【目次】

【「卑下する」の「読み方」「意味」】

■「卑下」はどう読む?

「卑下」は「ひげ」と読みます。

■「卑下」は「自分の価値を下げてへりくだること」!

『日本国語大辞典』によれば、「卑下」には3つの意味があります。

1 おのれを低くし、卑しめること。へりくだること。また、気がひけて遠慮がちにすること。また、そのようなさま。
2 卑しめ見下すこと。また、そのようなさま。
3 卑しいこと。みすぼらしいこと。

いずれもポジティブなニュアンスは感じられませんね。「卑」という漢字は「身分などが低いこと、いやしいこと、下劣であること。卑屈」あるいは「へりくだること、卑下」といった意味をもっています。そのため、連想される熟語も「卑劣」「卑怯」「卑屈」など、やはりネガティブな意味合いの言葉が多いのです。

「卑下する」とは、「自ら劣っている」と示すことによってへりくだることです。

■誰に対して使えるの?

「卑下する」という言葉は、上記1で示されているように、「自分のことを卑しめ、へりくだる」、つまり「自分の価値をあえて下げる」状況で使う言葉です。

NG:「○○さんが△△さんのことを卑下していたのは驚いた」

OK:「○○さんは本当に優秀なのだから、そこまで卑下する必要はないのにね」

第三者が「自らの価値を下げる」ことを表現するのは正しい使い方のひとつです。


【「卑下する」の理解を深める「例文」10選】

■1:「褒められたときに卑下することが多いと、自分に自信がないように見える」

■2:「卑下するのを美徳と捉えている人は、案外多いものだ」

■3:「優秀な人が過剰に卑下すると、かえって嫌味に感じられることがある」

■4:「卑下発言を連発することで、逆に周囲のモチベーションを下げてしまいました」

■5:「そこまで卑下しなくても、素直にありがとうと言ったらどうか」

■6:「リーダーが自らを卑下しすぎると、チーム全体に悪影響を及ぼしかねません」

■7:「卑下した表現が多いですが、むしろ自信の表れとも受け取れます」

■8:「謙虚さと卑下は異なります。自信を持ってプレゼンしてください」

■9:「必要以上に卑下するのは、ビジネスの場では損になりますよ」

■10:「卑下しておられましたが、その分析力は圧巻でした」


【「卑下」の「類語」表現】

「卑下」の類語はいくつかあります。

■謙遜

「謙遜」は、「へりくだること、卑下すること、控えめにすること」といった意味の言葉です。「控えめ」な様子は「卑下」と共通しますが、「謙遜」がすぎて「自分の価値を下げる」言動が目立つと、「卑下」という言葉がしっくりきます。

■自虐

「自虐」は「自分で自分の肉体または心を痛めつけること。自らを責めさいなむこと」。「卑下」のように「相手を立てるために、自分の価値を下げてへりくだる」といったニュアンスは含まれていません。

■卑屈

「気力がなく品性が卑劣であること。意気地がなく行為が下劣であること。あるいは、自分を卑しめて、相手に屈伏したり、妥協したり、へつらったりすること」といった意味をもつのが「卑屈」です。「卑下」に謙遜のニュアンスがあるのに対し、「卑屈」は「いじけて自分に価値はないと相手にへつらう」といった意味の言葉です。


【「英語」で言うと?」】

「卑下する」を英語で言うと、「belittle oneself」や「demean oneself」、また、口語的な表現では「put oneself down」も使われます。

・He tends to belittle himself even though he’s very capable.(彼はとても有能であるにもかかわらず、自分を卑下する傾向があります。→彼はとても優秀なのに、いつも自分を過小評価してしまう傾向がある。)

・There’s no need to demean yourself. You did a great job.(自分を卑下する必要はありません。あなたは素晴らしい仕事をしました。→そんなに自分を悪く言うことはありませんよ。とてもよくやりましたから。)

また、謙遜に近い意味合いが入る場合は、「be overly modest(過度に謙遜する」」「downplay one’s abilities(能力を控えめに表現する)」といった表現も使えます。


【「卑下自慢」にならないよう注意!】

誰かに高く評価されたとき、「卑下する」言葉としては、以下のようなフレーズがあります。

■「とんでもないことでございます。私など、まだまだ未熟者です」

■「いえいえ、至らぬ点が多く申し訳ありません」

■「私なんて、部長の足元にも及びません」

■「いえ、単に運がよかっただけです」

「卑下も自慢のうち」ということわざをご存知ですか?「謙遜しながら、それを美徳として誇ること」あるいは「自慢を自慢として口に出さず、表面は謙遜してみせること」を言います。思い当たること、ありませんか? 自分では謙遜してみせたつもりでも、状況次第で「卑下」を「自慢」と捉えられてしまうことがあるのです。

例えば、誰もが認める成績上位者があまりに謙遜しすぎると、「だったらいつも平均点しか取れない私はどうなの? 嫌味?」と受け取られかねません。このように、あまりに卑下しすぎると、周囲を不快にすることもあるため、注意が必要です。「卑下もほどほどに」と心得ましょう。


【自分を卑下しがちな人には、どう「対応」する?】

■卑下することが多い人の特徴は?

ビジネスシーンだけでなく、日常ふとした場面で、周囲からの褒め言葉を素直に受け止められず、必要以上に謙遜してしまった経験はありませんか? 自分を卑下してしまうのは、自分に自信がもてないときが多いようです。自信がもてず、いじけていたり卑屈な気持ちになったりしているときには、必要以上に謙遜したり卑下したりすることで、相手からこれ以上期待されないよう、予防線を張ってしまうことがあるものです。

周囲からの褒め言葉が素直に受け止められない…もしかしたらこれは、自分が自信を失いかけている心のサイン、と読み解くこともできそうです。

■「卑下」は「承認欲求」の表れかも?

「卑下自慢」する人っていますよね? 彼らは決して本心から自分が劣っていると思っているわけではありません。「私なんか全然だめよ〜」と謙遜しながら、「そんなことありませんよ。先輩はすごいです!」という、さらなる褒め言葉を待っているものです。少々面倒な相手といえば確かにそうですが、謙遜を言葉通り「そうですね」と受け止めてしまっては、不機嫌になることは目に見えています。一度は相手の卑下を否定することも、人間関係を円滑にやり過ごすためには必要な処世術といえるかもしれませんね。

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自信過剰な態度は論外ですが、あまりに卑下がすぎると、周囲はどう対応していいのか困惑してしまいます。謙虚であることを旨としつつも、ときには褒められたとき、「ありがとうございます。さらに精進いたします!」と賞賛を素直に受け止め、やる気を見せるのも頼もしく映るものです。反対に、自信をなくしている同僚や部下に対しては、メンタル的なフォローや気遣いが必要なタイミングかもしれません。見逃さないよう注意したいものですね!

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館) /『デジタル大辞泉』(小学館) :