映画の原作は、第13回小学館ライトノベル大賞において「ガガガ賞」と「審査員特別賞」をW受賞した八目迷さんによる同名のライトノベル。過去の事故で心にトラウマを抱えた高校生の塔野カオルと、クラスに馴染めない転校生の花城あんずが、不思議なトンネルを探索するひと夏の思い出を描いた青春アニメーション。時間系SF要素をからませたノスタルジックな世界観が見るものを引き込みます。インタビューは、映画の完成披露舞台挨拶の日に鈴鹿さんを直撃して行いました。

鈴鹿央士さん
(すずか・おうじ)2000年、岡山県出身。映画『先生!、、、好きになってもいいですか?』(16/三木孝浩監督)にエキストラ参加したことがきっかけでスカウトされて、芸能事務所に所属。2018年「第33回 MEN’S NON-NO専属モデルオーディション」にてグランプリを獲得する。映画初出演作品の『蜜蜂と遠雷』(19/東宝)では第44回報知映画賞を始め、数々の映画新人賞を受賞。「おっさんずラブ-in the sky-」(19/テレビ朝日)、「ドラゴン桜」(21/TBS)、「クロステイル〜探偵教室」(22/東海テレビ系)など、テレビドラマにも多数出演。日韓共同プロジェクトにより実現した夏ドラマ「六本木クラス」(テレビ朝日系)の長屋龍二役も話題に。10月期木曜劇場『silent』に戸川湊斗役で出演する。

アフレコ作業では“声だけで距離感を表現する”難しさに苦労しました

−映画『夏へのトンネル、さよならの出口』は、美しいアニメーション映像の中に“心の傷”や“理想の自分”など、青春期の悩みを内包した見ごたえのある作品です。完成した映像を見たときの感想はいかがでしたか?

「僕が声をあてたときにはまだ、白黒のパラパラマンガみたいに色や動きが決まっていない状態でした。試写を見て初めて“ああ、こういう世界観だったんだ”と。映像が綺麗でバックに流れる音楽もシーンのイメージにぴったりでした。登場人物の心情に寄り添ってくれるような歌が効果的に流れたりして、クオリティの高さに驚きました。素敵な作品だなと思いました」

−エンドロールで流れた歌は、物語をまとめるような印象がありましたね。今回、初めてのアフレコは大変でしたか?演技とは違う大変さがあると思うのですが、苦労したのはどのあたりですか?

「距離感を声で表現することでしょうか。生身のお芝居のときもそうですけれど、たとえば電話をしているシーンのように相手が自分の目の前にいないとき。どのくらいの声の大きさで、どんなふうに声を張って届けるのか、みたいなところは共通した難しさがあると感じました。

俳優・鈴鹿央士さん
「距離感を声で表現することが難しかった」鈴鹿央士さん

アフレコの場合は、目の前に録音用のマイクがあって、ブースの前方に絵を映し出すモニターがあるじゃないですか。それで絵を見ながらいざ声を出そうとすると、どうしても無意識のうちに顔の前にあるマイクに向けてしゃべってしまうんですね。

映画の中で軸になる、カオルとあんずが出会う駅のシーンは、ベンチの端と端に少し離れて座っている設定なので、監督から『もうちょっと、遠くにいる人だと思ってしゃべりかけてみてください』と指示を出されました。でも最初はどうしても、マイクに向けてしゃべってしまうくせがなかなか修正できなかったんです。

そうしたら飯豊(まりえ)さんが、『自分から少し離れた位置に人がいると思って、その人に届ける思いでしゃべってみたら?』とアドバイスしてくださり、それでOKが出ました。映像に声をあてるアフレコはとても繊細な作業で、感覚的なものを研ぎすませることが大切なのだと学びました」

俳優・鈴鹿央士さん
「映像に声をあてるアフレコはとても繊細な作業」鈴鹿央士さん

−映画では、カオルとあんずの距離が少しずつ縮まっていく様子が丁寧に描かれていました。実際に飯豊さんとの関係性はどのように築いていきましたか?

