【目次】

【ビジネスシーンで「ありがとうございます」は万能?「意味」と基礎知識  】

■感謝の気持ちやお礼を伝える「ありがとうございます」の意味

まずは「ありがとうございます」というフレーズの成り立ちを見てみましょう。

「ありがとう」は感謝を伝える形容詞「ありがたい」が音変化したもので、ここに「ある」の丁寧語「ございます」がついて「ありがとうございます」となっています。相手に感謝したり、お礼を言ったりするときに用いる言葉です。

■「由来」は?  

形容詞「ありがたい」は、古語の「ありがたし(有り難し)」を語源とする言葉です。「ありがたし」と「ありがたい」は、「存在がまれである」「めったにない」という意味をもっています。ここから、相手に対する感謝の気持ちを表す言葉として使われるようになりました。

ただし、辞書編集者・神永曉さんの著書『さらに悩ましい国語辞典』(角川ソフィア文庫)によると、戦国時代の16世紀半ばぐらいまでは、感謝の意味を表す言葉としては「かたじけない」が主流だったのだそうです。「ありがとう」が広まったのは江戸時代になってからといわれています。

■「ありがとうございます」は敬語?

「ありがとう」という言葉に、丁寧語「ございます」がつくことで目上の人にも使える敬語表現になります。もう少し敬意を表したい、丁寧な言葉で伝えたい場合には、「誠に」「本当に」「どうも」などを前に付けるとよいでしょう。

■漢字で書いたほうが丁寧な印象になる?

「ありがとうございます」は漢字で書くと「有難う御座います」となります。

ところで、日本語には「ひらがな」「カタカナ」「漢字」とありますが、「社会人としては漢字を多用したほうが立派に見えるのでは?」と思うかもしれませんが、一概にそうとは言えません。「ひらがなばかりが続くと読みにくい」「読みが同じで複数の異なる意味がある言葉は漢字で」「文面にリズムをつけて読みやすくする」などを考慮して、言葉ごとに一般に広まっている慣用表現があるためです。

そして、ありがとう」の場合、現在はひらがなが一般的になっています。「ございます」も同様にひらがなで書くのがよいでしょう。


【「ありがとうございます」と「ありがとうございました」どう違う?】

■現在形「ございます」と過去形「ございました」

文法的に捉えれば「ありがとうございます」は現在形、「ありがとうございました」は過去形です。普通に使うなら、例えば、会の始まりの挨拶ならば「今日はお集まりいただきまして、ありがとうございます」と言いますし、会の終わりであれば「今日はありがとうございました」と言うでしょう。

しかし、ビジネスでは、過去のことでも現在形の「ありがとうございます」を使用したほうがいい場合があります。例えば、終了した仕事に対しての感謝の気持ちを伝えるために「このたびは大変お世話になりました。ありがとうございました」でも間違いではないのですが、なんだか「ここであなたとの関係も終了!」という感じがしませんか? ここが言葉の妙というべきところ。相手との関係がこれからも続く場合、過去のことを言う場合でも「ありがとうございます」のほうが“感じよく伝わる”はずです。


【「類語」や「言い換え」表現でデキる社会人に! 「例文」6選】

ビジネス会話での「ありがとうございます」の言い換え表現を例文でご紹介しましょう。

■1:「今回のプロジェクトは、御社のご尽力なくして成功はありませんでした。心より感謝いたしております」

■2:「いつもながらお気遣いいただき恐れ入ります」

■3:「過分なおほめの言葉を頂戴し、恐縮しております」

「感謝」という言葉で謝意を伝えたり、「恐縮です」「恐れ入ります」というフレーズでありがたい気持ちを示すことができます。謙遜語の「恐縮」と「恐れ入ります」は、とてもお世話になった相手や、迷惑をかけた相手に対して感謝の気持ちを伝えるのに最適な言葉です。

上記の例文を、メール(書き言葉)で使用する場合も確認しておきます。

■4:「今回のプロジェクトの成功は、御社のご尽力なくしてはありませんでした。感謝の言葉もございません」

■5:「いつもながらお気遣いいただき、御礼申し上げます」

■6:「過分なおほめの言葉を頂戴し、痛み入ります」

メールや手紙では表情や声のトーンが伝わらない分、よりフォーマルな言い回しである「御礼」「痛み入る」といったフレーズを使うとよいでしょう。

ただし、取引先の人や上司であっても、長い付き合いや親しい間柄であれば、かしこまらず「ありがとうございます」と軽快に伝えて正解です。


【「ありがとうございます」の気持ちを「最上級」に伝えるフレーズ】

感謝の気持ちを伝えるフレーズを、上から丁寧度が高い順にご紹介します。(   )の言葉を添えるとより気持ちが伝わります。

■「(心より厚く)御礼申し上げます」

■「(心より深く)感謝申し上げます」

■「(大変)感謝しております」

■「(大変)ありがたく存じます」「かたじけなく存じます」

こちらに負い目があって、謝罪の気持ちも込めた感謝を表す場合は、以下の表現もあります。

■「(大変)申し訳ございません」

■「恐縮に存じます」「恐れ入ります」

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社内外のさまざまな人と接する社会人は、敬語をはじめとする“語彙力”が仕事の評価にもつながります。つまり、コミュニケーション能力の高さはあなたの強い武器になるということ。感謝の気持ちを伝えるのは案外難しいものですが、「ありがとうございます」の表現を状況に応じて上手に使いたいものですね。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『日本国語大辞典』(小学館)/『デジタル大辞泉』(小学館)/『角川類似新語辞典』(KADOKAWA)/『旺文社古語辞典』(旺文社)/『印象が飛躍的にアップする 大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店)/『さらに悩ましい国語辞典』(角川ソフィア文庫) :