メールや手紙、そして会話でも。「感謝」の気持ちを伝えるシーンは公私共に多いものです。もちろん、「ありがとうございます」のひと言で伝わる気持ちもありますが、「感謝」の気持ちを示すフレーズのバリエーションは、できる限り豊かなほうが、より細やかに気持ちが伝わるものです。今回はその理由も含め、さまざまな言い回しをご紹介しましす。

【目次】

「感謝の言葉」の豊かさに、大人の語彙力が試されます。
「感謝の言葉」の豊かさに、大人の語彙力が試されます。

【「感謝の言葉」のバリエーションを知ることの「メリット」 】

■より細やかなニュアンスを伝えることができる

日本語の語彙はとても豊かです。「感謝」を伝えるにせよ、ひとつの言い方だけでなくそのバリエーションを知識として覚えておくと、より細やかなニュアンスが伝わる言葉をセレクトできるようになります。

■場面にふさわしい言葉を使える

フォーマルなシーンでの挨拶と、通常業務のメールでのお礼の言葉は、おのずと異なります。
定番のフレーズはオリジナリティに欠けると思うかもしれませんが、ひとまずそれを使えばその場がまるくおさまる便利なフレーズでもあります。こなれた言葉で自分の個性を演出するのは、定番のフレーズを使いこなしたあとでも十分なのではないでしょうか。

■聞く人に知性を感じさせることができる

例えば「感謝」の言葉を何人かが述べる場面では、前の人と少し違った言い回しを使いたいものです。ただ違うだけでなく、そこの「語彙力」や「大人の気遣い」が感じ取れるフレーズであれば、周囲はそこにあなたの知性を感じ取ってくれるはずです。


【「感謝の気持ちを表す言葉」のバリエーション】

■「冥利に尽きます」

上司にほめられたときなど、うれしい気持ちを表すことができる表現です。「冥利(みょうり)に尽きる」は自分の身分や商売などによって受ける恩恵が、あまりに多くてありがたい気持ちを示す慣用表現です。「技術者冥利に尽きます」などと使われます。

■「もったいないお言葉でございます」

目上の人からほめられたり、評価されたりしたとき、感謝の気持ちを伝える言葉です。「もったいない」はおそれ多い、ありがたいという意味の言葉。謙遜の気持ちが表れるフレーズですね。

■「恐悦至極に存じます」

「恐悦」は謹んで喜ぶことであり、「至極」はこの上もないこと。「極めて喜ばしい」というニュアンスのかしこまった表現です。

■「衷心よりお礼申し上げます」

お礼を強調したいとき、「心より」「本当に」「誠に」などと書きますが、同じ言葉が重なるのは避けたいもの。「心より」に代わる言葉に「衷心(ちゅうしん)より」があります。「衷心」は「本当の気持ち、本心」を表す言葉です。「衷心よりお悔やみ申し上げます」と喪の場面でも使えます。

■「ご厚情、痛み入ります」

「厚情」は、「親切や厚い情け」という意味で、広く相手から受けた親切全般を指して使われます。「厚情」と似た言葉としては「温情」や「恩情」(先生や両親などに使うことが多い)があります。「痛み入る」は恐縮しながら感謝を伝える言葉です。過分なご厚情に「申し訳ありません」と謝罪するよりも、相手に快く受け入れてもらえる言葉遣いです。

■「〜にあずかり、光栄です」

「あずかり」は「与り」と書き、「関与すること」を示す動詞です。それが転じ、願わしいことに関わったり、その恩恵を受けたりすることを表すようになりました。「お招きにあずかり」「ご高覧にあずかり」などと、目上の方が自分のためにしてくれた言動に対して「あずかる」を使うと、それを非常にありがたく思っていることを伝えられます。さらに丁寧な表現にするなら「〜にあずかり、光栄に存じます」で。

■「感謝の気持ちで一杯です」

丁寧ながら硬すぎず、ありがたい気持ちで心が満たされていることが伝わります。

■「お礼の言葉もございません」

言葉では言い表せないほどの強い感謝を伝える言葉。「なんと申し上げたらよいのか、お礼の言葉もございません」などのように使います。

■「ありがたい限りです」

「限り」は「極み、上限」のことです。単に「ありがとう」と言うよりも強い気持ちを伝えたいときに使いましょう。「感謝の限り」などにも言い変えることができます。


【「挨拶」など、フォーマルな場で使える感謝のフレーズ】

仕事でいつもお世話になっている取引先、上得意の顧客に対して、「いつもありがとうございます」と感謝の気持ちを伝えるフレーズをご紹介します。

■「ご厚誼(こうぎ)を賜り、御礼申し上げます」

■「長年のご愛顧に感謝申し上げます」

■「いつもお引き立ていただき、誠にありがとうございます」

■「格別のご厚情を賜り、衷心より感謝申し上げます」


【「仕事」でそのまま使えるお礼の言葉「例文」5選】

■1:「ひとかたならぬご尽力をいただき、誠にありがとうございました」

「ひとかたならぬ」は、「並々ならず、非常な」という意味。「尽力」は「力を尽くすこと」「骨を折ること」。相手の並々ならぬ働きに触れ、感謝の気持ちを伝えるフレーズです。「ご尽力」を「お力添え」「お骨折り」と言い換えても。

■2:「先日はお忙しいところ弊社までご足労を賜り、感謝申し上げます」

「足労」は、本来なら自分から出向くべきところを、来てもらったり、行ってもらったりすることを示す言葉です。雨であれば「お足元の悪いなか」、遠い場所なら「遠いところ」などと、相手を気遣うクッション言葉と共に使うと、より感謝の気持ちが伝わります。

■3:「このたびはご恵贈にあずかりまして感謝申し上げます」

「恵贈(けいぞう)」は人から金品を送られたことを、贈り主を敬っていう言葉。似た言葉に「恵送」があり、こちらは送られてきたものに対して、「ご恵送の品、ありがたく頂戴いたしました」と使います。いずれも相手を高めるための言葉なので、「お礼のお品をご恵送いたしました」と、自分の好意に対して使うのは誤りです。

■4:「このたびはお心尽くしの品を賜り、誠にありがとうございました」

「心尽(づ)くし」は相手のために心を尽くすこと。「心尽くしのおもてなし」など金品以外のものに対しても使えます。「心ずくし」と書かないよう注意。

■5:「急な変更にもかかわらず迅速なご対応をいただき、感謝の念に堪えません」

こちらの勝手で対応を急がせてしまった場合など、先方に強い感謝を伝えるフレーズです。「感謝の念に堪えません」というのは、抑えきれないほどの感謝の気持ちを表す言葉です。


【「感謝します」の敬語表現は?】

■「感謝申し上げます」  ■「感謝いたします」

■「御礼申し上げます」  ■「ありがたく存じます」

***

「感謝」の気持ちは本当にさまざまな言葉で伝えることが可能です。周囲に対する感謝の気持ちの分だけ、豊かな語彙力をもっていたいものですね!

この記事の執筆者
Precious.jp編集部は、使える実用的なラグジュアリー情報をお届けするデジタル&エディトリアル集団です。ファッション、美容、お出かけ、ライフスタイル、カルチャー、ブランドなどの厳選された情報を、ていねいな解説と上質で美しいビジュアルでお伝えします。
参考資料:/『大人の語彙力ノート』(SB Creative) /『心が通じる 手紙の美しい言葉づかい ひとこと文例集』(池田書店)/『印象が飛躍的にアップする大人の「言い方」練習帳』(総合法令出版) /『たった一言で印象が変わる大人の日本語100』(ちくま新書) :