「今週中にできますか?」「それはひとりでできると思います」「あの人は仕事ができそうだ」など、ビジネスシーンで頻出する「できる」というワード。丁寧に言うときはどうする? 目上の人には? 部下には? 「できる」をより上手に使うコツをつかんで、語彙力を磨いていきましょう。

【目次】

「できる」は「出来る」と書いたほうが丁寧?
「できる」は「出来る」と書いたほうが丁寧?

【「できる」ってどんな言葉? 「類語」や「言い換え」もサクッと!】

■「できる」の言葉の成り立ち

「できる」は、カ変動詞「でくる(出来)」の上一段(かみいちだん)活用したもの。簡単に意味を説明すると、ビジネスシーンでは大まかに、(1)出てくる。現われる。(2)新しく存在するようになる。(3)それをする能力や可能性をもつ。の3種類の意味で使用されます。

もう少し掘り下げると、(2)には「物事が生じる/発生する/生まれる/起こる」「つくり上げられる/設けられる/仕上がる/完成する」「実る/収穫がある/生産される」などの意味が。

(3)には「物事をよくする/学問や技芸などにたくみである/その方面の能力がある/長じている」「することが可能である/することが許される」といった意味をもちます。「できる」は大変多彩な単語なのです。

■「できる」の漢字表記は?

名詞形では主に「出来る」と表記します。「上出来」「出来具合」「出来事」「出来すぎ」「出来たて」「出来栄え」といった具合です。

動詞や副詞として使う場合は、平仮名表記のほうがいいでしょう。「できる限り」「できるだけ」「用意ができる」「身動きできない」「理解できる」「よくできた人」などです。

さらに、履歴書などの公文書には「私は〇〇が出来ます」と漢字で書かないほうが無難です。なぜなら、共同通信社発行の『記者ハンドブック』に「動詞・副詞なとでは平仮名書き」とあり、このガイドブックが公文書記載の指針になっているから。公文書では「私は〇〇ができます」が正解です。

また、「仕事ができる人」のように「能力がある」という意味や、「よくできた人」のように「人柄などが円満」という意味で使用する場合は、「仕事がデキる」「よくデキた人」と片仮名表記で強調することもあります。

■「〜できる」の尊敬語は?

目上の人への対応や会話では、「お(ご)+~になれます」「お(ご)+~いただけます」という尊敬表現を使いましょう。

例:お使いになれます。ご利用いただけます。 

■「できる」の「類語&言い換え表現」

「できる」の類語には、「成る」「成り立つ」「仕上がる」「でき上がる」などがあります。

「できる」を「可能か否か」といった文脈で使用する際には、上から目線にならないように、また上司や取引先など立場が上の人へは十分な配慮が必要です。「できますか?」ではなく「やっていただけますか?」や「お願いできますか?」というように言い換えるのがベターです。


【「あの人は仕事ができる」「よくできた人」をもっとスマートに!】

前述したように、「能力がある」「人柄がいい」といった意味で「できる」を使う場合の、もっとスマートな言い方をご紹介しましょう。

■「仕事ができる」の言い換え例文

「あの人は有能だと、部長が話していました」

「あの人は敏腕マネジャーだ」

「あの人の辣腕ぶりに助けられた」

■「よくできた人」の言い換え例文

「気遣いができる人だね」

「感じのいい人だったので、よく覚えています」

「しっかり者に違いない」

「最終的には抜かりなく仕上げてくる人です」


【「それは私にできそうです」の「ビジネス的な言い換え」は?】

上司や先輩から「できそう?」と打診された場合、「それは私にできそうです」という返答でも間違いではありませんが、残念ながら“語彙力不足”です。このような場合、自分の能力をひけらかさずに相手に安心感を与えるような言い回しが大人の語彙力”というものです。例文で確認しましょう。

■1:「それでしたら経験がありますから、私がやらせていただきます」

■2:「はい大丈夫です。本日いっぱいお時間いただけますか?」

このように、「なぜできそうだと思うのか」「どうだったらできそうなのか」というひと言も加えると、より相手に安心してもらえますね。

また、取引先から少々無理な依頼をされた場合は、「できます!」と安請け合いするのは禁物。また、自信がない案件の場合も同様です。そんなときの“デキる返答例”もご紹介します。

■3:「納期的に弊社では難しいようです。申し訳ございませんが、今回はお役に立てそうもありません」

■4:「以前やってみたことはあるのですがうまくいきませんでした。ご指導いただけるのでしたら、再度挑戦してみたいのですが…」


【「できることはなんでもします!」のビジネス的な言い換え表現】

「できること」というフレーズも、とても曖昧な表現です。「できない」とは言いにくい、言いたくないシーンでの言い換えとして用いることもあるのでは? 確かに、ちょっと曖昧にしておくのがベターという状況もありますね。では、ニュアンスは変えずにもっと上手に表現するには?

■できること → 「可能なこと」「得意なこと」

■なんでも → 「どんなことでも」「ご希望のように」

■やります → 「いたします」「させていただきます」「力を尽くします」「手を尽くします」


【「できる」を使ったフレーズ集】

■できるだけ  ■できる限り  ■できることから  ■できましたら

 

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「できる」「できない」はビジネスシーンではあまり使いたくないフレーズかもしれませんね。そんなときこそ言い換え表現や類語を使って、スムースに事を運びたいものです。後輩や部下に対して「あなたならできると思っていたわ!」とか、「どうすればできるか、一緒に考えましょう」などと声をかけられる人になりたいものです。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『大人の語彙力大全』(KADOKAWA)/『大人なら知っておきたい モノの言い方サクッとノート』(永岡書店)/『心理学的に正しい! 人に必ず好かれる言葉づかいの図鑑』(宝島社) :