「ありがとうございます」というフレーズ、あまりにも日常的すぎて「これって敬語?」「こざいますと、ございました、どっち?」と不安に思う方もいるでしょう。そうです、会話でもメールなどでも、ふだん何気なく使っている言葉こそ注意が必要です! 今回はこの「ありがとうございます」の正しい使い方や落とし穴を確認して、大人の語彙力を磨いていきましょう。

【目次】

よく使う「ありがとうございます」こそ正しい理解が必要です!
よく使う「ありがとうございます」こそ正しい理解が必要です!

【ビジネスシーンで「ありがとうございます」は万能?「意味」と基礎知識  】

■感謝の気持ちやお礼を伝える「ありがとうございます」の意味

まずは「ありがとうございます」というフレーズの成り立ちを見てみましょう。

「ありがとう」は感謝を伝える形容詞「ありがたい」が変化したもので、感謝したり、お礼を言ったりするときに用いる言葉です。これに「ある」の丁寧語「ございます」を付けて「ありがとうございます」と使用します。

■「由来」は?  

「ありがたい」は「有り難し」を語源とする言葉。「有り難し」とは、「なかなかない」や「珍しい」といった意味をもっています。感謝やお礼とは異なるように感じますが、生きていることへの感謝を表す仏教用語として使われていたことに由来します。

この「有り難し」が「有り難う(ありがとう)」と変化し、感謝の気持ちを伝える言葉として使われるようになりました。何気なく使うこともある「ありがとう」という言葉ですが、人に何かをしてもらうのは当たり前のことではなく、「感謝に値する有り難いこと」なのです。

■「ありがとうございます」は敬語?

「ありがとう」という感謝の言葉に「ございます」がつくことで丁寧語になり、目上の人にも使える敬語表現になります。もう少し敬意を表したい、丁寧な言葉で伝えたい相手には、「誠にありがとうございます」で申し分ないでしょう。

■漢字で書いたほうが丁寧な印象になる?

漢字で書くと「有難う御座います」となります。日本語には「ひらがな」「カタカナ」「漢字」とありますが、「社会人としては漢字を多用したほうが立派に見えるのでは?」というのは間違いです。「ひらがな」「カタカナ」「漢字」を使い分けるのは、「ひらがなばかりが続くと読みにくい」「音が同じで複数の異なる意味がある場合は漢字で」「文面にリズムをつけて読みやすくする」など、意味があるのです。

「ありがとうざいます」の場合、現代ではひらがな表記が一般的ですが、文章全体を見て、ひらがなと漢字を混ぜて使うなどするのが大人の文章力というものですね。


【「ありがとうございます」と「ありがとうございました」どう違う?】

■現在形の「ございます」と過去形の「ございました」

文法的にとらえれば「ありがとうございます」は現在形、「ありがとうございました」は過去形です。しかし、ビジネスでは、過去のことでも現在形の「ありがとうございます」を使用したほうがいい場合があります。

例えば、終了した業務に対しての感謝の気持ちを伝えるなら「ありがとうございました」で間違いないのですが、なんだか「ここであなたとの関係も終了!」という感じがしませんか? 相手との関係を継続したいなら、過去のことをいう場合でも「ありがとうございます」のほうが“感じよく受け取ってもらえる”はずです。


【「類似語使用」や「言い換え」でデキる社会人に! 「例文」6選】

ビジネス会話での「ありがとうございます」の言い換えをご紹介しましょう。

■1:「今回のプロジェクトは、御社のご尽力なくして成功はありませんでした。心より感謝しております」
■2:「いつもながらお気遣いいただき恐れ入ります」
■3:「過分なおほめの言葉を頂戴し、恐縮しております」

「感謝」という言葉で謝意を伝えたり、謙遜表現の「恐縮です」や「恐れ入ります」というフレーズでありがたい気持ちを示すことができます。「ありがとう」と「恐縮」は、ビジネスシーンでは同義語と考えてもいいでしょう。上記の例文を、メール(書き言葉)で使用する場合も確認しておきます。

■4:「今回のプロジェクトの成功は、御社のご尽力なくしてはありませんでした。感謝の言葉もございません」
■5:「いつもながらお気遣いいただき御礼申し上げます」
■6:「過分なおほめの言葉を頂戴し、痛み入ります」

メールや手紙では表情や声のトーンが伝わらない分、よりフォーマルな言い回しである「御礼」や「痛み入る」といったフレーズを使うよう心がけたいですね。

ただし、取引先の人や上司であっても、長い付き合いや親しい間柄であれば、かしこまらず「ありがとうございます」と軽快に伝えて正解です。


【「ありがとうございます」の気持ちを「最上級」に伝えるフレーズ】

■「誠にありがとうございます」
■「大変ありがたく感謝申し上げます」
■「深く感謝しております」
■「心より御礼(おんれい)申し上げます」
■「感謝に堪えません」
■「お礼の申し上げようもございません」

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内外のさまざまな人と接する社会人は、敬語をはじめとする“語彙力”が仕事の評価にもつながります。どんなに成果を上げても、言葉によるコミュニケーション能力が低い人は、ビジネスパートナーとしては敬遠されてしまいます。感謝の気持ちを伝えるのは案外難しいものですが、考えすぎず「ありがとうございます」と、軽やかに使いたいものですね。

この記事の執筆者
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