「アフレコは2日間で行ったのですが、午前中から夜までずっと録音ブースに詰めていたので、飯豊さんとはちょこちょこと合間に世間話ができました。台本の頭から順番に録音していったことも功を奏しましたね。映画の中では、初めて会ったときから少しづつふたりの心の距離が縮まっていって、やがて同じ目的にむけてタッグを組む流れになっているので、カオルとあんずの関係性が縮まっていく部分はリアルな空気感が出せたんじゃないかなと思っています」

欲しいものは時間をかけて、自分の力で手にいれたいタイプです

−この物語は、タイムマシーンのような機能をもつ「ウラシマトンネル」がキーになっています。好きな時代に行けるとしたら鈴鹿さんは過去と未来、どちらに行ってみたいですか?

「僕は過去に行って、両親の結婚式を見てみたいですね。自分がちょっと成長してからの両親しか見られていないので、出会ったころのふたりの姿を見たいなあと思います」

俳優・鈴鹿央士さん
「過去に言って、両親の結婚式を見てみたい」鈴鹿央士さん

−素敵ですね。ではもうひとつ。そもそも“欲しいものがなんでも手に入るかもしれないけれど、それと引き換えに時間が倍の速度で進んでしまうトンネル”に、鈴鹿さんは入りたいですか? 入りたくないですか?

「(腕を組んで少し上を見上げながら)入らないかな? 欲しいものって、何かの力を借りて手に入れるのではなく、時間をかけて自分の力で手に入れるということも大切だと思うので。僕は入らないかなと思います」

−最後に、映画を見てくれる方へメッセージをお願いします。

「はい。高校生ふたりが主人公の物語で、失ったものを取り戻したい少年と、夢を追いかける少女が登場します。青春物語という観点でも楽しめると思いますし、迷い多き時期にぶつかる壁にどう向き合っていくのかということも描かれている作品です。“そういえば自分の夢ってなんだったっけ” “あのとき追いかけていたものは何だったんだろう”などと、誰もが大人になっても心のどこかにしまってあるような大切な経験を思い出してもらえるとうれしいです。ふたりの物語を通して新鮮な気持ちになれると思いますし、懐かしい気持ちにもなっていただけるのではと思います」

ジャケット¥77,000・シャツ¥22,000・パンツ¥39,600・ブーツ¥96,800(ポール・スミス リミテッド〈ポール・スミス〉)、タイバー¥42,900(ミキモト カスタマーズ・サービスセンター〈ミキモト〉)、ネクタイ/スタイリスト私物
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映画『夏へのトンネル、さよならの出口』大好評公開中!

夏へのトンネル、さよならの出口
(c)2022 八目迷・小学館/映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会
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八目迷の同名デビュー作小説を基に劇場アニメ化したSF・青春ドラマ。トラウマを抱えた少年と、クラスになじめない転校生の少女が、不思議なトンネルを調べるひと夏を描く。監督を務めたのは、『デジモンアドベンチャー LAST EVOLUTION 絆』を手がけた田口智久。声の出演は『蜜蜂と遠雷』の鈴鹿央士と、飯豊まりえがW主演する。飄々とした性格に見える塔野カオルは、未だに過去の事故のトラウマを抱えている。彼はクラスで浮いている容姿端麗な転校生・花城あんずと“ウラシマトンネル”と呼ばれる不思議なトンネルを調べる約束をする。そこは欲しいものが手に入るという噂があり……

【原作】八目迷(「ガガガ文庫」小学館刊)
【監督・脚本】田口智久
【配給】ポニーキャニオン
【キャスト】鈴鹿央士(塔野カオル)、飯豊まりえ(花城あんず)、畠中祐(加賀翔平)、小宮有紗(川崎小春)照井春佳(浜本先生)、小山力也(カオルの父)、小林星蘭(塔野カレン)ほか
【製作】映画『夏へのトンネル、さよならの出口』製作委員会

『夏へのトンネル、さよならの出口』公式サイト

※掲載商品の価格は、すべて税込みです。

問い合わせ先

PHOTO :
中田陽子(MAETICCO)
STYLIST :
朝倉 豊
HAIR MAKE :
阿部孝介(traffic)
WRITING :
谷畑まゆみ