【目次】

【「幸いです」の「意味」】

「幸い」とは、「自分にとって非常に望ましく、幸せに感じられる状態」のこと。「都合がよいさま」という意味もあります。つまり「幸いです」は、「〜の状態であれば、私としては幸せ、幸運です」「〜の状態であれば、それは私にとって、都合のよいこと、望ましいことです」といった意味を、丁寧に伝えるフレーズです。口頭よりも主にビジネスメールなどで、「ご了承いただけますと幸いです」のように、相手に何かお願いしたり、依頼するときに使われます


【「注意点」使えるシーン、使えないシーン】

「幸いです」はビジネスで頻繁に使われる便利な言葉ですが、使用するのが不適切なシーンもありますので注意しましょう。

■使えるシーン

メールや書面の場合、相手のリアクションをすぐには確認できません。そのため、何か依頼がある際にも、「ご一読いただけますか」と疑問形で呼びかける表現よりも、「ご一読いただけますと幸いです」としたほうが適切とされています。柔らかで好印象な表現となりますね。

■使えないシーン

「幸いです」は敬語表現(丁寧語)ではあるものの、敬意の程度はそれ程高くありません。社内社外を問わず使えますが、特に社外であれば、関係が近い、あるいは親しい取引先などに限られます。気を使うべき上司や目上の人、取引先に対しては、後述するような敬語表現(謙譲語)が適切です。また、同僚や部下に使うのも不適切です。

「幸いです」は、柔らかなニュアンスで相手にお願いごとを伝えるときに用いられる表現です。本来は「〜していただけたら嬉しい」程度のときに使われる表現なので、急ぎの用件や深刻なお願いごとには適しません。実行してほしい期限がある場合は、「~までに、ご返信いただけますと幸いです」のように、日時を添えることをお忘れなく。


【そのまま使える「例文」】

■1:「新製品のサンプルをお送りいたします。お試しいただけましたら幸いです」

■2:「ご多忙のところ恐縮ですが、お返事いただけますと幸いです」

■3:「今回のご提案につきましては、少々お時間を頂戴できますと幸いです」

■4:「心ばかりの品ですが、お口に合えば幸いです」

■5:「新刊をお届けいたします。御笑覧くださいますと幸いです」

■6:「微力ですが、お役に立てると幸いです」


【目上の方に失礼にならない言い方は?】

前述の通り、「幸いです」は丁寧語です。目上の方に対しては、さらに敬意を高めた表現にして使うのが適切です。

■幸いでございます

■幸いに存じます

■幸甚に存じます

「幸いに存じます」に、さらに格式をもたせた表現が「幸甚に存じます」です。「幸せであることが甚(はなは)だしいこと」を熟語で表現した言いまわしです。かなり強い表現ですので、日常的に頻繁に用いるものではありませんし、親しい相手に対して使うと大げさです。著名な方に講演を依頼する際や、取締役クラスなど、かなり気を遣う場面で使ってこそ、活きてくる言葉です。さらっと口頭で使うのなら「幸いです」のほうが向いています。


【「言い換え」表現を使った「例文」】

■1:「微力ではございますが、お役にたてましたら幸いに存じます」

■2:「ご多忙中恐縮ですが、お運びいただけましたら幸甚に存じます」

「幸い」以外の言葉を使った表現もご紹介しましょう。

■3:「今回のご提案につきましては、少々お時間をいただけると助かります」

「助かります」は「自分にとって望ましい状態」であることを表す言葉。少々カジュアルな印象となりますので、目上の方に対しては、使うシーンを選びましょう。

■4:「新製品のサンプルをお送りいたします。お試しいただければ、ありがたく存じます」

「ありがたく存じます」は、「幸いに存じます」と同様、「~してくれるとありがたいです」という気持ちを表す言葉です。「幸いに存じます」と同じように使えますが、印象としてはもう少し親しみのある表現となります。

▲:「来週、お目にかかれたら嬉しいです」

「嬉しいです」も、「幸いです」の言い変え表現と言えますが、少々幼稚な印象。ビジネスシーンには不向きと言えそうです。


【「英語」で言うと?】

「〜していただければ幸いです」という表現は、英語では[ would be appreciated] と表現できます。直訳すれば「〜していただけると感謝します」という意味で、ビジネスシーンやフォーマルな場面でよく使われます。

・Your cooperation would be appreciated.(ご協力いただければ幸いです)

・It would be great  if you could come to see me next Monday.
(来週の月曜日にお越しいただければ幸いです。)

It was gracious of you to accept.(お受け取りくださって幸いです)

***

「幸いです」に関する注意点は、(1)「緊急」「必ず」な要求や依頼には使わない (2)目上の相手には「幸いに存じます」が好印象 (3)口頭よりも書面で使うのがベター。言い換え表現などを上手に活用して、こちらの“やんわりしたお願い”にも気持ちよく応えていただきましょう。

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:『デジタル大辞泉』(小学館)/『日本国語大辞典』(小学館)/『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)/『ひと言で知性があふれ出す 大人の語彙力が身につく本』(かんき出版) :