進化が期待される「竹」を素材としたものづくり
「日本人にとって“竹”はとても身近な存在ですが、生活のなかで竹を用いたアイテムを使っていることは意外と少ないかもしれません。でも近年、サステナブルな観点からファッションなどさまざまな分野で竹素材の活用が注目されていて、私も気になっていました。
生長するまでに長い年月を要する樹木と違い、ピーク時には1日でおよそ1メートルものスピードであっという間に伸びていく竹は、むしろどんどん切って使っていかないとほかの樹木の生長を妨げたり、自然のバランスを崩してしまうのだそう。
八木竹工業は、もちろんそんなトレンドとは関係なく竹を用いたものづくりを続けてきましたが、三代目となる現社長の八木秀作さんはそんな時代背景にも寄り添う新しい視点で、現代の暮らしに合うアイテムとして海外展開も視野に入れたブランド『八木竹style』を立ち上げました」
使う人の想像力をかき立てる、シンプルで美しい“魔法の箱”
「そんな『八木竹style』で見つけたのが、艶やかな飴色をまとった竹のお弁当箱。シンプルなつくりだからこそ、お弁当だけにとどまらず、食卓で活躍するテーブルウエアやインテリアに美しくなじむ収納ボックスなど、いろいろな使い方ができそうな点に惹かれました。
たとえば夏なら素麺の器にするとより涼しげな印象に。また、総菜やスイーツを少しずつ並べて蓋をして食卓に出せば、モダンなレストランのプレゼンテーションのように開けるときのわくわく感を演出できます」
「縦長のスリムなタイプは、名刺がきれいに入るサイズ。箱と蓋を別々に使ってもいいですし、蓋を台にして小さな盆栽やキャンドルなどを並べるのも素敵です。
お弁当箱と限定するのはもったいない、使う人のイマジネーション次第でどこまでも可能性が広がるアイテムは、“魔法の箱”と言ってもいいかもしれませんね」
人の手と時間を惜しまない伝統の技から生み出される逸品
「ところで私がこの箱を見て不思議に思ったのは、木材と違って中心に穴が開いている竹からどうやって平らな箱ができるのかということ。その答えは、竹の根元の2センチほどある肉厚な部分を縦に切り分けることで、直線の平たいパーツを作っているのだそうです。これにより表れる竹特有のランダムな節が見せる表情にも、ぜひ注目してください。
一つの箱ができるまでには、実に多くの工程と時間を要します。まずは、3~5年生竹させた孟宗竹を、木こりが傷などに注意しながら伐採し、山から下ろします。不要な部分を取り除いたら、窯で煮て油抜き加工を行ったのち、約1か月間天日干しする晒竹加工へ。その後、荒割りした竹板にすす竹加工を施します」
「すす竹とは、古い茅葺き屋根の民家の屋根裏や天井に用いられた竹が、100年以上もの年月をかけ囲炉裏の煙でいぶされて独特の茶褐色や飴色に変色しているものを指します。これを人工的に再現したのが、すす竹加工。竹をいぶして飴色になるまで炭化させることで、軽量でカビにくくなるのです。
すす竹加工を終えた竹板は、必要なサイズにそろえて製材。特殊接着剤やプレス機などを用いて修正材を作り、釘などは使わず竹のパーツを埋め込んでつなぐチギリ加工で箱の形に組み立てます。チギリ加工が見て取れるのは、四隅にある角のつなぎ目。ワンポイントのアクセントとしても効果を発揮しています」
「さらに、底や側面に油や水気を漏れにくくするシーリング加工を施し、最後に食品衛生法基準をクリアしたウレタン加工で仕上げる…というのが一連の流れ。竹の特性を知り尽くし、手間を惜しまず愛情をかけて作り上げられた品だからこそ、心惹かれる存在感を醸し出しているのだろうと思わずにはいられません」
マルチに使えるから贈る人を選ばない、竹の箱3選
■1:スクエア竹箱
■2:スリム弁当箱(1段)
■3:スリム弁当箱(2段)
今回は、多彩な用途で楽しみたい「竹の箱」をご紹介しました。河井さんのお店では、このほかに箸や右利き・左利き用の万能へら、鬼おろしも扱っているので、こちらもぜひチェックしてみてください。
※掲載商品の価格はすべて税込みで、記事公開時のものです。
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- EDIT&WRITING :
- 谷 花生