敬語を用いての会話のなかでよく使われるのが「いらっしゃる」というフレーズです。「明日は〇〇へいらっしゃいますか?」「〇〇さんはお席にいらっしゃいますか?」など、あなたも使用すると思います。大変便利に使える敬語ですが意味は大きく分けて3つあり、取り違えるなどのケースも少なくありません。今回はビジネスシーンで正しく効果的に使いこなすための「いらっしゃる」を解説します。

【目次】

「いらっしゃる」と「おいでになる」どっちが適切?
「いらっしゃる」と「おいでになる」どっちが適切?

【「いらっしゃる」の意味…基礎編】

さまざまな場面で使用できる「いらっしゃる」ですが、正しい意味で適切に、さらに効果的に用いるために、意味や使い方など基礎知識を確認しておきましょう。 

■「入る」の尊敬語から転じて…

まずは単語そのものを見てみましょう。「いらっしゃる」は「入(い)る」の尊敬語から転じたもので、「行く」「来る」「居る」を意味する尊敬語です。もともとは身分の高い人に対して使う表現で、「入(い)らせらる」が語源とされています。

また、補助動詞「ある」「いる」の尊敬語としても使われます。

■「いらっしゃる」はどんな敬語?

相手や話題にしている第三者などを高めて敬意を示す「尊敬語」と、へりくだることで相手を高めて敬意を表す「謙譲語」、そして「丁寧語」と、敬語には3種類ありますね。

「いらっしゃる」は、相手を高めて敬意を示す「尊敬語」にあたります。

■目上の人になら誰にでも使える?

「いらっしゃる」は外部の人を高めて使うワードです。たとえ尊敬している上司だとしても、身内(社内の人や家族・親族など)には使用しません。


【「いらっしゃる」の例文…実践編】

では、どんなシーンで、誰に、どう使うのでしょうか? 3つの意味ごとに例文をご紹介します。

■「行く」の尊敬語としての「いらっしゃる」

例文1:「出張はどちらへいらっしゃるのですか?」
例文2:「次回の展示会へいらっしゃるとよいと思います」
例文3:「よろしければご一緒に現地にいらっしゃいませんか?」

■「来る」の尊敬語としての「いらっしゃる」

例文4:「ようこそいらっしゃいました」
例文5:「遠いところいらっしゃっていただき恐縮です」
例文6:「いつこちらへいらっしゃるのでしょうか」

■「居る」の尊敬語としての「いらっしゃる」

例文7:「〇〇様はお席にいらっしゃいますか?」
例文8:「みなさんが現場にいらっしゃるだけで心強いです」
例文9:「しばらくこちらの部屋にいらっしゃってください」

■補助動詞「ある」「いる」の尊敬語としての「いらっしゃる」

例文10:「みなさん大変満足していらっしゃるご様子でした」
例文11:「どんなときでも毅然としていらっしゃるお姿に憧れます」
例文12:「転勤先でもどうぞお元気でいらしてください」


【「いらっしゃる」の言い換え…応用編】

尊敬語としての「いらっしゃる」がさまざまなシーンで活用できることがわかりました。次に「いらっしゃる」の「言い換え表現」をチェックしてみましょう。

■お越しになる

「行く」「来る」という意味での「いらっしゃる」に置き換えられますが、「来る」の場合に使いやすいワードです。前述の例文に当てはめてみます。

例文2の言い換え:「次回の展示会へお越しになるとよいと思います」
例文6の言い換え:「いつこちらへお越しになりますか」

■おいでになる

「おいでになる」というフレーズは「いらっしゃる」同様、「行く」「来る」「居る」のいずれの意味でも用いることができます。

例文1の言い換え(行く):「出張はどちらへおいでになるのですか?」
例文5の言い換え(来る):「遠いところおいでいただき恐縮です」
例文7の言い換え(居る):「〇〇様は社内においでですか?」


【「いらっしゃる」を誤解なく使うための注意点】

■「行く」「来る」「居る」の取り違えにご注意を!

「行く(go)」「来る(come)」「居る(stay)」と英語に置き換えてみるとよくわかりますが、「いらっしゃる」はまったく違うシチュエーションで使えるフレーズです。それだけに、誤解されやすい尊敬語でもあります。

例えば、「〇〇様は明日いらっしゃいますか?」だけでは、「□□に居ますか?」なのか「△△に行き(来)ますか?」なのか、判断がつかないことがあります。

どこに居るのか、行くのか、来るのか、場所を明確にして「いらっしゃる」を使用するよう習慣づけると、勘違いを防げますね。

 

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「明日はいらっしゃいますか?」と聞かれて、「会社に居るかということ? それともあちらへ行くかどうか聞いてる?」と、迷った経験はありませんか? 「どこに」ということがわかればいいのですが、コミュニケーション不足が問われる昨今、こんなケースはよくあることでしょう。「余計なひと言」は不要ですが、対面でも電話でもメールでも、社会人としては「必要最低限の情報」は略せず相手に伝えたいですね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『とっさに使える 敬語手帖』(新星出版社)/『敬語マニュアル』(南雲堂) :