ビジネスシーンでは、部下に対してはもちろん、上司や取引先など、敬意を表すべき方に対しても、何かを「依頼」しなければならないシーンは多いものです。小学生でも使える「お願いします!」のバリエーションを、あなたはどれだけ知っているでしょうか?会話やメールで相手に好印象を与える「お願いします」のさまざまな敬語表現をご紹介しましょう!

【目次】

「お願いします」のバリエーションをいくつ知っていますか?
「お願いします」のバリエーションをいくつ知っていますか?

【ビジネスの「依頼」は「敬語」表現が成功のカギ】

■「依頼」のシーンでは、まず敬語表現を整えて!

一心不乱にPCに向かう上司。でもあなたはどうしても今、書類に目を通してほしい…。「あのう…」あるいは「すみません…」と声をかけたあなた! あなたの語彙力は社会人としてはまだまだです。

「○○部長、お忙しいところ恐縮ですが、こちらの書類にお目通しいただけますか?」と話しかけたほうが、上司の印象は確実によくなるはずです! 私たちは人の話を聞くとき、「内容」と「形式」の両方で評価しているといいます。ですからまずは「形式」、つまり「言葉遣い」を整え、相手に好印象を与えることが、「依頼」を成功させるキーポイントなのです。

■「お願いします」をおさらい!

では基本の「お願いします」というフレーズを、文法的にご説明しましょう。「お願いします」は「お-願い-し-ます」と分解できます。「お願い」は「願う」という動詞の連用形に接頭語の「お」をつけ、その動詞の〈向かう先〉を立てる表現です。例えば、「(先生を)お見かけ-しました」「(先生を)お待ち-します」などと同様、「お願い」は、お願いする相手をたてる表現となっています。

ただし、接頭語の「お」が相手を高め、助動詞「ます」で丁寧な表現になっているとはいえ、敬意の度合いは高くありません。以下に、「お願いします」の敬意を強めた表現をご紹介しましょう。

・「お願いいたします」

・「お願い申し上げます」

・「お願いしたく存じます」

■「お願いできれば〜」「お願いできると〜」の表現をマスター!

目上の方に何かを依頼するとき、「お願いできれば幸いです」というフレーズがよく使われます。相手に丁寧でソフトな印象を与えることできます。ただし、「“できれば”お願いします(できなければ仕方ありません)」といったニュアンスを含んでいるため、絶対に対応してもらいたい依頼や急ぎの用件のときには不向きです。

・「お願いできれば幸いです」

・「お願いできると助かります」

・「お願いできるとうれしいです」

・「お願いできましたら幸いに存じます」

・「お願いできましたら幸甚でございます」


【上司や取引先など、目上の人に「依頼」する文章のポイント】

■具体的にお願いしたい行為を示す動詞に「ご」「お」の接頭語をつける

対面やメールで「〜をお願いいたします」という文章にしたいとき、一番簡単なのは、行為を示す動詞に「お」または「ご」をつけて、行為の主体をたてる表現とすることです。例えば、「ご一読お願いいたします」のように使います。

・ご一読 ・ご教示 ・ご同行 ・ご留意 ・ご一考 ・ご参照

・ご同席 ・ご出席 ・ご対応 ・ご容赦・お運び ・お話し(する)

■クッション言葉を活用する

本題の前に相手の状況に配慮したクッション言葉を置くと、いったん相手の意識を引きつけて、丁重な印象を与えたうえで用件を伝えることができます。

・お忙しいところ恐縮ですが

・お手数ですが

・恐れ入りますが

・大変忍びないのですが

・お差し支えなければ

・お手数をおかけしますが

・勝手を申し上げますが

・ぶしつけなお願いで恐縮ですが

・ご多用中とは存じますが

・ご苦労をおかけしますが

■「〜のほど」には、依頼の表現を和らげる効果が!

例えば、「ご確認のほどよろしくお願いいたします」という文章があります。「ご確認」の「ご」は、「〜する」という形の動詞の行為の主体を立てる「接頭語」。この場合は「確認」する人に対する敬意を表しています。

ポイントは、「〜のほど」です。文章としては「ご確認、よろしくお願いいたします」でも間違いではないところを、あえて「〜のほど」とすることで、断定を避け、表現を和らげる用法になっているのです。

「よろしく」は人に何かを頼むときに添える言葉。「ご確認のほどよろしくお願いいたします」は、確認を依頼する相手に失礼がないよう、十分に配慮されたフレーズとなります。

■疑問形にすることで、相手の選択の余地を残す

「お願いいたします」の「ます」は丁寧の助動詞ですが、語尾を「お願いできますでしょうか」といった疑問形にしたり、「〜していただけるとありがたいのですが」という表現にすることで、相手に選択の余地を与え、ソフトな印象にすることができます。

・お願いできますか。

・いかがでしょう。

・〜していただけないでしょうか。

・〜(して)いただけるとありがたいのですが。


【無理を承知で「強くお願いする」ときにおすすめの「敬語表現」】

■「心よりお願い申し上げます」
■「何卒お願いいたします」
■「このようなお願いは大変忍びないのですが、ご協力いただけないでしょうか」
■「くれぐれもよろしくお願いいたします」
■「〜(して)いただけますよう切にお願い申し上げます」
■「勝手なお願いで恐縮はございますが、平にご勘弁くださいませ」
■「無理を承知でお願いしております」
■「折り入ってお願いしたいことがございます」
■「ほかならぬ○○さんだからこそお願いしております」
■「伏してお願い申し上げます」


【「社外」の方に「協力のお願い」をするときに使える「敬語表現」】

■「お知恵を拝借願えませんか」
■「ぜひご助力を賜りたく、お願い申し上げます」
■「ご支援くださりますようお願いいたします」
■「ご相談させてくださいませ」
■「お力をお貸しいただけると幸いです」
■「どうぞお力をお貸しください」
■「お力添えいただけないでしょうか」
■「ご教示いただけませんでしょうか」
■「ご協力いただけますよう、何卒よろしくお願いいたします」

 

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ビジネスで「依頼」のシーンは想像以上に多いものです。「お願いします」のバリエーションを把握して、相手との関係性や状況に応じた敬語表現を自在に操りましょう。「依頼」の成功率が上がること、間違いなし!です。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『一生分の教養が身につく! 大人の語彙力強化ノート』(宝島社)) /『印象が飛躍的にアップする大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版) /『大人なら知っておきたいモノの言い方サクッとノート』(永岡書店) /『心理学的に正しい!人に必ず好かれる言葉づかいの図鑑』(宝島社) /『これ1冊であとはいらない! 大人の語彙力大全』(中経の文庫) /『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書) /『とっさに使える敬語手帳』(新星出版社) :