過去のある時点を指す言葉として「先日」と「昨日」があります。どちらも日常で使う言葉ですが、ビジネスにふさわしい「使い方」があるのをご存知ですか? 公式な場面や目上の方に対して適切な、丁寧な言葉遣いを一緒に学びましょう!

【目次】

「昨日」を「先日」とは言いません。
「昨日」を「先日」とは言いません。

【「先日」と「昨日」、改めてそれぞれの「意味」は?】

■「昨日」の意味

「昨日」の意味ははっきりしていますね。【今日より1日前の日】のことです。回想した際に、「昨日のことのように思い出される」といったフレーズで、【印象鮮やかに思われる過去】という意味ももっています。

■「先日」の意味

では「先日」についてはどうでしょうか。『日本国語大辞典』には【さほど遠くない過去のある日。このあいだ。過ぎし日。過日】と書かれています。ここからわかるように、「先日」という言葉は「過去のある時点」をあいまいに表現するときに用いられます。「○月△日と明確な日付は特定せずに、さほど遠くない過去のある日」を指すのが「先日」です。


【「丁寧語」としての「昨日」と「先日」って?】

さて、ここまで読んでくださった皆さんは、「昨日」「先日」をどう読んでいましたか?
『敬語マニュアル』には「公式の発言で使う言葉」として「昨日」と「先日」が紹介されています。

■普通の言葉:「昨日(きのう)」  改まった言葉:「昨日(さくじつ)」
■普通の言葉:「この間(あいだ)」 改まった言葉:「先日(せんじつ)」「過日」「先頃」

ニュアンスが伝わりましたか? PCでは「きのう」と打っても「さくじつ」と打っても「昨日」と変換されますが、口頭で「きのうはありがとうございました」と言うのと「さくじつはありがとうございました」と言うのでは、丁寧度が違います。つまり、この言葉が使われるふたりの関係性や場面も異なるということです。「さくじつ」と表現したほうが丁寧な印象になることはいうまでもありません。
「昨日(さくじつ)」や「先日」という言葉自体は敬語表現ではありませんが、ビジネスのシーンでは「昨日」は「さくじつ」、「この間」は「先日」と、公式な発言にふさわしい言葉を使うのが適切だといえるのです。

■日時に関係した「公式の発言に適した言葉」はほかにもあります!

上記のほかにも、日時に関係した「公式の発言に適した言葉」をいくつかご紹介しましょう。

・普通の言葉:「一昨日(おととい)」  改まった言葉:「一昨日(いっさくじつ)」
・普通の言葉:「今日(きょう)」    改まった言葉:「本日(ほんじつ)」
・普通の言葉:「明日(あした)」    改まった言葉:「明日(みょうにち)」
・普通の言葉:「明後日(あさって)」  改まった言葉:「明後日(みょうごにち)」
・普通の言葉:「昨夜(ゆうべ)」    改まった言葉:「昨夜(さくや)」
・普通の言葉:「明日(あした)の朝」  改まった言葉:「明朝(みょうちょう)」
・普通の言葉:「一昨年(おととし)」  改まった言葉:「一昨年(いっさくねん)」
・普通の言葉:「去年(きょねん)」   改まった言葉:「昨年(さくねん)」
・普通の言葉:「今(いま)」      改まった言葉:「只今、ただ今(ただいま)」
・普通の言葉:「今度(こんど)」    改まった言葉:「このたび」


【「先日」って具体的にはいつ頃のこと?】

■「昨日」を「先日」とは表現しない

「先日」は「遠くない過去」を示しますが、「昨日(さくじつ)」や「一昨日(いっさくじつ)」を「先日」とは言いません。誤解を生まないためにも「昨日」「一昨日」と言いましょう。

■どれくらい前のことまで「先日」といえる?

「先日」がいつからいつまでを指すのかは、明確に定義されていません。時間の感覚には個人差もありますから、一概に定義するのは難しいのですが、一般的には3日以上前(つまり一昨日より前)から1か月以内の間を「先日」ということが多いようです。つまり1週間前も3週間前も「先日」という言葉で表して間違いではありません。3日前など、ごく近い過去であれば『つい先日』という表現も使えます。

■「先日より前」のことはなんと表現する?

厳密にひと月経っていなくても、「前の月」を表す言葉として、「先月」がありますね。年をまたいでいるなら「昨年」とも言い換えられます。


【「先日」の理解を深める「例文」5選】

「先日」を使った例文をご紹介しましょう。メールと口頭、どちらでも使える言葉ですが、4つめと5つめは対面での使用例です。

■1:「先日はご足労を賜りまして、まことにありがとうございました」

■2:「先日、ご連絡いたしました件につきまして、少々訂正がございます」

■3:「先日は勝手なお願いをいたしまして、申し訳ございませんでした」

■4:「先日はすっかりご馳走になりまして、ありがとうございました」

■5:「先日、大手町で○○さんをお見かけしましたよ」


【「先日」の「類語」表現は?】

■過日(かじつ)

「過日」は文字通り「過ぎ去ったある日」示す言葉です。一般的に数日前の出来事を「過日」とはいわず、数ヶ月から数年前の「広い期間の過去」を指します。主にメールや手紙で使われる書き言葉です。

■先頃(さきごろ)

「先日」同様、「今日から少し前の頃」を指す言葉です。数年前など、遠い過去のことには使いません。

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「先日は〜」という表現は、メールや対面での「話の切り出し」として「少し前のこと」を指すのに便利に使えるフレーズです。ただし、「日時」をはっきりさせたほうが話がスムーズに進む場合は、「1週間前」あるいは「先日の発表会では〜」など、誤解を生まないよう詳細を添えるのも、相手に対する気配りといえるでしょう。「先日」も「昨日(さくじつ)」も、ビジネスシーンにふさわしい言葉ですから、正しく使いこなしてくださいね。

この記事の執筆者
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参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉(小学館)/『敬語マニュアル』(南雲堂) :